海外拠点の社員にも、同じ生成AI研修を受けさせるか|言語・時差・データの持ち出しで分ける線

目次
本社で生成AIの利用規程を作り、海外の拠点や子会社にも同じものを配った。次は研修も、国内と同じ内容を海外の社員に受けてもらいたい。海外に拠点を持つ会社の人事や情シスの方から、こうした相談を受けることがあります。規程をそろえたなら研修もそろえたい、という発想は自然です。
当社の考えでは、国内とそろえるのは「何を守るか」という中身までにして、配り方は拠点ごとに決めるのがよいと考えています。分けるかどうかは3つの線で決まります。言語、時差、演習で扱うデータの持ち出しです。以下、それぞれの線でどちらに倒すかを整理します。
1. 言語|通訳・録画・字幕のどれで配るかを先に決める
海外拠点の社員に日本語が通じるかどうかは、拠点によって大きく違います。駐在員と日本語のできる現地社員だけが受けるなら、国内と同じ回に入ってもらっても困りません。現地採用の社員が中心なら、言語をどう渡すかを先に決める必要があります。
選べる形はおおむね3つです。
| 配り方 | 向いているとき | 気をつけること |
|---|---|---|
| 当日に通訳を入れる | 質疑を重視したい。受講者が1つの言語にまとまっている | 演習の説明に通訳の時間がかかり、実習の時間が減る |
| 録画に字幕をつけて配る | 座学の部分を複数の言語で配りたい | 演習と質疑はその場でしか成り立たないので、別に場を作る |
| 現地の言語で別の回を組む | 現地採用の社員が多く、業務も国内と違う | 講師と教材の手配が別になり、費用が上がる |
ここで見落とされやすいのは、生成AIへの指示文そのものの言語です。演習で日本語の指示文を例に出しても、現地の社員が普段の業務で使うのは現地の言語か英語です。座学は訳せても、演習の例文は受講者の業務の言語で用意し直す必要があります。
2. 時差|同時に集めるか、録画で配るか
日本と時差が小さいアジアの拠点なら、国内と同じ時間帯のオンライン研修に入ってもらうこともできます。欧州や米州になると、日本の午後は現地の早朝や深夜にあたり、同じ回に入ってもらうのは無理があります。
時差が大きい拠点には、座学を録画で配り、演習と質疑だけを現地の時間帯に合わせた短い回にする形が現実的です。受講の形式ごとの向き不向きはAI研修は集合・オンライン同時・録画のどれで受けさせるかで整理しました。国内の拠点が分かれている場合と考え方は同じですが、海外は時差のぶん「全員を同時に集める」選択肢がほぼ消えます。
もう一つ、時差は研修のあとにも効いてきます。研修後に質問を受け付ける窓口が日本の営業時間だけだと、海外の社員は質問しにくくなります。研修の日程と一緒に、あとで誰に聞けばよいかも決めておいてください。
3. データの持ち出し|演習に自社のデータを使わせるか
3つめの線がいちばん慎重に扱うべきところです。国内の研修で、自社の実際の資料やメールを題材にAIを操作する演習を組んでいる会社はあります。同じ演習を海外拠点で行うと、次のような確認事項が出てきます。
- 現地の社員が扱う顧客や従業員の情報を、AIのサービスに入力してよいか。国・地域によっては、個人データを国外に移すことに規制があります(EUの一般データ保護規則=GDPRが代表例です)。
- 本社が契約しているAIのサービスを、海外拠点の社員が同じ条件で使えるか。データの保存場所や利用規約が、拠点の所在国で問題にならないか。
- 本社の利用規程が、現地の法令や現地法人の就業規則と食い違っていないか。
各国の法令について、当社は判断をお伝えしません。確かめるべき項目を洗い出し、個別の判断は現地の法務担当や弁護士に確認してもらう、という順番をおすすめします。確認がつくまでは、海外拠点の演習は架空のデータか公開情報を題材にするのが安全です。演習で自社のデータをどこまで使うかの考え方は研修の演習で、自社の実データを使わせてよいかにまとめています。
規程そのものの作り方は生成AIの社内ルール(AI利用規程)の作り方で扱いましたが、この記事は国内の法令を前提にしています。海外拠点に配る版は、現地で確認した結果を反映して別の版にしておくと、研修の内容とも食い違いません。
4. 3つの線で組み方を決める
1〜3を合わせると、組み方はおおよそ次のように分かれます。
| 拠点の状況 | 向いている組み方 |
|---|---|
| 日本語が通じる社員だけが受ける。時差が小さい | 国内の回にオンラインで入ってもらう。演習のデータは国内と同じ基準でよいかを先に確認する |
| 現地採用が中心。時差が小さい | 座学は字幕つきの録画、演習は現地の言語の例文で別の回にする |
| 時差が大きい | 座学は録画、演習と質疑は現地の時間帯で短い回にする。演習は架空のデータで始める |
どの組み方でも、そろえておくのは「入力してはいけない情報」「AIの出力を確かめる手順」といった守る中身です。配り方と演習の題材は拠点ごとに変えて構いません。研修全体の組み立て方は生成AI研修とはで整理しています。
5. ノセカエでご相談いただく場合
当社の研修は座学3割・実習7割で、1回最大20名です。海外拠点を含めて実施したい場合は、お問い合わせの段階で、拠点の国・地域、受講者の言語、時差をうかがいます。そのうえで、当社の研修をそのまま当てられる範囲と、現地で別に手配したほうがよい部分を分けてお答えします。
まとめ
海外拠点の社員にも同じ研修を受けさせるかは、言語、時差、演習で扱うデータの3つの線で決まります。守る中身は国内とそろえ、配り方と演習の題材は拠点に合わせて変える。とくにデータの持ち出しは各国の法令が関わるので、確認がつくまでは架空のデータで演習を組むのが安全です。
参考資料・注意事項
本記事は、当社が研修のご相談を受ける中で整理した考え方です。個人データの越境移転やAIサービスの利用に関する規制は国・地域ごとに異なり、改正も続いています。個別の判断は、現地の法令に詳しい弁護士や法務担当にご確認ください。料金と受講人数の条件は、ノセカエのトップページの料金表でご確認ください。最終確認:2026年9月30日。
海外拠点を含めた研修の組み方を、一緒に決めます。
拠点の国・地域、受講する方の言語と人数、演習で使いたい業務をうかがい、国内と同じ回に入ってもらう範囲を、30分の無料相談で確認します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
