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保険代理店の生成AI活用|商品説明と募集文書は任せず、面談記録に使う

保険代理店の生成AI活用|商品説明と募集文書は任せず、面談記録に使う
目次
  1. 説明・募集文書・告知情報の3つには使わない
  2. 使いどころは、お客様に渡す前の社内文章
  3. 内勤から始め、募集人には用途を1つだけ渡す
  4. 事務所に貼る1枚のルール
  5. 契約件数ではなく、記録にかかる時間を数える
  6. まとめ
  7. 参考資料・注意事項

保険代理店で生成AIを入れても、新規の契約件数が増えるとは考えていません。継続率も手数料の水準も、紹介の連鎖とお客様との年単位の関係で決まる構造はそのままです。

それでも保険代理店は、生成AIの使いどころがはっきりしている業種です。「面談すること」より「面談したことを書き残すこと」に時間を取られているからです。この記事では、保険業法との関係で使わない範囲を先に決め、面談記録を中心とした4つの使いどころ、募集人への教え方、効果の測り方を順に扱います。

この記事は保険代理店(乗合・専属を含む)の実務を前提にしています。メモから記録を作る手順そのものは生成AIで議事録を作る手順、他の業種・部門の活用例は生成AIの業務活用事例で扱っています。

説明・募集文書・告知情報の3つには使わない

保険は、お客様に伝える内容そのものが規制の対象になる商材です。便利な使い方を探す前に「ここには使わない」を3つ決めてしまうのが早道です。順番を逆にすると、どこかで事故につながります。

① 商品の補償内容・保障範囲・保険料の説明

ここが最大の落とし穴です。正式な情報源は、約款とパンフレットと設計書です。生成AIは貴社が扱っている保険会社の約款を見ていませんし、改定履歴も知りません。それなのに、聞けば「一般的にはこうです」という、もっともらしい補償内容を書いてきます。

これは嘘をついているというより、世の中の平均的な説明を再現しているだけです。しかし保険は、同じ「入院」でも支払事由の定義が会社ごと・商品ごとに違います。平均の説明は、目の前の商品の説明にはなりません。給付の可否に関わる話をAIの文章で確認するのは、やめたほうがいいです。

② お客様に渡す募集文書・比較の表現

保険の募集に使う資料は、表示の内容が保険業法の規制を受けます。金融庁の監督指針は、保険会社に募集用の資料等の表示内容を審査する態勢を求めており、代理店の実務でも所属保険会社の定める手続を経た募集資料を使う運用が基本です。生成AIに作らせた説明文をそのままお客様にお渡しする使い方は、この枠組みの外にあります。

とくに複数社を扱う代理店で気をつけたいのが、比較の表現です。保険業法は、他の保険契約と比較して誤解させるおそれのある事項を告げたり表示したりすることを禁じています(第300条第1項第6号)。生成AIは頼めば比較表を作りますが、一部の項目だけを並べた表は、それ自体が問題になり得ます。社内の理解のために整理するのと、お客様に渡すのは、まったく別の行為として扱ってください。この線引きは、所属保険会社や所属団体の考え方を確認したうえで決めるべき領域です。

③ 告知内容・健康状態・お客様の個人情報

病歴は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたり、とくに慎重な取り扱いが求められる情報です。面談メモに書いてある健康状態を、そのまま生成AIに貼り付けない。ここは例外を作らないほうが安全です。

実務では「名前だけ消せばいい」と考えがちですが、氏名を消しても、生年月日・勤務先・家族構成・証券番号が揃えば個人は特定され得ます。消すのは名前ではなく、その4点だと覚えていただくと運用しやすいです。

使いどころは、お客様に渡す前の社内文章

固定するものを固定すると、残った領域はかなりはっきりします。共通しているのは、すべて「お客様に渡す前の、社内の文章」だという点です。

使いどころやること戻る時間の性質
面談記録・応対履歴の整形手元の走り書きを、所定の項目に並べ替える面談1件あたりの「あとで書く」時間
満期・更新のご案内の下書き承認済みの文面をもとに、伝え方の骨格を作る案内シーズンにまとめて発生する時間
ロープレの想定問答断り文句や想定される質問を並べて、社内練習の台本を作る教育担当が資料を作る時間
募集人の求人原稿仕事の中身を、経験者にも未経験者にも伝わる言葉にする採用のたびに毎回ゼロから書く時間

面談記録は「書かせる」のではなく「並べ替えさせる」

4つのうち、効果が大きいのは面談記録です。保険業法は顧客の意向を把握し、それに沿った提案と説明を行うことを求めており(第294条の2)、意向の把握と確認、説明した内容、お客様の反応を記録に残す作業は重くなっています。面談が1時間で終わっても、そのあとの記録に時間がかかる場合があります。

ここで大事なのは、生成AIに記録をゼロから書かせないことです。書かせると、話していないことを補って書きます。正しい使い方は逆で、面談中に取った雑なメモを渡して、所定の項目の順番に並べ替えさせる。足りない項目は「メモに記載なし」と出させる。ここが空欄で返ってくること自体が、その場で聞き漏らした項目の発見になります。

そして、並べ替えた文章は、面談した本人が読んでから確定させる。記録の内容に責任を持つのは、あくまで担当した募集人です。この一手を省いた瞬間に、この使い方は危険なものに変わります。

内勤から始め、募集人には用途を1つだけ渡す

保険代理店の導入がうまくいかない原因として多いのが、教える順番です。募集人は日中お客様のところにいて、事務所の席にいません。最初に外回りの募集人へ配ると、使われないまま数か月が過ぎることがあります。

順番対象渡す用途
1(最初の2週間)内勤の事務担当案内文の下書き、社内資料の整形。ひとりで試して、うまくいった頼み方をメモする
2拠点長・教育担当ロープレ台本、朝礼資料、求人原稿。人に配る前提の文章から
3外回りの募集人面談記録の整形だけに絞る。スマホで完結する形で渡す

3の段階で用途を1つに絞るのは、あえてです。できることを全部教えると、かえって何も使われなくなりがちです。「面談のあと、車の中でメモを読ませて記録の形に直す」。これだけを覚えてもらえば、その日から記録の時間を削減できます。うまくいった頼み方は1と2の段階で先に貯まっているので、それを1枚にして配ります。

研修をする場合の題材も、社内のものを使います。実際の面談メモ(個人を特定できる4点を伏せたもの)、承認済みの満期案内の文面、よく出る断り文句のリスト。この3つがあれば、実習はその場で自社の仕事になります。

事務所に貼る1枚のルール

ルールは長い文章にすると読まれません。事務所と各拠点に貼る紙は、次の内容が入っていれば足ります。

この4行を、実際に働く場所に貼ってください。共有フォルダのPDFは開かれにくいものです。規程そのものの作り方はAI利用規程の作り方で扱っています。守秘性の高い情報を扱う業種として考え方が近いのは、士業事務所の生成AI活用です。

契約件数ではなく、記録にかかる時間を数える

記録が速く整うことと、契約が取れることは別の話です。更新案内の文面が良くなっても、それだけで解約が止まるとは考えていません。面談そのものも速くはならず、縮むのは前後の「書く時間」だけです。ですから効果は、次のような数字で測ります。

研修が要らない代理店もあります。内勤の事務担当が2週間ほど実際の業務で使い、うまくいった頼み方を社内に配れるなら、それで十分な水準まで届きます。保険代理店向けに組むなら、使ってはいけない範囲を業務に即して線引きする部分と、募集人が現場で覚えられる形にまで用途を絞る部分に絞る形をおすすめします。研修費用は助成金の対象になる場合がありますが、受給は確約されません。条件はAI研修の助成金でご確認ください。

まとめ

保険代理店では、商品の補償内容と保険料の説明、お客様に渡す募集文書と比較の表現、告知や健康状態を含むお客様の情報の3つには使わないと先に決めます。中心は面談記録で、雑なメモを所定の項目に並べ替えさせ、担当した本人が読んでから確定します。教える順番は内勤事務、拠点長・教育担当、外回りの募集人の順です。

参考資料・注意事項

最終確認:2026年9月24日

本記事は一般的な実務の整理です。募集に関する表示・比較・募集資料の取り扱いの可否は、保険業法その他の法令と所属保険会社の定めによるため、所属保険会社・所属団体・専門家にご確認ください。助成金の適用可否は労働局・ハローワーク等の窓口でご確認ください。

保険募集の実務に合わせて、使ってよい範囲から設計する研修をご用意しています。

整理の結果、内勤の方が2週間さわれば足りると判断されるなら、それが正解だと思います。

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浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

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