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社員教育の予算が取れないとき|助成金で組み直すという選択肢と、その前に確かめること

社員教育の予算が取れないとき|助成金で組み直すという選択肢と、その前に確かめること

この記事の要点

  • 社員教育の予算が取れない理由は、稟議に書ける約束がないことと、削っても今月は困らないことの2つです。
  • 予算の組み直し方は、既存の別予算に相乗りする、対象と規模を絞る、助成金を前提に組む、の3つです。
  • 助成金は先に自社で払って後から受け取る制度で、要件を満たしても必ず受け取れるとは限りません。使うなら、日程を確定させる前に確認します。
目次
  1. 1|教育費だけが後回しになるのは、稟議に書ける約束がないから
  2. 2|助成金は「お金がないから使う」制度ではありません
  3. 3|予算の作り方は3ルートあります
  4. 4|稟議に書くのは「意識」ではなく、人数と時間です
  5. 5|予算がまったく動かない年に、できること
  6. ノセカエの場合
  7. まとめ
  8. よくある質問
  9. 参考資料・注意事項

研修の検討が止まりやすいのは、内容よりも予算の段階です。「やる意味は分かる。今期は枠がない」で終わると、次に話が動くのが半年後になることもあります。

ただ、予算がまったくないというより、教育費という枠が細いだけで、会社全体では別の枠が動いている場合もあります。教育の稟議だけが通らない理由にも、共通する構造があります。

この記事は、社員教育の予算を通したい人事・経営企画の担当者に向けて、まず予算が通らない構造を整理し、そのうえで既存の予算に相乗りする、対象を絞る、助成金を前提に組む、という3つの組み直し方を比べます。助成金は「予算がなくても研修ができる制度」ではないので、その点も先に確認しておきます。

1|教育費だけが後回しになるのは、稟議に書ける約束がないから

設備投資やシステム導入の稟議と、研修の稟議を並べてみると、違いは金額ではありません。次の3点です。

設備・システムの稟議研修の稟議
効果の書き方処理能力、削減工数、耐用年数で書ける「意識が変わる」「スキルが上がる」になりがち
やらなかった場合ラインが止まる、法対応が間に合わない今月は何も起きない
残るもの資産として残る受けた人が辞めたら消える、と見られる

3つ目を気にする会社もあります。ここに反論するのは難しく、実際に人は辞めます。ですから、稟議の書き方を変えるより先に、「人に残る」から「会社に残る」形へ設計を変えるほうが早いことがあります。研修を受けた人が作った手順や社内のひな形を成果物として残す形にすると、この論点そのものが消えます。設計の考え方は生成AIの社内教育に書きました。

そして、2つ目の「今月は何も起きない」は、優先順位の話です。教育費は削っても今月は困らないので、後回しにされやすくなります。これは担当者の説得力の問題ではなく、予算の性質です。

研修の稟議が負けるのは、金額ではなく3つの点の差

効果の書き方は、設備・システムの稟議なら処理能力・削減工数・耐用年数で書けるが、研修は「意識が変わる」「スキルが上がる」になりがち。誰が何人、何時間、終わったときに何ができるか、どの作業が月に何時間減る見込みかで書けば埋められる。やらなかった場合は、設備ならラインが止まる・法対応が間に合わないが、研修は今月は何も起きない。止まったときに何が起きるかを、事実として当てはまるものだけ書く。残るものは、設備は資産として残るが、研修は受けた人が辞めたら消えると見られる。受けた人が作った手順や社内のひな形を成果物として会社に残す設計にする。

3つの差は、書き方と研修の設計で埋められます。

図1 設備・システムの稟議と研修の稟議の違いと、研修の稟議の埋め方。

2|助成金は「お金がないから使う」制度ではありません

予算が取れないという流れで助成金の話になると、「助成金が出るなら、予算がなくてもできる」と受け止められることがあります。

この理解のままだと、途中で止まりやすくなります。理由は3つです。

助成金は、資金がない会社を助ける制度というより、先に払える会社が、実質の負担を後から下げるための制度と捉えたほうが計画が狂いません。資金繰りの話であって、予算がゼロの状態を埋めるものではない、という点は最初に共有しておく価値があります。

なお、入金までの期間について、厚生労働省のパンフレットに書かれているのは「審査には時間を要します」という記載だけで、月数は示されていません。上の「数か月単位」は当社の考え方による見方であり、制度が示している期間ではありません。立て替える金額と期間の見積もり方は助成金の入金時期と立て替えの考え方に整理しています。

そのうえで、実質の負担が下がる効果は小さくありません。制度ごとの違いはリスキリングの補助金と助成金の違いに、生成AI研修で検討するコースの全体像は人材開発支援助成金とはに整理しています。

研修を先に始めると、助成金は使えなくなります

もうひとつ、後から取り返せない失敗があります。研修を先に始めてしまうことです。

人材開発支援助成金では、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に計画届を出す必要があります。始めてから気づいて申請しようとしても、その回の研修は対象になりません。「まず1回やってみて、良かったら助成金を調べる」という進め方は、この点で不利になります。

助成金を視野に入れるなら、日程を確定させる前に確認するのが順番です。期限から逆算した進め方は人材開発支援助成金の申請の流れをご覧ください。

助成金は、先に払って後から戻る。支払いから受け取りまでは立て替えになる

計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに出す。そのあと研修費を払って研修を実施し、実施のあとに支給申請をして、審査を経て受け取る。支払いから審査までのあいだ、一度は全額が会社から出ていく。要件を満たしても必ず受け取れるとは限らない。審査には時間を要し、入金までは数か月単位で見ておく(当社の見方で、制度が示している期間ではない)。計画届より前に研修を始めると、その回の研修は対象にならない。

助成金は、予算がゼロの状態を埋めるものではありません。使うなら、日程を確定させる前に確認します。

図2 人材開発支援助成金を使う場合の、お金が出ていく順番(一般的な流れ)。

3|予算の作り方は3ルートあります

教育研修費の枠が細い場合、取り得る道は次の3つです。どれか1つを選ぶというより、金額の規模で使い分けます。

教育研修費の枠が細いときの組み直し方は、相乗り・絞り込み・助成金の3つ

A 既存の別予算に相乗りする。DX推進、システム導入、情報セキュリティ、採用・定着施策の枠に導入研修として乗せる。ツール導入がすでに決まっている場合や年度の途中に向き、本体の予算が止まると一緒に止まる。B 対象と規模を絞る。全社ではなく1部署、1日ではなく半日、外部講師は初回だけにする。決裁権者が効果を疑っている段階に向き、横展開の仕組みを作らないと1部署で終わる。条件は、最初の1回を録画して社内で見られる形にしておくこと。C 助成金を前提に組む。制度の要件に合う形で計画し、翌期の実質負担を下げる。次年度の予算編成に間に合う時期に向き、立て替えが要り、手続きと記録の手間が増える。

Bで小さく始めるなら、最初の1回を録画し、社内で見られる形にしておきます。

図3 予算の作り方の3つのルートと、向く場面・弱点。
ルートやること向いている場面弱点
A 既存の別予算に相乗りするDX推進、システム導入、情報セキュリティ、採用・定着施策の枠に、導入研修として乗せるツール導入がすでに決まっている。年度の途中本体の予算が止まると一緒に止まる
B 対象と規模を絞る全社ではなく1部署、1日ではなく半日、外部講師は初回だけ決裁権者が効果を疑っている段階横展開の仕組みを作らないと1部署で終わる
C 助成金を前提に組む制度の要件に合う形で計画し、翌期の実質負担を下げる次年度の予算編成に間に合う時期立て替えが要る。手続きと記録の手間が増える

Aから検討する会社もあります。生成AIの研修は、ツールの契約とセットにすると「導入の一部」として扱えるため、教育費の枠を使わずに済むことがあります。ツール導入の補助金にも、導入研修を役務として含められる枠があります(生成AIの導入に使える補助金)。研修費用の相場はChatGPT研修の費用相場と内容をご覧ください。

Bは、決裁権者が効果を疑っている場合に有効です。小さく始めて実績を見せるのは常道ですが、1つだけ条件があります。最初の1回を録画し、社内で見られる形にしておくことです。これをやらないと、2回目の稟議でも「また外に払うのか」という話に戻ります。人数が揃わない会社での組み方は中小企業の管理職研修に書いた考え方が流用できます。

ただしBの「対象を絞る」は、絞り方を誤ると横展開どころか受けた本人の手元で止まります。人を縦に抜き出すと、承認する側と隣の担当者が同じ前提を持っていないため、持ち帰った成果物が現場で通りません。絞る場合の順番は生成AI研修は全員に受けさせるか、選抜にするかにまとめています。

4|稟議に書くのは「意識」ではなく、人数と時間です

予算を通すために効果を書くとき、次の形にすると通り方が変わります。

  1. 誰が何人受けるか。部署と人数を具体的に書きます。
  2. 何時間の研修か。実施時間と、参加者の稼働が止まる時間も両方書きます。稼働の機会費用を隠すと、後で不信になります。
  3. 終わったときに何ができる状態になるか。「理解する」ではなく「◯◯の下書きを自分で作れる」のように、動作で書きます。
  4. どの作業が、月に何時間減る見込みか。ここだけは推計になりますが、根拠のある推計にします。

4つ目の推計の作り方は、対象業務の現在の所要時間を先に測ることに尽きます。測っていない数字を並べると、質疑で崩れます。試算の手順と、やりがちな見積り違いは生成AI研修のROIに整理しました。

稟議に書く推計は、対象業務の今の所要時間を測ってから書く

あわせて、研修そのものの選定基準も稟議に書いておくと、比較検討の記録として残ります。基準の立て方は法人向けAI研修の選び方を参照してください。

稟議を上げたあと、役員から効果を「何人減らせるか」で問われることもあります。人数の代わりに書ける指標と測る時期は、「AIで何人減らせるのか」と聞かれたときの答え方で整理しました。

金額より、止まったときに何が起きるかを書く

先ほどの表の2行目「やらなかった場合、今月は何も起きない」を、書き手側で埋めておくと強くなります。生成AIの研修であれば、次のような書き方ができます。

これらは「今月困る」の代わりになる論拠です。事実として当てはまるものだけを書いてください。当てはまらないものを並べると、その一点で信用を落とします。

5|予算がまったく動かない年に、できること

どう組み直しても今期は動かせない年もあります。その場合に無理をして小さすぎる研修を1回入れると、効果が出ないまま「やってみたが変わらなかった」という評価だけが残り、翌期がさらに難しくなります。これは避けたい結果です。

この状況で意味があるのは、次の3つです。いずれも費用がほとんどかかりません。

反対に、期末になって予算が余った場合に研修を急いで入れてよいかは、期末に予算が余ったとき、研修を駆け込みで入れてよいかで整理しました。

この3つをやっておくと、翌期の相談は「やるかどうか」ではなく「いつやるか」から始められます。

予算が動かない年は、費用のかからない3つの準備を翌期の相談につなげる

現状の棚卸しとして、誰が何にどれだけ時間を使っているかを1か月だけ記録すると、翌期の稟議の材料になり、研修の設計図にもなる。ルールだけ先に作り、入れてよい情報とよくない情報の線引きを決めると、無料でできて事故の確率を下げる。次年度の制度を確かめておくと、翌期はルートCが選べる。助成金は年度ごとに内容が変わることがあり、計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに出す。いずれも費用がほとんどかからず、翌期の相談を「やるかどうか」ではなく「いつやるか」から始められる。無理をして小さすぎる研修を1回入れると、「やってみたが変わらなかった」という評価だけが残る。

小さすぎる研修を1回入れるより、棚卸しとルール作りに充てるほうが翌期につながります。

図4 予算がまったく動かない年にできる3つのことと、避けたい形。

なお、予算が通らない理由が金額そのものではなく「受けさせた社員に辞められたら無駄になる」という懸念である場合は、稟議で答えるべき論点が変わります。研修費用を退職者から返してもらえるのかという点は研修を受けた社員が辞めたら、その費用はどうなるかに、労働基準法第16条と裁判例の整理をもとにまとめました。

ノセカエの場合

予算が決まっていない段階でも、30分の無料相談でご相談いただけます。おすすめするのは次の3点です。

助成金で組み直すことを具体的に検討する段階に入ったら、研修の発注担当者がいつ誰に何を頼むかを並べたAI研修で助成金を使うときの段取りをご覧ください。

まとめ

社員教育の予算が取れない理由は、稟議に書ける約束がないことと、削っても今月は困らないことの2つです。前者は人数・時間・できるようになる動作・減る作業時間で書けば埋められ、後者は既存予算への相乗りや対象の絞り込みで回避できます。助成金は先に払って後から戻す制度なので、使うなら日程を確定させる前に確認してください。どうしても動かせない年は、棚卸しとルール作りに充てるほうが翌期につながります。

よくある質問

助成金を使えば、予算がなくても研修はできますか

原則として、先に自社で研修費を支払い、実施したあとに支給申請をして、審査を経て受け取る流れです。一度は全額が会社から出ていき、要件を満たしても必ず受け取れるとは限りません。予算がゼロの状態を埋めるものではありません。

助成金を使うかは、研修を1回やってから決めてもよいですか

人材開発支援助成金では、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に計画届を出す必要があります。研修を始めてから申請しようとしても、その回の研修は対象になりません。助成金を視野に入れるなら、日程を確定させる前に確認してください。

研修の稟議には、何を書けばよいですか

誰が何人受けるか、何時間の研修か(参加者の稼働が止まる時間も含めて)、終わったときに何ができる状態になるか、どの作業が月に何時間減る見込みかを書きます。4つ目は推計になるので、対象業務の現在の所要時間を先に測ります。

参考資料・注意事項

本記事は一般的な実務の整理であり、個別の事案について制度の適用の可否を判断するものではありません。助成金・補助金の要件は年度により変わります。申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  • 厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731967.pdf

最終確認:2026年9月24日

今期の予算で、どこまでできるか。

研修の規模と時期、使える可能性のある制度、既存予算への乗せ方まで含めて整理します。「今期は見送り、翌期に組む」という結論もそのままお伝えします。

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お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

講師プロフィール ・ 運営会社の情報