「AIで何人減らせるのか」と聞かれたら|人減らしを目的に置いた研修が、現場で使われなくなる理由

目次
生成AI研修の稟議を上げたら、役員から「それで、何人減らせるのか」と返ってきた。人事や経営企画の担当の方から、この段階で止まっているというご相談を受けることがあります。効果を人数で示せと言われても、研修の提案書に人数は書かれていません。
この記事では、その問いに答える側の方に向けて、研修だけでは人数が減らない理由と、稟議に人数の代わりに書ける3つの指標を整理します。研修で変わるのは一人ひとりの作業時間で、人数ではありません。研修を提供する当社としても、削減できる人数はお約束できません。そのうえで、役員が本当に知りたいことに答える書き方はあります。
1|研修だけで、人数は減らない
仮の数字で考えます。10人の部署で、研修のあと1人あたり月20時間の作業が減ったとします。合計は月200時間で、1人分の勤務時間を少し超えます。ここから「1人減らせる」と書きたくなります。計算は合っています。
ただ、その200時間は10人に20時間ずつ散らばっています。誰か1人の席がまとまって空くわけではありません。月末に集中する締め作業や、特定の担当者しか分からない取引先対応は、時間が減っても担当から外せないこともあります。散らばった時間を集めて配置を変えるのは経営の判断で、研修の効果とは別の話です。
削減できる時間の試算そのものは意味があります。試算の立て方と、定着率を織り込まないと過大になる点は、生成AI研修のROIを「月◯時間削減」で試算する考え方にまとめました。この記事で扱うのは、その時間を人数に置き換えてよいかという一点です。
2|人減らしを目的に置くと、現場で使われなくなる
稟議に「人員削減」と書くと、その目的は研修の場にも伝わります。受講者から見ると、AIをうまく使えるほど自分の席がなくなる研修になります。
そう受け取った人が、研修のあとにAIを使った成果を進んで報告するとは考えにくいでしょう。使っていても申告しない、あるいは使わない。研修の効果を測る段になって、数字が集まらなくなります。人数を目的に置いた稟議は、効果を測るための材料まで細らせるおそれがあります。
研修の目的をどう伝えるかは、稟議の書き方と同じくらい、受講者に届く言葉の問題です。
3|稟議には、人数の代わりに3つの指標を書く
役員が人数を聞く背景には、投じた費用に見合う変化があるかを知りたい、という問いがあります。それなら人数でなくてもよいはずです。研修の前後で比べられる数字を置けば答えになります。当社がご提案している指標は次の3つです。
| 指標 | 測り方 | 稟議での書き方の例 |
|---|---|---|
| (1) 戻ってくる時間 | 対象にする業務を3〜5本に絞り、研修の前と1か月後で1件あたりの所要時間を測る | 「議事録作成、問い合わせの一次回答、社内資料の下書きの3業務で、所要時間を研修前後で測定し報告する」 |
| (2) 止まっていた仕事が動く本数 | 人手が足りず後回しになっている業務を研修前にリストにし、研修後の一定期間で何本が進んだかを数える | 「後回しになっている業務12本のうち、研修後3か月で着手・完了した本数を報告する」 |
| (3) 外注していた作業の内製化 | 翻訳、文字起こし、簡単な資料作成など、外に出している作業の件数と費用を研修前後で比べる | 「外注している文字起こしの件数と費用を、研修前後の四半期で比較する」 |
表の中の業務名や本数は書き方の例です。貴社の業務に合わせて置き換えてください。
3つとも、研修の前に測っておかないと後で比べられません。稟議の段階で「何を、いつ測るか」まで書いておくと、役員には効果を確かめる手段があることが伝わります。予算の稟議に何を書くかは、社員教育の予算が取れないときの組み直し方でも扱っています。
4|それでも人数を聞かれたときの答え方
3つの指標を示しても、人数で答えるよう求められる場面はあります。その場合は、人数を研修の効果として約束するのではなく、戻ってきた時間の使い道を決めた結果として出るものだと切り分けて答えます。
たとえば、欠員が出たときに補充をせずに回せるか、次の採用を1人見送れるか。これは研修のあとに測った時間を見て、経営が決めることです。研修の前に人数を書くと、測る前に結論を約束することになります。「研修後3か月の測定結果をもとに、配置と採用の計画に反映するかを判断する」と書けば、人数の問いを先送りせずに、判断の時期を示せます。
5|研修の前に、役員に決めてもらうこと
戻ってきた時間を何に使うかは、現場に任せると、目の前の作業に吸収されて見えなくなります。研修の前に、役員に1つだけ決めてもらうと話が進みます。戻ってきた時間を、どの仕事に回すかです。3の(2)で作った後回しの業務リストは、そのまま候補になります。
役員が研修の目的に関わるかどうかで、現場の受け止め方は変わります。経営層から入れるか、現場から入れるかの順番は、経営層が分かっていない会社での生成AI研修の入れ方で整理しました。
6|ノセカエの研修で扱う範囲
ノセカエの研修は座学3割・実習7割で、実習では貴社の業務を題材にします。3の(1)で対象にする業務を、そのまま研修の演習に使えます。研修終了後1か月は質問にお答えしているので、測定の最初の1か月に出てきた疑問はその期間に解消できます。
一方で、削減できる時間や人数は、当社から保証していません。測った数字をどう配置や採用に反映するかも、貴社の経営の判断です。研修全体の設計の考え方は、生成AI研修とは何か、業務が変わる研修の設計をご覧ください。
まとめ
「AIで何人減らせるのか」への答えは、研修だけでは人数は減らない、です。研修で変わるのは作業時間で、その時間は人に散らばります。稟議には人数の代わりに、戻ってくる時間、止まっていた仕事が動く本数、外注していた作業の内製化の3つを、測る時期と一緒に書きます。人数は、戻ってきた時間の使い道を経営が決めた結果として出てくるものです。
参考資料・注意事項
最終確認:2026年9月27日。本文の数字(月20時間、10人の部署、業務12本など)は説明のための仮の値で、当社の実績や統計ではありません。3つの指標は当社の研修提供とご相談の経験に基づく整理です。人員の配置や雇用の見直しを伴う場合は、労働関係の法令と就業規則の確認が必要になるため、社会保険労務士・弁護士にご相談ください。
稟議に書く指標を、研修の設計と一緒に決めます。
受講する方の部署と人数、題材にしたい業務をうかがい、研修の前後で何を測るかを、30分の無料相談で確認します。助成金を使う予定の場合は、提携社労士が対象になるかを無料で診断します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
