生成AIの業務活用事例10選|部門別・業種別に「どこで効くか」を整理

この記事の要点
- 生成AIが効くのは、文章を読む、書く、整える、下書きを作る作業です。計算と最終判断は人が担います。
- 部門別に10の場面を挙げました。どの場面にも、AIに任せる部分と、人が確認する部分があります。
- 公開されている企業と自治体の事例を2つ、出典つきで紹介します。数字は各組織の発表によるものです。
生成AI活用事例を、部門別に10の場面で整理しました。「自社ではどの部門の、どの仕事に効くのか」を先に見渡したい方に向けた記事です。10の場面のあとに、公開されている企業と自治体の事例、業種別の記事への入口をまとめました。各部門・各業種の詳しい使い方は、それぞれの記事で扱っています。
生成AIが効くのは文章を読む・書く・整える・下書きを作る作業です。正確な計算や、責任を伴う最終判断は人が担います。どの場面にも「AIに任せる部分」と「人が確認する部分」があります。
効きやすい業務・効きにくい業務
個別の場面に入る前に、得意な作業と不得意な作業を分けておきます。
表1 効きやすい業務と、効きにくい業務
| 効きやすい | 効きにくい・注意が必要 |
|---|---|
| 文章の下書き(メール・議事録・企画書) | 正確な四則計算・集計(表計算や会計ソフトの役割) |
| 要約・翻訳・言い換え | 最新の事実確認(誤りを含むことがある) |
| アイデア出し・たたき台づくり | 個人情報・機密の入力(社内ルールの整備が前提) |
| 分類・タグ付けなどの整理 | 責任を伴う最終判断・承認 |
生成AI活用事例10選(部門別)
ここに挙げる10個は、特定の会社の実績ではなく、部門ごとの使い方の例です。実在の組織が公表している事例は、次の節で2つ紹介します。
10の場面は、文章の行き先で3つに分けられます。社外に出す文章、社内で使う文章、考える作業の補助です。
図1 部門と場面の地図(10の場面)
下書きを作り、人が確かめて出す
整理して、配れる形にする
たたき台と、抜けの確認
どの場面でも、AIが作るのは下書きまでです。出す前に人が確かめます。
1. 営業:提案メールと商談準備の下書き
顧客の業種や課題を伝えて、提案メールやヒアリング項目のたたき台を作ります。白紙から書き始める負担を軽くし、商談前の準備の時間を減らす使い方です。相手企業の情報は一次情報で裏を取り、価格や約束に関わる部分は人が決めます。場面ごとの使い方と失敗しやすい点は生成AIの営業活用(商談準備・提案書・メール)で整理しています。
2. マーケティング:SNS投稿・広告見出し・記事の骨子
伝えたい要点を渡し、構成案や見出し案を複数出させて選ぶ使い方です。文章そのものより、切り口を数多く出すところで効きます。事実関係と、誇張した表現になっていないかは人が確認します。始める順番は生成AIのマーケティング活用にまとめました。
3. カスタマーサポート:過去対応の検索と返信の下書き
過去の対応履歴やマニュアルから前例を探し、返信文の下書きを作って担当者が確認して送ります。減らす対象にするのは、1件あたりの対応時間と、担当者ごとの返信のばらつきです。お客様に直接答えさせる前にやっておくことは生成AIのカスタマーサポート活用で扱っています。
4. 経理:社内問い合わせ・月次コメント・手順書
経理で効くのは、計算ではなく言葉の仕事です。経費に関する社内問い合わせへの返信、月次の報告文、属人化した業務の手順書などを下書きさせます。金額や日付、仕訳・税務の扱いは人と会計ソフトで確定させます。詳しくは経理で生成AIが効く5つの場面をご覧ください。
5. 人事:求人票・スカウト文・社内向けの案内
募集要件を渡して求人票の下書きを作り、自社にしかない事実を人が書き足します。制度の案内文や社内のよくある質問集づくりにも向いています。応募者や社員の個人情報を入力しないこと、合否や評価を任せないことが前提です。線引きは生成AIを人事で使うときの線引きで整理しました。
6. 会議の多い部署:議事録の整理
会議中のメモや文字起こしから、決定事項・ToDo・次回予定を抜き出して配れる形に整えます。固有名詞と数字は崩れやすいので、用語集を渡したうえで最後に人が確認します。作業の順番は生成AIで議事録を作る手順にまとめています。
7. 企画・経営企画:提案資料の骨子と論点整理
考えている施策を渡して、抜けている視点や反対意見を挙げさせる「壁打ち相手」として使います。資料づくりでは、構成案とスライドごとの見出しをAIで固め、数字と主張は人が決めます。社外に出す提案資料で人が確認する箇所はAIで資料作成する進め方で扱っています。
8. 情報システム:仕様の文章化と簡単なスクリプトの補助
要件の文章化、テスト観点の洗い出し、短いスクリプトのたたき台づくりに使えます。生成されたコードはレビューを通し、そのまま本番環境に反映しない運用が前提です。
9. 教育・研修担当:マニュアルと説明資料の下書き
手順を箇条書きで渡すと、読みやすいマニュアルの形に整えてくれます。新人向けと経験者向けで説明の粒度を書き分ける用途にも向いています。内容が自社の手順と合っているかは、業務を知っている人が確認します。
10. 全部門共通:翻訳と、社外文書のトーン調整
海外とのメールの翻訳や、硬い文章をやわらかく(あるいはその逆に)整える作業は、部門を問わず日常的に使えます。意味を保ったまま相手に合わせて言い換えるのは、生成AIが得意とする作業です。
ここに挙げた使い方を、ChatGPTに実際に打ち込む指示文の形で見たい方はChatGPTの業務活用例10(指示文つき)を、指示文の組み立て方そのものはプロンプトの書き方をご覧ください。
公開されている企業と自治体の事例
ここまでの10の場面は、使い方の整理です。実際の組織が公表している事例を2つ紹介します。数字は、それぞれの発表に書かれているものです。
表2 公開されている事例(各組織の発表による)
| 組織 | 取り組み | 発表されている結果 | 発表の日付 |
|---|---|---|---|
| パナソニック コネクト株式会社 | 社内向けのAIアシスタント「ConnectAI」を導入 | 2023年6月〜2024年5月の1年間で、国内の全社員(約12,400人)の労働時間を18.6万時間削減。社員の回答では、1回の利用あたり平均約20分の削減 | 2024年6月25日 |
| 横須賀市 | ChatGPTを全庁で活用する実証(2023年4月20日から) | 約半数の職員が実際に活用。最終アンケートの回答者のうち約8割が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と回答 | 2023年6月5日 |
パナソニック コネクトの発表は、使い方の例として、検索の代わりのような質問のやり取りに加え、戦略策定の基礎データの作成や、製造工程、品質管理に関する質問を挙げています。横須賀市の発表は、効果とあわせて課題も書いています。利用用途に向かない「検索用途」での利用が約3割あり、質問や指示の仕方に課題があることが分かったとしています。
他社の数字を、自社の見込みにそのまま使わない
削減時間は、社員の数、対象の業務、数え方で変わります。他社の発表は、どの業務に使ったかを知る材料として読みます。自社の見込みは、自社の業務の時間を測って出します。試算のしかたは生成AI研修のROIの試算にまとめています。
業種別の活用
同じ生成AIでも、業種によって「任せてよい仕事」と「任せてはいけない仕事」の境目が変わります。医療・保険・不動産のように、法令や説明責任が関わる業種では、任せない仕事を先に決めます。業種ごとの記事を用意しています。
- 製造業の生成AI活用:現場より先に効く場所と、研修の組み立て方
- 建設業の生成AI活用:図面より先に効く提出書類
- 物流・運送業の生成AI活用:配車ではなく事務所に溜まる文章
- 小売業の生成AI活用:本部が書いている文章
- 飲食業の生成AI活用:店の外に出す言葉
- 旅館・ホテルの生成AI活用:多言語対応とクチコミ返信
- 美容室・サロンの生成AI活用:発信と返信の時間
- 医療クリニックの生成AI活用:診療には使わず、受付と事務に
- 介護事業所の生成AI活用:記録を書く時間
- 不動産業の生成AI活用:紹介文と入居者対応
- 保険代理店の生成AI活用:商品説明と募集文書は任せず、記録に
- 自動車販売・整備工場の生成AI活用:診断と見積は任せず、説明文に
- 士業事務所の生成AI活用:守秘義務を踏まえた線の引き方
事例を自社の成果に変えるための3つの条件
事例を知っただけでは業務は変わりません。当社は、次の3つがそろっていることを条件と考えています。
図2 AIに任せる部分と、人が確認する部分
下書きの段階まで
出す前と、決めるとき
線を先に決めておくと、現場は任せる範囲で迷いません。
- 自社の実際の業務で試している:一般的なサンプルで終わらせず、目の前の仕事で使います。
- 入力してよい情報のルールがある:機密や個人情報の扱いを、先に決めておきます。
- AIに任せる部分と人が確認する部分の線引きがある:下書きはAI、最終確認は人、という分担を決めます。
ツールを配って「あとは各自で」とするだけでは、この3つはそろいません。入力してよい情報の決め方は生成AIのセキュリティで扱っています。最初にどの業務から始めるかの見分け方は生成AIで業務効率化するなら、どの業務から効くかに、会社として体制・ルール・ツールを整える順番は中小企業の生成AI導入ステップに分けて書いています。
最初の1つは、毎回似た文章を書いている作業から選ぶ
部門や業種が違っても、使いどころは「読む・書く・整える作業を、下書きの段階までAIに任せる」ことです。自部門で、毎回似た文章を書いている作業を1つ選んで試してください。
ノセカエの研修は、受講者が自分の業務を持ち込み、その場でAIに載せ替える実習が7割です。開催の前に、30分のヒアリングで業務内容を伺い、実習の題材を確認します。料金と内容はノセカエのトップページでご確認ください。
この記事のまとめ
- 生成AIが効くのは、読む、書く、整える、下書きを作る作業。計算と最終判断は人が担う。
- 10の場面は、社外に出す文章、社内で使う文章、考える作業の補助に分けられる。
- 公開されている事例の数字は、どの業務に使ったかを知る材料として読む。
- 自社の業務で試す、入力のルールを決める、任せる範囲の線を引く。
よくある質問
- 生成AIは、どの業務から使い始めるとよいですか
毎回似た文章を書いている作業から始めます。メールの下書き、議事録の整理、社内向けの案内文などです。金額や日付、合否のような判断は人が確認する前提で、下書きの段階までを任せます。
- 他社の活用事例の数字は、自社でも同じように出ますか
同じになるとは限りません。削減時間は、社員の数、対象の業務、数え方で変わります。他社の発表は、どの業務に使ったかを知る材料として読み、自社の見込みは自社の業務の時間を測って出します。
- 経理や人事のように、数字や個人情報を扱う部門でも使えますか
使えます。効くのは、問い合わせへの返信、報告文、求人票、手順書のような言葉の仕事です。金額、仕訳、税務の扱い、合否や評価は任せません。個人情報は、社内のルールで入力の可否を決めてから扱います。
参考資料・注意事項
- パナソニック コネクト株式会社「パナソニック コネクト 生成AI導入1年の実績と今後の活用構想」(2024年6月25日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn240625-1 - 横須賀市「ChatGPTの全庁的な活用実証の結果報告と今後の展開(市長記者会見)」(2023年6月5日)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0835/nagekomi/20230605_chatgpt2.html
最終確認:2026年10月2日。本記事の10の場面と3つの条件は、当社の考え方を整理したものです。統計調査の結果ではありません。効果を保証するものでもありません。表2の内容は各組織の発表によるもので、当社の実績ではありません。生成AIの出力には誤りが含まれることがあるため、業務で使う際は人が確認してください。
貴社の業務、その場でAIに載せ替えます。
座学3割・実習7割。事例を「自社の成果」に変える法人研修です。
自社のどの業務にAIが使えるか相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
