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経営層が分かっていない会社で、研修は上から入れるか、現場から入れるか

キーワード: 経営層 役員 生成AI 研修 | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

お問い合わせで、いちばん切実なのはこの形です。「現場からは要望が出ています。ただ、役員が生成AIを分かっていなくて、稟議が上がらないんです」。お話しになるのは人事や経営企画の方で、多くの場合、既に半年ほど止まっています。

この状態にある会社は、次の二択で迷います。役員向けの研修を先に入れて理解してもらうか、現場に小さく入れて成果を作ってから上げるか。順番を決めかねている間は、どちらにも予算がつきません。結果として、何もしないまま1年が過ぎます。

先に、当社にとって都合の悪いことを書きます。役員研修だけを入れても、現場は動きません。90分の講義で役員が納得しても、翌週から現場の仕事の仕方が変わることはない。当社は役員向けのセッションも実施していますが、それ単体を「導入の第一歩」として売ることはしていません。単体で終わった会社を見てきたからです。

それでも、上から入れるべき会社は実在します。そして順番を間違えると、現場が動き始めたあとに予算が止まります。この記事は、どちらから入れるかを自分で判定できるようにするための整理です。人数の絞り方(全員か選抜か)は別の論点なので、生成AI研修は全員に受けさせるか、選抜にするか|広げると薄まり、絞ると戻ってこないに書きました。本記事は階層の順番だけを扱います。

1|役員研修だけを入れても、現場が動かない理由

理由は単純で、役員は自分では手を動かさないからです。

生成AIの研修が効くのは、受講者が翌日に自分の手で試す仕事を持っているときです。議事録を書く、メールの下書きを作る、資料の骨子を起こす、問い合わせへの返答案を用意する。こうした作業が自分の手元にある人は、研修で覚えたことをその週のうちに使います。使うから定着します。

役員の日常業務は、多くの場合そうではありません。判断すること、人に会うこと、決めること。手を動かす作業は既に誰かに渡っています。ですから役員向けに操作の講義をすると、その場では面白がっていただけますが、翌日に使う場面が無いまま忘れられます。これは理解力の問題ではなく、業務の性質の問題です。

もう一つ、見落とされやすい点があります。役員が「分かった」と言った状態と、稟議が通る状態は別です。技術の説明を受けて納得しても、決裁の場で問われるのは「情報が漏れないのか」「誰が責任を取るのか」「いくらかけて、いつやめるのか」です。操作を見せる研修では、この3つに答えが出ません。

当社が役員向けのセッションで最初にお伝えしているのは、使い方ではなく「この場で決めていただきたいことが4つあります」です。決めることを持ち帰っていただかないと、集まった意味が無くなります。この4つは第4章に書きました。

2|それでも上から入れる理由は、1つだけ

役員から入れる理由は「理解してもらうため」ではありません。途中で止まらないようにするためです。

現場から小さく始めた取り組みが半年後に止まる場面を、当社は何度か見ています。止まり方は決まっていて、次のどれかです。

3つとも、現場の努力では防げません。防げるのは、決裁権を持つ人が最初に「何を決めたか」を持っている場合だけです。ですから上から入れる目的は、役員に使えるようになっていただくことではなく、止め方と続け方の基準を先に決めていただくことにあります。

3|どちらから入れるかは、3つで判定する

当社が初回のご相談で確認しているのは、次の3点です。この3つで、上からか現場からかがほぼ決まります。

確認すること上から入れたほうがよい状態現場から入れたほうがよい状態
(1) 予算の出どころ全社の教育予算や情シス予算から出す=役員会の議題に上がる部門の裁量予算で始められる=決裁が部長で完結する
(2) 止めているのは何か「怖い」(情報漏えい・炎上・責任の所在)=不安が理由「分からない」(何に使えるのか想像がつかない)=実例が無いことが理由
(3) 成果の出る業務が既にあるかまだ特定できていない。どの部署から手を付けるかも未定特定できている。毎月決まって発生する定型業務が見えている

3つのうち2つ以上が左側なら上から、2つ以上が右側なら現場からです。実務では(2)がいちばん効きます。

「怖い」が理由なら、実例をいくら見せても動かない

役員が止めている理由が不安である場合、他社の成功事例を積み上げても決裁は下りません。不安に対する答えは事例ではなく、ルールと責任の所在だからです。この場合は、役員に集まっていただいて、社内で使ってよい情報の範囲と、事故が起きたときの報告経路を決めるところから始めるほうが早い。ルールの作り方そのものは生成AIの社内ルール(AI利用規程)の作り方|入れてはいけない情報とひな形の考え方にまとめました。

「分からない」が理由なら、説明より1件の結果

逆に、役員が単に用途を想像できていないだけであれば、現場で1件やってしまうほうが早い。説明を100回するより、自社の資料が実際に短時間で形になったところを1度見ていただくほうが通ります。どの業務から手を付けるかの見立ては中小企業の生成AI導入ステップ|何から始めて、どの業務に入れるかに整理しています。

4|役員に渡すのは「使い方」ではなく、決めること4つ

上から入れると決めた場合、その時間で扱うべき内容は操作ではありません。持ち帰るのではなく、その場で決めていただく項目を4つ用意します。

  1. 入れてよい情報と、入れてはいけない情報の線。顧客の個人情報、未公開の財務数値、他社から預かった資料。どこまでを禁止にするかを決めます。ここが決まらないと、現場は自分で判断できず、結局使いません。
  2. 人事評価に使うかどうか。「AIを使ったかどうか」を評価に紐づけるのか、紐づけないのか。紐づけると短期的には利用が伸びますが、形だけの利用報告が増えます。当社は原則として紐づけないことをお勧めしていますが、これは会社の文化によります。
  3. 成果物の責任の所在。AIが作った下書きを社外に出して問題が起きたとき、責任は作った本人か、承認した上長か。ここを決めておくと、現場は安心して使えます。決めないと、誰も自分の名前で出しません。管理職側の関わり方は部下が生成AIで作った資料を、上司はどこまで直すべきか|管理職に要るのは「使う訓練」ではなく「見る訓練」に書きました。
  4. いくらかけて、いつ判断するか。初年度の予算上限と、続けるか止めるかを判断する時期。やめる基準を先に決めておくと、予算が途中で消えません。「効果が出なければ半年でやめる」と決めてある取り組みのほうが、実際には続きます。

この4つに答えが出れば、役員の時間は90分で足ります。逆に、この4つを扱わずに操作の説明だけをすると、時間の長さに関係なく何も決まりません。効果の測り方は生成AI研修のROI|「月◯時間削減」を試算する考え方と落とし穴に整理しています。

5|現場から入れる場合、役員に何を返すか

現場から始めると決めた場合でも、役員を放置してよいわけではありません。3か月後に、決裁の場に出せる材料を用意しておく必要があります。ここを準備しないまま次の予算期を迎えると、第2章の「予算の更新で落ちる」に当たります。

返す材料は3つで足ります。

あわせて、育てる順番そのものを考えるならDX人材の育成|「採る」が無理な会社が、社内で育てるときの順番が土台になります。

6|正直に申し上げること

まとめ

役員が分かっていないから研修が入らない、という状態の答えは「役員に分かってもらう」ではありません。止めている理由が「怖い」なのか「分からない」なのかを見分けることです。

怖いのであれば上から。ただしその時間で扱うのは操作ではなく、入れてよい情報の線、評価に使うかどうか、成果物の責任の所在、いくらかけていつ判断するかの4つです。この4つが決まれば、現場は自分で動き始めます。

分からないだけであれば現場から。ただし3か月後に、使われた実数・成果物の現物・ヒヤリとした1件を役員に返す準備をしておいてください。返す材料が無いまま次の予算期を迎えると、現場が動いていても止まります。

そして、役員研修だけを入れて終わらせないこと。上から入れるのは、現場を動かすためではなく、現場が動いたあとに止まらないようにするためです。

御社が上からか現場からか、30分で判定します。

予算の出どころ、役員が止めている理由、成果の出そうな業務の有無をうかがい、どちらから入れるべきかと、その場合の最初の1回の中身をお返しします。まだ社内で方向が固まっていない段階のご相談で構いません。

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※本記事は、記載時点で公表されている公的機関の資料に基づく一般的な整理であり、個別の事案における取扱いや適否を判定するものではありません。参照した資料は、経済産業省および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「デジタルスキル標準」、ならびに厚生労働省が公表する人材開発支援助成金に関する案内です。助成金は要件を満たす場合に対象となることがあるもので、受給・採択を保証するものではありません。要件・様式・申請期限は改正されることがあるため、実施前に管轄の労働局および各資料の最新版をご確認ください。研修の順番に関する記述は、当社がご相談・実施してきた範囲に基づく整理であり、統計調査に基づくものではありません。