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物流・運送業の生成AI活用|効くのは配車ではなく「事務所に溜まる文章」

キーワード: 生成AI 物流 | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

運送会社の方から生成AIのご相談をいただくと、最初に出てくるのはほぼ配車の話です。「配車を自動で組めないか」「ルートを最適化できないか」。ここはいったん止めていただきます。配車と経路の最適化は、生成AIではなく配車システムや最適化の計算エンジンの領分だからです。車両制限、荷主の指定時刻、休憩の取り方、ドライバーごとの経験。制約が多いほど、文章を作る道具ではなく、条件を計算する道具が要ります。

生成AIが強いのは、答えを計算することではなく言葉を扱うことです。そして運送・物流は、外から見えているより文章の量が多い業種です。荷主とのやり取り、遅延の一報、事故やヒヤリハットの報告、点呼と日報の記録、年間を通して続く安全教育の資料、ドライバー募集の求人票。トラックの外側、事務所と点呼場に溜まっている文章の仕事が、いちばん先に載せ替えられます

この記事は、車両を十数台から百台前後で運行している規模の会社を想定して書いています。大手が入れている輸配送システムの話ではありません。

そもそも何から始めるかを決めかねている段階の方は、先に中小企業の生成AI導入ステップをご覧ください。この記事は、そのうえで運送・物流に固有の事情だけを取り出したものです。

仕事別に、どこまで効くか

ご相談のときに、まずこの表をお見せしています。期待の高い欄ほど効きが低い、という結果になることが多い表です。

仕事効き理由
配車の組み立て・経路の最適化制約条件を解く計算。文章を作る道具の仕事ではない
運賃の見積計算そのもの距離・重量・料金表からの計算。表計算とシステムの領分
デジタコ・動態データの数値集計集計はシステムが正確。生成AIに数字を計算させない
荷主・配送先への連絡文、遅延の一報状況は分かっているのに、丁寧な文にする時間が取れない
安全教育の資料づくり毎月続く。題材は自社にあるのに、まとめる時間がない
ヒヤリハット・事故報告の整理と要約紙で溜まったまま読まれていない。分類と要約が本業
日報・点呼記録から月次の報告をまとめる中〜高事実は記録にある。読ませて整えるのは得意な仕事
ドライバーの求人票・面接の案内文他社と横並びの文面になりがち。書き分けが効く
荷主との運賃交渉に使う説明資料の下書き中〜高数字は自社で出す。並べ方と言い回しを整えるところが効く

効きが高い欄を眺めると、共通点が見えます。材料はすべて社内にあるのに、文章にする時間だけがない仕事です。運送業でここが詰まりやすいのは、事務所の人数が少なく、その人が電話と点呼と請求を同時に持っているからです。

運送業でとくに効く3つの理由

1|連絡の相手が多く、書き分けが必要

荷主、配送先、傭車先の協力会社、そして自社のドライバー。同じ「30分遅れます」でも、荷主に出す文、現場の受け入れ担当に出す文、社内の一斉連絡では、書く内容も長さも変わります。この書き分けが、忙しい時間帯にいちばん後回しになります。

2|安全教育が毎年続く仕事として積み上がる

運送事業者には、ドライバーへの指導・監督を計画的に行うことが求められます。年間の計画を立て、実施し、記録を残す。止められない仕事なのに、資料をまとめる担当は運行管理者が兼務しているという会社がほとんどです。過去の事故・ヒヤリハットや、季節ごとの注意点といった題材は自社に十分あります。足りないのは、それを教材の形にする時間です。

3|働ける時間そのものに上限がある

2024年4月から、自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用されています。ドライバーの時間が有限になったぶん、事務所側の時間も奪い合いになりました。運行に直接関係しない文章仕事を減らせるかどうかが、以前より切実な問題になっています。

まず載せ替える3つを、この順番で

  1. 荷主・配送先への連絡文と、遅延の一報:効果がその日のうちに分かり、成否がはっきりします。ひな形を数パターン作っておくところまでを最初の実習にします
  2. ヒヤリハットと事故報告の分類・要約:溜まっている紙やメモを読ませ、種類ごとに分けて短くまとめます。次の安全教育の題材が、この作業から自動的に出てきます
  3. 安全教育の資料と、求人票:2番で出てきた題材を教材に組み替えます。求人票はここまで来てから触ります

順番に理由があります。社外の目に触れる文章を先にやると、1回のまちがいで社内が使うのをやめます。とはいえ荷主への連絡文は効果が見えやすいので最初に置き、必ず人が読んでから送る運用を初日に決めます。読まずに送る運用にした会社は、たいてい早い段階で事故を起こします。

任せてはいけない4つ

任せてはいけないこと理由と、代わりにやること
運行の可否判断(気象、車両の状態、体調や過労の判断)人の安全に直結し、責任の所在も明確に決まっている。運行管理者と本人が判断する。生成AIは、判断したあとの連絡文を書く側に置く
荷主名・配送先の住所・個人宅の情報・ドライバーの個人情報をそのまま入力する配送に関する相談文は、最初から住所と名前が入っている。伏せてから入力する手順を、研修で実際にやって見せる
労働時間や休憩の基準に適合しているかの判定基準は細かく、改定もある。適否はシステムの計算と社内規程で確認する。AIの答えをそのまま運用の根拠にしない
事故発生時の対応手順や、賠償・保険の可否の回答誤った案内が相手方に伝わると取り返しがつかない。手順書と保険会社の窓口に沿う

入力してよい情報とだめな情報の線引きは、口頭の注意だけでは残りません。社内のルールとして1枚にしておく作り方はAI利用規程の作り方にまとめています。

運送業に固有の3つの壁と、その対処

壁1|ドライバーは席にいない

日中は車内、朝と夕方は点呼場。PCの前に座る時間がほとんどありません。ドライバー向けの内容は、スマホだけで完結する範囲に絞ります。そして正直なところ、ドライバー本人に文章生成を覚えてもらう必要は、当面ありません。まず効くのは事務所と運行管理者の側です。ここを先に一巡させてください。

壁2|全員が同じ時間に集まれない

出庫の時間がばらばらなので、全社員を1つの部屋に集める研修は成り立ちません。事務所・運行管理者・配車担当を先に集合形式で一巡し、ドライバーには録画と短い手順書で後追いする形にします。点呼の時間に5分ずつ小分けにするやり方も、業種としては現実的です。

壁3|協力会社・傭車先が混ざっている

自社の社員だけで仕事が完結していません。アカウントを誰に配るのか、契約が終わったときに誰が止めるのかを、研修の前に決めておいてください。個人のアカウントで使い始めてしまうと、あとから止められなくなります。

研修の組み立て方(3時間の例)

時間内容
0:00-0:20できること・できないことの線引き。配車と数字は任せない、という前提合わせ
0:20-0:45入力してはいけない情報。荷主名・住所・個人情報を伏せる手順を実演
0:45-1:30実習①:先週自分が書いた荷主への連絡文を持ち寄り、書き直す
1:30-2:15実習②:ヒヤリハットの記録20件を分類し、次の安全教育の題材を3つ選ぶ
2:15-2:45社内ルールの草案づくり。使ってよい業務、人が必ず確認する箇所
2:45-3:00次の1か月でやることを決める。担当と期限まで書いて終わる

実習で使う材料は、必ず受講者が実際に書いた文章と、自社に溜まっている記録にします。用意された練習問題では、翌日から使う動きになりません。同じ考え方は製造業の生成AI活用建設業の生成AI活用でも書いたとおりです。

効果は、この4つで測る

事故件数や輸送品質を、生成AI研修の効果指標に置かないでください。これらは天候、荷主の運行条件、人員構成といった別の要因のほうがはるかに大きく効きます。研修の成果として説明しようとすると、良くても悪くても説明がつかなくなります。測るのは、事務所の時間です。

費用と助成金について

従業員への訓練には、国や自治体の助成制度の対象になることがあります。運送業では、ドライバー向けの制度と、事務職を含む社内研修の制度が別建てになっている場合があります。ただし要件や区分は年度によって変わり、受給や採択が確約されるものではありません。実際の適否は、労働局やハローワーク、所管の窓口でご確認ください。制度の全体像はAI研修に使える助成金に整理しています。

まとめ

運送・物流業で生成AIが効くのは、配車でも運賃計算でもありません。事務所と点呼場に溜まっている文章の仕事です。荷主への連絡文、遅延の一報、ヒヤリハットの整理、安全教育の資料、求人票。どれも材料は社内にあり、足りないのは書く時間だけです。

進め方は、まず事務所と運行管理者を一巡させること。ドライバー全員を集める研修から始めないこと。そして運行の可否判断、個人情報の入力、労働時間の適否判定、事故対応の回答の4つは任せないと最初に決めること。この線を引いておけば、現場に残る使い方になります。

自社のどの文章から載せ替えるか、研修をどう組むか。助成金が使えるか無料診断からお声がけください。運行の実態を伺ったうえで、事務所側の仕事を棚卸しし、最初の1か月にやることをご提案します。

ドライバーを集めなくても始められる。事務所側から一巡させる研修設計。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、特定の制度への適合や助成金の受給・採択を保証するものではありません。助成制度の要件・区分は年度によって変わります。適用の可否は労働局・ハローワーク等の所管窓口でご確認ください。安全教育、運行管理、労働時間に関する法令上の要否・適否については、所管の運輸支局、労働基準監督署、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。