DX研修とは|生成AI研修との違いと、自社に合う研修の選び方

この記事の要点
- DX研修は、デジタルを使って仕事の進め方を変えられる人を育てる研修です。ツールの操作を覚える研修とは狙いが違います。
- 内容は、リテラシー、データ活用、業務改革の3つに分かれます。生成AI研修は、このうちリテラシーと業務改革の一部に重なります。
- 何を変えるかが決まっていない会社は、最初の1コマを生成AIにすると、全社員の毎日の仕事で変化を確かめられます。
DX研修という言葉で調べ始めたものの、何をどこまで頼めばよいかが決まっていない人事・経営企画の方に向けて、DX研修の中身と、生成AI研修との違い、対象者ごとの組み方を整理します。DXという言葉は範囲が広く、ツールの講座から経営の話までが同じ名前で売られています。先に中身を分けておくと、研修会社の提案を比べやすくなります。
DX研修とは
DX研修とは、社員がデジタル技術を使って、業務やビジネスの進め方を変えていけるようにするための研修です。厚生労働省の助成金のパンフレットは、「デジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)」を、デジタル技術を活用して業務の効率化を図ることや、製品・サービス・ビジネスモデルを変革し、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革して、競争上の優位性を確立することと説明しています。
この記事では、このうち置き換えにとどまるものをデジタル化、進め方を作り直すところまでをDXと分けて呼びます。紙の作業をデジタルに置き換えるだけなら「デジタル化」で、デジタルを前提に仕事の進め方を作り直すところまで進むと「DX」です。
表1 デジタル化とDXの違い
| 観点 | デジタル化 | DX |
|---|---|---|
| やること | 紙やアナログの作業を、デジタルに置き換える | デジタルを前提に、仕事の進め方を作り直す |
| 例 | 紙の申請書を、Excelやフォームにする | 申請そのものを自動化し、承認の流れを見直す |
| 目的 | いまの作業が速く、楽になる | 業務や、価値の生み方が変わる |
DX研修が育てたいのは、「作り直す側」の発想を持てる社員です。そのため、操作を覚える研修とは分けて考えます。
DX研修の内容
この記事では、DX研修の内容を3つに分けて説明します。経済産業省と情報処理推進機構(IPA)のデジタルスキル標準は、全てのビジネスパーソン向けのDXリテラシー標準と、DXを推進する人材向けのDX推進スキル標準の2つで構成されています。研修も、全員向けの土台と、推進する人向けの専門に分かれます。
リテラシー
全社員が対象です。DXリテラシー標準は、Why(DXの背景)、What(DXで活用されるデータ・技術)、How(データ・技術の利活用)、マインド・スタンスの4つで構成されています。なぜ変える必要があるのか、どんな技術があるのか、どう使うのかを、職種を問わず共通の知識として学びます。2023年8月の改訂で、生成AIに関する記載が加わりました。
データ活用
業務で生まれるデータを集め、整え、判断に使うための知識と技能です。売上や在庫の数字を表計算で集計するところから、分析の手法、データを管理する仕組みまで、幅があります。対象は、数字を扱う部署と、推進を担当する人が中心になります。
業務改革
いまの業務の流れを洗い出し、どこをデジタルに置き換え、どこをやめるかを決めるための考え方です。業務の棚卸し、課題の整理、ツールの選定、社内への展開の進め方を扱います。対象は、管理職と推進の担当者です。変える権限を持つ人が受けないと、研修で出た案が実行に移りにくくなります。
研修だけでは、DXは進まない
DX研修は、変える力を持つ人を育てるところまでです。どの業務を変えるか、誰に権限を持たせるかは、会社の側で決める必要があります。研修の目的を決めるときに、戦略と組織の話を一緒に置きます。
生成AI研修との違いを、カリキュラムの項目で比べる
DX研修と生成AI研修は、対立するものではありません。扱う範囲が違い、一部が重なります。
図1 DX研修と生成AI研修の範囲の重なり
仕組みと組織の話
使う前の土台と、業務の見直し
毎日の仕事での使い方
生成AI研修は、DX研修のうち、全社員が自分の仕事で試せる部分を受け持ちます。
表2 カリキュラムの項目の比較
| カリキュラムの項目 | DX研修 | 生成AI研修 |
|---|---|---|
| DXの背景、自社の課題と戦略 | 扱う | 扱わない |
| デジタル技術の種類と概要 | 扱う | 生成AIに絞って扱う |
| データの集計と分析 | 扱う | 表計算の作業をAIで助ける範囲で扱う |
| 業務の棚卸しと見直し | 扱う | AIに任せる作業を洗い出す範囲で扱う |
| 指示(プロンプト)の書き方 | 研修による | 扱う |
| 自分の業務での実習 | 研修による | 扱う |
| 入力してよい情報と社内のルール | 扱う | 扱う |
表は、当社が2つの研修の違いを整理したもので、研修会社によって項目の入れ方は違います。提案を比べるときは、この項目のどれが入っているかを聞くと、名前が同じ研修の中身の違いが見えます。業務を題材にする生成AI研修が何をするのかは、生成AI研修とはで解説しています。
対象者ごとの組み方
DX研修を、全員に同じ内容で行うと、誰の仕事にも当てはまりにくくなります。役割ごとに、狙いと中身を分けます。
図2 対象者別の組み方
決める人にはDX研修、使う人には生成AI研修を当てます。
経営層と管理職を外さないことが大事です。現場だけが学んでも、どこを変えるかを決める人がDXを理解していなければ、現場の工夫は承認されにくくなります。研修を受けた人に何から任せていくかは、DX人材を社内で育てる順番で整理しています。
中小企業が最初の1コマを生成AIにする理由
中小企業がDX研修の予算を取ったとき、最初の1コマを何にするかで迷うことがあります。当社は、生成AIから入ることをおすすめしています。理由は3つあります。
- 全社員に関係する。メール、報告書、議事録、見積書といった文章の仕事は、職種を問わず毎日あります。データ分析やシステムの刷新は、関わる人が限られます。
- 投資が小さい。既製のツールを契約すれば始められ、システムの開発を待つ必要がありません。
- 次のテーマが見つかる。自分の業務でAIを使ってみると、AIでは片付かない作業が残ります。そこが、業務改革やデータ活用で取り上げる課題の候補になります。
変えたい業務やシステムがすでに決まっている会社は、順番が逆になります。経営層と推進の担当者向けのDX研修で、進め方と判断の基準をそろえるところから始めます。
概念を学ぶだけのDX研修は、助成の対象外となるコースがある
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に出す計画届から、DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練が、助成の対象外の例として示されました(経過措置あり)。受講者の業務に直結する訓練は対象となる可能性がありますが、支給されるかどうかは審査により異なります。条件はAI研修の助成金にまとめています。
選び方
DX研修の会社を選ぶときは、次の点を確かめます。
- 目的が、業務の名前で書けているか。「DX人材の育成」だけでは、研修の成否を確かめられません。どの部署の、どの業務を変えたいのかを先に決めます。
- 対象者が分かれているか。経営層、推進の担当者、現場の社員に、同じカリキュラムを当てていないか。
- 自社の業務に当てはめる時間があるか。講義を聞くだけの時間と、自分の業務で考える時間の割合を聞きます。
- 研修のあとに何をするかが決まっているか。受講後に試す場と、相談できる先を決めておきます。
全社員向けの土台だけを先にそろえたい場合は、AIリテラシー研修が参考になります。
ノセカエは、DX研修のうち、生成AIを業務で使う部分を受け持つ研修です。座学3割・実習7割で、貴社の業務を題材に進めます。経営層向けには90分のセミナーがあり、現場向けには半日研修と1日研修があります。1日研修では、部門別のワークと導入計画の作成まで行います。データ分析やシステムの開発を扱う研修は、当社の料金表にはありません。内容と料金はノセカエのトップページでご確認ください。
この記事のまとめ
- DX研修は、デジタルを使って仕事の進め方を変えられる人を育てる研修。
- 内容は、リテラシー、データ活用、業務改革の3つ。対象者ごとに分けて組む。
- 生成AI研修は、全社員が自分の仕事で試せる部分を受け持つ。
- 何を変えるかが決まっていない会社は、最初の1コマを生成AIにする。
よくある質問
- DX研修とは、何をする研修ですか
社員がデジタル技術を使って、業務やビジネスの進め方を変えていけるようにするための研修です。全社員向けのリテラシー、データ活用、業務改革の3つの内容があり、対象者によって組み合わせが変わります。
- DX研修と生成AI研修は、どちらを先に受けるべきですか
変えたい業務やシステムが決まっている会社は、経営層と推進の担当者向けのDX研修からです。何を変えるかが決まっていない会社は、生成AI研修で毎日の業務を変える体験を先に作り、そこで見えた課題からDXのテーマを決める進め方があります。
- DX研修は、全社員に受けさせる必要がありますか
リテラシーの部分は、全社員が対象です。データ活用と業務改革は、数字を扱う部署、管理職、推進の担当者に絞ります。全員に同じ内容を当てるより、役割ごとに分けるほうが、受講後の行動につながります。
- DX研修に、助成金は使えますか
人材開発支援助成金の対象となる可能性があります。ただし、事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に出す計画届から、DXの概念やデジタル技術の概要を学ぶ訓練が、助成の対象外の例として示されました(経過措置あり)。支給されるかどうかは審査により異なります。
参考資料・注意事項
- 経済産業省「デジタルスキル標準」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html - 情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準」
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html - 情報処理推進機構(IPA)「DXリテラシー標準(DSS-L)概要」
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about_dss-l.html - 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf - 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
最終確認:2026年10月2日。内容の3つの分け方と、カリキュラムの項目の比較は、当社の整理で、公的な基準ではありません。助成金は要件を満たす場合に対象となる可能性があるもので、受給を保証するものではありません。
