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生成AIガイドラインとは?社内の手引きに入れる項目と作り方【利用規程との違い】

生成AIガイドラインとは?社内の手引きに入れる項目と作り方【利用規程との違い】

この記事の要点

  • 社内の生成AIガイドラインは、現場が迷ったときに開く運用の手引きです。守る義務を定める利用規程とは分けて作ります。
  • 入れる項目は、使ってよい業務、入力する前の確認、出力の確かめ方、権利の確認、使ってよいサービス、連絡先、よくある質問の7つです。
  • 国の指針や業界団体のひな形は、項目の抜けを確かめるために使います。自社の業務と情報の名前は、自分たちで書き入れます。
目次
  1. ガイドラインが必要になる場面
  2. 生成AI利用ガイドラインに入れる項目
  3. 記載例:現場に届く書き方
  4. 企業の生成AIガイドライン:公的な手引きとの違い
  5. 作って終わりにしない4つのステップ
  6. ノセカエの研修との組み合わせ
  7. よくある質問
  8. 参考資料・注意事項

社員向けの生成AIガイドラインを任されたら、何を書き、どう現場に根づかせるか。作成を担当する方に向けて、ガイドラインに入れる項目と記載例、作ってから定着させるまでの手順をまとめました。

当社では、生成AIガイドラインを「現場が迷ったときに開く運用の手引き」、AI利用規程を「守る義務と違反時の扱いを定めた社内規則」と分けて考えることをおすすめしています。規程が「何をしてはいけないか」を条文で定めるのに対し、ガイドラインは「この業務ではこう使う」「この情報はこう伏せる」を具体例で示します。規程の条文の組み立てはAI利用規程の作り方で扱っているので、この記事では手引きの中身に絞ります。

ガイドラインが必要になる場面

会社が使い方を示さないと、社員は個人の判断で無料のサービスを使い始めます。会社が把握していないところでのAI利用はシャドーAIと呼ばれ、悪気がなくても、顧客情報や社外秘の資料をそのまま入力してしまうおそれがあります。一方で、禁止事項だけを伝えると、怖くて誰も使わない状態にもなります。ガイドラインは、この両極の間で「安心して使える範囲」を具体的に示すためのものです。

リスク起こりうることガイドラインで示すこと
情報漏えい顧客情報・機密資料を入力し、外部に情報が渡る入力してよい情報と、伏せ方の例
著作権・権利侵害生成物が他者の作品に似てしまう社外に出す前の確認の手順
誤情報の利用AIの誤った回答を確認せずに使う数字・固有名詞の確かめ方
属人化使える人だけが使い、やり方が個人に閉じる業務別の使い方と、共有のしかた

こうしたリスクの全体像と技術面の対策は生成AIのセキュリティリスクと対策にまとめています。

生成AI利用ガイドラインに入れる項目

図1 手引きに入れる7つの項目

項目書くこと防ぐリスク
1. 使ってよい業務使ってよい業務と、AIで決めてはいけない判断萎縮して使われない
2. 入力する前の確認入力しない情報、伏せれば入力してよい情報、そのまま入力してよい情報情報漏えい
3. 出力の確かめ方使い道ごとの確認の手順誤った情報の利用
4. 権利の確認社外に出す前に、既存の作品と似ていないかを確かめる著作権の侵害
5. 使ってよいサービス承認したサービス、プラン、設定の一覧と更新日把握していないサービスの利用
6. 連絡先迷ったとき、誤って入力したときに連絡する相手報告の遅れ
7. よくある質問社内で出た質問と答えやり方が個人に閉じる

禁止だけを並べず、使ってよい範囲を先に書きます。

運用の手引きとして、最低限おさえたい項目です。自社の業種と扱う情報に合わせて増減させてください。

1. 使ってよい業務の一覧

文章の下書き、会議メモの要約、アイデア出し、社内向け資料の構成案など、使ってよい業務を業務名で挙げます。「使ってはいけないこと」だけを並べると、社員は萎縮して使わなくなります。逆に、人事評価や採用の合否のように、AIの出力で決めてはいけない判断もここで明示しておきます。

2. 入力する前の確認

規程で禁じた情報の種類を、現場が判断できる形に言い換えます。おすすめは、情報を3段階に分けて例を添える書き方です。

区分例手引きに書くこと
入力しない顧客・従業員の個人情報、公表前の業績数字、他社から受け取った資料具体名で5〜7項目に絞って挙げる
伏せれば入力してよい社内の議事録、取引先とのやり取りの文面社名・人名・金額・日付を置き換える手順
そのまま入力してよい公開済みの自社情報、一般的な文章表現明示しておかないと、全部が怖くなって使われない

3. 出力の確かめ方

AIの生成物は下書きであって完成品ではないことを前提に、使い道ごとの確認手順を書きます。社内で自分が読むだけなら事実の確認、社外に出すなら数字の照合と出典の確認、というように、使い道で確認の重さを変えると守られやすくなります。

4. 社外に出すときの権利の確認

他社の文章や画像を入力して「これに似せて」と指示しない、公開前に既存の作品に酷似していないかを人の目で確かめる、といった注意を具体的に書きます。考え方の背景は生成AIと著作権で整理しています。

5. 使ってよいサービスと設定

会社が承認したサービスとプラン、推奨する設定(学習への利用を止める設定など)を一覧にします。サービスの仕様は変わるので、この一覧は規程の条文ではなくガイドライン側に置き、更新日を書いておきます。

6. 困ったとき、誤って入力したときの連絡先

「情報システム部まで」ではなく、担当者の名前と連絡手段まで書きます。誤って入力してしまった場合にすぐ申し出てほしいこと、申し出た人を責めないことも明記します。報告が早いほど、削除や設定の見直しで影響を抑えられる可能性が高くなります。

うっかり誤入力して自分から申し出た場合と、ルールを知りながら反した場合は、分けて書いておきます。後者への措置は手引きでは決めず、利用規程の該当条文を示すだけにします。こうしておくと、申し出た人を責めない方針と矛盾しません。違反時の措置を懲戒と結びつけるときの就業規則との関係は、AI利用規程の作り方(違反時の扱い)で整理しています。

7. よくある質問

「取引先からのメールを要約してよいか」「スマートフォンの個人アプリで使ってよいか」など、実際に社内で出た質問と答えを追記していきます。この欄が増えていくことが、ガイドラインが使われている目安になります。

記載例:現場に届く書き方

同じ内容でも、書き方で伝わり方が変わります。

伝わりにくい例:「機密情報は入力しないこと。」

伝わりやすい例:「見積書・契約書・顧客名簿は入力しない。取引先とのメールを要約したいときは、会社名を『A社』、担当者名を『担当者』、金額を『〇〇円』に置き換えてから入力する。迷ったら入力せず、〇〇さん(チャット:△△)に聞く。」

規程の条文は前者のように短くてかまいません。その条文を現場で守るための言い換えが、ガイドラインの役割です。

企業の生成AIガイドライン:公的な手引きとの違い

「生成AIガイドライン」という言葉は、国や業界団体が公表している指針を指す場合と、会社が自社の社員向けに作る手引きを指す場合があります。この記事で扱っているのは後者です。この記事では、国の指針と業界団体のひな形をまとめて、公的な手引きと呼びます。公的な手引きは、どの会社にも当てはまる考え方と項目を示すもので、個々の会社の業務や、扱う情報の具体名までは書かれていません。企業の生成AIガイドラインは、公的な手引きを下敷きにして、自社の業務と情報の名前を書き入れたものになります。

図2 公的な手引き、社内ガイドライン、利用規程の関係

公的な手引き
国の指針、業界団体のひな形
作る人国、業界団体
中身どの会社にも当てはまる考え方と項目
使い方自社の方針に抜けがないかを確かめる
社内ガイドライン
運用の手引き
作る人自社の担当部署
中身業務別の使い方、情報の伏せ方、連絡先
使い方現場が迷ったときに開く。随時直す
利用規程
社内の規則
作る人自社。承認の手続きを経る
中身守る義務と、違反したときの扱い
使い方条文で定める。改定は手続きを踏む

公的な手引きで項目を確かめ、規程で義務を定め、ガイドラインで現場のやり方を示します。

社内ガイドラインと利用規程の違い

社内ガイドラインと利用規程は、役割が違います。利用規程は、何をしてはいけないかを条文で定める社内の規則です。社内ガイドラインは、その条文を現場で守るための具体的なやり方を示します。サービスの一覧やよくある質問のように、変わりやすい内容はガイドラインの側に置くと、規程を改定せずに更新できます。規程の作り方はAI利用規程の作り方で扱っています。

参照できる指針とひな形

ガイドラインは白紙から書き起こさなくてもかまいません。国の指針と業界団体のひな形の2つは、無料で公開されています。どちらも個々の会社の業務までは書かれていないので、項目の抜けを確かめたり、条文の骨組みを借りたりする使い方が中心になります。

資料公表元と版社内の手引きづくりでの使いどころ
AI事業者ガイドライン総務省・経済産業省。第1.2版(2026年3月31日公表)事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」に分け、10の共通の指針を示した国の指針です。業務で生成AIを使うだけの会社は「AI利用者」の部分を読み、別添のチェックリストで自社の方針に抜けがないかを確かめます。
生成AIの利用ガイドライン日本ディープラーニング協会(JDLA)。第1.1版(2023年10月公開)、画像編は第1版(2024年2月公開)組織が利用ルールを作るためのひな形です。条項のみの版と簡易解説付きの版があり、自社の活用目的に合わせて追加・修正して使う前提で公開されています。

いずれも改訂されることがあるため、使う前に公式ページで最新版を確認してください。

作って終わりにしない4つのステップ

ガイドラインは、共有フォルダに置いて「周知した」ことにしても読まれにくいものです。定着まで見据えた進め方を示します。

1. 社内で誰が何に使っているかを把握する

まず、誰が・どの業務で・どのサービスを使っているかを聞き取ります。実態を踏まえない手引きは、現場の感覚とずれて使われません。

2. 項目を自社の言葉で埋める

上の7項目を土台に、自社の業種・扱う情報に合わせて中身を書きます。他社の例をそのまま流用すると、自社にない業務や情報が並び、読む人が自分ごととして受け取りにくくなります。

3. 研修で「なぜそうするのか」まで伝える

文書を配るだけでは、行動は変わりにくいものです。なぜこのルールなのか、具体的に何が良くて何がだめかを、実際に手を動かして確かめる場を設けると、ガイドラインが判断の基準として使われるようになります。判断に迷う事例を使った研修の組み方はコンプライアンス研修と生成AIで書いています。

4. 使いながら直す

サービスも業務も変わり続けます。ガイドラインは、よくある質問の追記やサービス一覧の更新を随時行い、半年〜1年ごとに全体を見直す前提で運用します。更新の手続きが重い規程と分けておくのは、このためです。

見直しを誰が担うかも決めておきます。運用の責任者を部署と役職で定め、手引きの冒頭に書いてください。

誤って入力した人が、すぐ申し出られる書き方にする

手引きに「申し出た人を責めない」と書いてあるかどうかで、報告の早さが変わります。知りながら反した場合の扱いは、利用規程の条文に任せます。

ノセカエの研修との組み合わせ

ノセカエの法人研修は、座学3割・実習7割で、貴社の実際の業務を題材に「何を入力してよいか」「生成物をどう確かめるか」を実際に試しながら身につける設計です。研修で出た質問や意見が割れた点を、そのままガイドラインの「よくある質問」に加えていくと、手引きが現場の実態に近づきます。研修ではAI利用規程のひな形もお渡ししています。

この記事のまとめ

  • 社内の生成AIガイドラインは、現場が迷ったときに開く運用の手引き。
  • 入れる項目は7つ。使ってよい範囲を先に書く。
  • 公的な手引きは項目の確認に使い、自社の業務と情報の名前は自分たちで書く。
  • 配って終わりにせず、研修で理由を伝え、使いながら直す。

よくある質問

生成AIの利用ガイドラインは、利用規程があれば要りませんか

役割が違うので、両方あるほうが運用しやすくなります。規程は守る義務を条文で定め、ガイドラインはその条文を現場で守るための具体的なやり方を示します。規程だけだと、現場は「この場合はどうするのか」で迷います。

国のガイドラインを、そのまま社内のガイドラインにできますか

そのままでは使いにくいです。国の指針は、事業者全般に向けた考え方を示すもので、自社の業務や扱う情報の具体名は書かれていません。項目の抜けを確かめる材料にして、中身は自社の言葉で書きます。

ガイドラインは、誰が作ればよいですか

総務、法務、情報システムのどこが担当しても構いませんが、現場の業務が分かる人に入ってもらいます。作ったあとに見直す責任者を、部署と役職で決めて、手引きの冒頭に書いておきます。

どのくらいの頻度で見直しますか

よくある質問の追記とサービスの一覧の更新は随時行い、全体は半年から1年ごとに見直す前提で運用します。サービスの仕様や設定が変わったときは、その都度直します。

参考資料・注意事項

最終確認:2026年10月2日。本記事はガイドラインづくりの考え方を整理したもので、法的助言ではありません。各生成AIサービスのプラン・設定項目・データの取り扱いは変更されることがあるため、サービス一覧は最新の公式情報で定期的に確認してください。

座学3割・実習7割。ガイドラインを現場に定着させる法人研修。

貴社の業務を題材に、AIの使いどころと守りどころをその場で身につけます。

AI利用ルールを含めた研修を相談する →

お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

講師プロフィール ・ 運営会社の情報