AIリテラシー研修とは|全社員が安全に使うための基礎と、実務研修との違い

この記事の要点
- AIリテラシー研修は、全社員が生成AIを安全に、誤解なく使うための基礎をそろえる研修です。
- 教えるのは、得意と不得意、入力してよい情報、出力の確かめ方、社内のルールの4つです。
- 知識のテストで終えず、自社の書類を「入力してよいか」で仕分ける演習を入れると、線引きが身につきます。
目次
社員に生成AIを使わせる前に、最低限の知識をそろえたい人事・情報システムの担当の方に向けて、AIリテラシー研修で何を教えるのか、どう組むのかを整理します。アカウントを配って操作を教えたのに、使う人と使わない人に分かれる。顧客の情報をそのまま入力する人が出てくる。こうした状態は、操作より手前の土台がそろっていないときに起こります。
AIリテラシー研修とは
AIリテラシー研修は、AIがどういう道具で、何を間違えるのか、何を入力してはいけないのか、出力のどこを人が確かめるのかを、全社員に教える研修です。ツールの操作を教える研修や、業務の進め方を変える実務研修の手前に置きます。
| 観点 | AIリテラシー研修 | 生成AIの実務研修 |
|---|---|---|
| 目的 | 危ない使い方を避け、基礎をそろえる | 担当の業務でAIを使う手順を作る |
| 対象 | 全社員 | 業務を変えたい部署と担当者 |
| 題材 | 社内のルールと、身近な例 | 受講者の実際の業務 |
リテラシー研修だけでは、業務の進め方は大きくは変わりません。業務を変える段階の研修が何をするのかは、生成AI研修とはで解説しています。
AIリテラシーとは何を指すか
当社は、AIリテラシーを、AIを仕事の道具として、安全に、役に立つ形で使う力と定義しています。操作の技術だけを指す言葉ではありません。言葉の意味、公的な資料での扱い、仕事で使うための3つの力は、AIリテラシーとはにまとめました。この記事では、その力を全社員にどう教えるかを扱います。
全社員に教える4つのこと
全社員に教えることは、4つに絞れます。項目ごとに、聞くだけで終わらせないための演習を対にします。
表1 教える項目と、演習の対応
| 教える項目 | 身につくこと | 対にする演習 |
|---|---|---|
| 得意と不得意 | 何を任せられて、どこで間違えるのかが分かる | AIの誤った答えを見つけて、元の資料で確かめる |
| 入力してよい情報 | 入力の前に、情報の種類を見分けられる | 自社の書類を、入力してよいかで仕分ける |
| 出力の確かめ方 | どこを、誰が、何と照らすかが分かる | AIの下書きの日付、金額、固有名詞を確かめて直す |
| 社内のルール | 自社で使ってよいツールと、相談先が分かる | 利用規程を読み、自分の業務に当てはめる |
得意と不得意
生成AIが得意なのは、文章の下書き、要約、言い換え、案出しです。不得意なのは、事実の正確さを保つことと、社内の事情を踏まえた判断です。検索エンジンのように正しい答えを返す道具だと思って使うと、誤りに気づけません。頼み方(プロンプト)が曖昧なら、答えも曖昧になります。「それらしく書く道具」だと分かっているだけで、出力の受け取り方が変わります。
入力してよい情報
入力した内容がどう扱われるかは、ツールと契約のプランによって違います。個人向けのプランと法人向けのプランでは、入力した内容がAIの学習に使われるかどうかの設定が違うことがあります。そのため、「このツールには、ここまで入力してよい」という線引きを、会社として決めて伝えます。
出力の確かめ方
AIの出力は下書きとして扱い、人が確かめてから使います。確かめるのは、日付、金額、数量、人名や社名、引用した法令や規程です。社外に出す文書は、作った人のほかに、確かめる人を決めておきます。管理職の側の確かめ方は、管理職がAIの成果物を確かめる方法で扱っています。
社内のルール
使ってよいツール、入力してはいけない情報、困ったときの相談先を、利用規程として示します。規程がまだない会社は、研修の前に最低限の線引きを決めておきます。作り方はAI利用規程の作り方に、リスクの全体は生成AIのセキュリティにまとめています。
入力してよい情報を、自社の書類で仕分ける演習
リテラシー研修で起きやすいのは、講義を聞いて、確認のテストに答えて終わる形です。「個人情報は入力しない」と答えられても、目の前の書類のどこが個人情報に当たるのかを見分けられなければ、業務では役に立ちません。
そこで、自社で実際に使っている書類を題材に、入力してよいかを仕分ける演習を入れます。見積書、議事録、顧客からのメール、社内の報告書を数種類用意し、受講者が1つずつ仕分けます。
図1 入力してよい情報の仕分け(例)
公開されている情報
名前や数字を伏せれば使える情報
伏せても危ない情報
迷うのは真ん中の区分なので、演習の時間はここに使います。
図の区分は一例で、線の引き方は会社ごとに違います。演習で受講者の判断が割れた書類は、規程があいまいな箇所です。研修のあとで規程を直す材料になります。演習に実際の書類を使うときの注意は、演習で自社のデータを使ってよいかの判断基準で扱っています。
テストの点より、仕分けで迷った箇所を見る
全員が正解できる問題は、研修をしなくても守られる決まりです。判断が割れた書類こそ、事故が起こりやすい場所です。
職種別、階層別の組み方
4つの項目は全員に共通ですが、演習の題材と、重く扱う項目は、職種と階層で変えます。
図2 職種と階層で、題材と重みを変える
共通の講義は短くして、時間は職種ごとの仕分けに回します。
全員を一度に集めるなら、共通の講義のあと、職種ごとの組に分かれて演習をします。新入社員には、入社時の研修に組み込む方法もあります。
効果の確かめ方
リテラシー研修の効果は、テストの点だけでは測れません。研修のあとの行動で確かめます。
- 仕分けの演習で、判断が割れた書類の数が、次の回で減っているか。
- 規程についての質問や相談が、窓口に届くようになったか。
- 会社が認めていないツールの利用や、危ない入力の報告が出ていないか。
- 研修の前は使っていなかった社員が、使い始めているか。
相談が増えるのは、線引きを意識する社員が増えたしるしです。相談が1件も来ない場合は、相談先が伝わっていないことを疑います。
eラーニングで足りる範囲、集合研修が要る範囲
4つの項目のうち、知識を伝える部分はeラーニングで足ります。仕組み、得意と不得意、規程の内容は、動画と確認のテストで全員に届けられます。人数の多い会社や、拠点の分かれた会社に向いています。
一方、自社の書類を仕分ける演習と、出力を確かめて直す演習は、講師がその場で答えを返す集合研修か、同時双方向のオンライン研修が向いています。受講者の判断が割れたところで、理由を話し合うことに意味があるからです。
リテラシーだけの研修は、助成の対象外となるコースがある
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に出す計画届から、DX化の訓練のうち、リテラシーや概念の理解にとどまる内容が助成の対象外とされました(経過措置あり)。助成金を前提に予算を組む場合は、業務に当てはめる実務研修と分けて考えます。条件はAI研修の助成金にまとめています。
受け方ごとの違いは、AI研修の受講形式の選び方で扱っています。
ノセカエの研修は、座学3割・実習7割で、受講者の業務を題材にする実務研修です。研修の中でセキュリティの講義を行い、AI利用規程のひな形をお渡しします。リテラシーの土台づくりと、業務での活用を1回の研修で進めたい会社に向いています。内容と料金はノセカエのトップページでご確認ください。
この記事のまとめ
- AIリテラシー研修は、操作の前に、全社員の土台をそろえる研修。
- 教えるのは、得意と不得意、入力してよい情報、出力の確かめ方、社内のルールの4つ。
- 自社の書類を仕分ける演習を入れ、判断が割れた箇所を規程の見直しに使う。
- 知識はeラーニング、仕分けと確認の演習は集合研修か同時双方向のオンライン研修で行う。
よくある質問
- AIリテラシー研修は、どの社員に受けさせればよいですか
生成AIを使う可能性のある社員全員です。自分では使わない管理職も、部下がAIで作ったものを受け取る立場なので、出力の確かめ方を知っておく必要があります。
- 利用規程がまだありません。研修の前に作るべきですか
入力してはいけない情報と、使ってよいツールの2点だけでも、先に決めておくことをおすすめします。研修の演習で判断が割れた箇所を拾い、あとから規程を整える進め方もできます。ノセカエの研修では、AI利用規程のひな形をお渡ししています。
- AIリテラシー研修に、助成金は使えますか
事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に出す計画届から、リテラシーや概念の理解にとどまる訓練は助成の対象外とされました(経過措置あり)。受講者の業務に当てはめる実務研修は対象となる可能性がありますが、支給されるかどうかは審査により異なります。
- eラーニングだけで済ませてもよいですか
知識をそろえる目的なら、eラーニングで足ります。ただし、自社の書類のどこが入力してはいけない情報に当たるかは、実物で仕分ける演習をしないと身につきにくいので、短い時間でも演習の場を設けることをおすすめします。
参考資料・注意事項
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf - 厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
最終確認:2026年10月2日。4つの項目と演習の組み方は、当社の考え方を整理したもので、公的な基準ではありません。入力してよい情報の線引きは、契約しているツールの規約と自社の規程でご確認ください。助成金は受給を保証するものではありません。
座学3割・実習7割。まず全員の土台を揃える研修から。
貴社の業務をその場でAIに載せ替える法人研修です。助成金の対象になるかもあわせて確認します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
