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飲食業の生成AI活用|厨房ではなく「店の外に出す言葉」から効く

キーワード: 生成AI 飲食業 | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

飲食店の方から「AIで何かできませんか」とご相談をいただくとき、最初にお伝えしていることがあります。調理と仕込みは変わりません。生成AIは火加減も盛り付けも代わりにやってくれませんし、当面その方向に期待するのは筋が良くないと思っています。

では何が変わるか。店の外に出す言葉と、店の中で毎回ゼロから書き直している文章です。飲食業は、外から見えているより文章仕事が多い商売です。メニューの説明、POP、口コミへの返信、SNSの告知、求人票、新人に渡す手順、本部への報告。厨房とホールに立っていない時間の多くが、ここに消えています。私が見てきた限り、返ってくる時間はほぼ全部この領域から出ます

この記事は店舗を持っている飲食事業者に向けて書いています。予約管理システムや配膳ロボット、券売機の入れ替えといった機器の話は、生成AIとは別の投資判断です。ここでは切り離して考えます。

まず、どこに効いてどこに効かないかを分ける

「飲食業でAI活用」と言われると範囲が広すぎて動けなくなるので、部門ごとに効き方を分けます。私が現場で使っている整理です。

場所効きやすさ理由
販促・SNS・口コミ返信高い成果物が文章そのもの。書く時間がそのまま減る。しかも今は店長が閉店後にやっていることが多い
採用(求人票・応募者への返信)高い同じ内容を媒体ごとに書き直している。使い回しの下書きを作るのが得意な領域
教育(新人向けの手順・接客の言い回し)中〜高ベテランの頭の中にしかない手順を、文章に起こす作業を助けられる
メニュー開発・原価管理アイデア出しと言語化には効く。原価計算や値付けの決定そのものは任せない
シフト作成低〜中希望と労働時間の制約を満たす組み合わせ問題で、生成AIの得意分野ではない。専用のシフトツールのほうが向く
調理・仕込み・接客そのもの低い身体を使う仕事。ここを期待して導入すると、確実に肩透かしになる

上の2行から始めてください。効く順ではなく、上から順に「今すでに誰かが時間を使っている」順に並べてあります。効果の大きさより、痛みの大きさで選んだほうが定着します。

飲食業で先に効く5つの場面

1|メニューの説明文とPOP

いちばん手前にあります。素材名・産地・調理法・想定する食べ方をメモ書きで渡し、字数を指定して数パターン出させる。そこから店の言葉に直す。ゼロから考えるのと、出てきた案を直すのとでは、かかる時間が違います。

店内POP、デリバリーアプリの商品説明、テイクアウトの案内。同じ料理でも媒体ごとに文字数と言い方が変わるので、一度書いた文章を媒体別に書き換える使い方が、実際にはいちばん多いです。

2|口コミへの返信

閉店後に店長が向き合っている作業の筆頭です。とくに厳しい口コミへの返信は、書き出すまでに時間がかかります。生成AIを挟むと、感情が乗った一文目を書かずに済むという効き方をします。

ただし、そのまま投稿しないでください。運用としては、下書きを出させて、事実関係の確認と最終判断は必ず人が行う形にします。詳しくは後述しますが、ここは事故が起きる場所です。返信の型そのものは生成AIのカスタマーサポート活用と考え方が共通します。

3|SNSと告知文

投稿が続かない理由は、ネタが無いことより毎回文章の形を考え直していることです。「今日の仕込み写真+一言」の型を先に決めてしまい、その型に沿った文案を出させる。継続の負荷が下がります。

季節のフェア、休業日の案内、価格改定のお知らせ。とくに謝りにくい内容ほど下書きの価値が出ます。値上げの告知文を店長が一人で書き上げるのは、想像以上に消耗する作業です。集客文の考え方は生成AIのマーケティング活用にまとめました。

4|求人票と応募者への返信

飲食は募集を止められない業種です。そして求人媒体ごとに書式が違い、同じ内容を何度も書き直しています。元になる情報を一度整理しておき、媒体ごとに書き換える。この使い方が効きます。

応募者への一次返信も同じです。テンプレートが冷たくなりがちな部分に、店の言葉を足す作業を任せられます。ただし条件(時給・シフト・交通費)は必ず自社の正しい数字を人が確認して差し込むようにしてください。ここを生成AIに考えさせてはいけません。

5|新人向けの手順と接客の言い回し

飲食の教育が回らない最大の理由は、教える人が忙しいことです。手順書を作る時間が取れない。ここはベテランに話してもらった内容を文章化する使い方が向いています。

「開店前にやること」「クレームが出たときの初動」「アレルギーを聞かれたときの受け答え」。口頭で伝わってきたものを、まず文章の形にする。完成度は後から上げられますが、存在しない手順書は改善のしようがありません

任せてはいけない3つ

研修では、できることより先にこの3つを伝えています。飲食業は、間違いが健康と信用に直結する業種だからです。

任せてはいけないこと何が起きるかどうするか
アレルギー表示・原材料・食品衛生の判断もっともらしい表示文が出てくるが、実際の仕入れ品と一致している保証がない。命に関わる表示に関わる情報は、仕入先の規格書と自社の管理表を正とする。生成AIは体裁を整える用途に限る。判断は保健所や専門家の指示に従う
原価計算・値付けの決定数字の計算は不得意で、それらしい数字が返ることがある。粗利を誤ると店が傾く計算は表計算ソフトかPOSの数字で行う。生成AIは「値上げをどう伝えるか」の言葉づくりに使う
口コミトラブルへの返信をそのまま投稿事実を確認しないまま非を認める文面や、逆に突き放す文面が出る。公開の場なので取り返しがつかない下書きまで。投稿前に、事実確認と店長・本部の承認を必ず挟む運用にする

共通しているのは、外に出た瞬間に取り消せないものだということです。社内文書なら直せますが、表示と公開投稿は直せません。この線引きを最初に配ってください。書き方の型はAI利用規程の作り方にあります。

飲食業ならではの3つの壁

ここが他業種と最も違う部分です。研修の中身が良くても、この3つを外すと現場では動きません。

実際に起きること対処
全員が同じ時間に集まれないシフト制で、営業時間中は誰も抜けられない。集合研修の日程が組めず、企画が流れる1回で全員を集める前提を捨てる。1コマ60分以内・録画を残す・同じ内容を2〜3回に分ける。アイドルタイムか閉店後に寄せる
店舗に個人のPCが無い使えるのは共有のタブレットか私物スマホ。研修でPC画面を教えても、翌日には再現できないスマホ画面で教える。共有端末を使う場合は、誰のアカウントで入るか・私物で使ってよい範囲を先に決める
本部と店舗で練度が開く本部は使えるが店舗は触っていない。結果、本部が作った文章を店舗に配るだけになり、店舗の時間は減らない店舗側の題材(自店のメニュー・自店の口コミ)で実習する。本部の題材で研修すると、店舗には他人事になる

とくに1つめは深刻です。「全員研修」を待っていると、いつまでも実施日が決まりません。まず店長とエリアマネージャーだけで始め、そこで効いた使い方を型にしてから広げる。この順番のほうが、結果的に全店に届くのが早くなります。

研修の組み方

私たちが飲食の事業者向けに組む場合、次の形にすることが多いです。

研修全体の設計思想はAI研修に、業種を問わない効かせ方は小売業の生成AI活用にも整理しています。小売と飲食は、店舗運営という点で共通する部分が多いです。

費用と助成金について

研修費用の一部について、国や自治体の助成制度の対象になる場合があります。人材開発に関する助成や、自治体のデジタル関連の支援制度が該当しうる領域です。

ただし、対象となる要件・支給額・申請の期限は制度ごとに異なり、年度によって変わります。受給や採択が確約されるものではありません。実際の可否は、必ず制度の実施機関の最新の公募要領でご確認ください。研修の設計段階で、対象になりうる制度があるかどうかは一緒に見ます。

まとめ

飲食業で生成AIを入れるなら、厨房ではなく、店の外に出す言葉からです。メニューの説明、口コミ返信、SNS、求人票、新人向けの手順。閉店後に店長が一人で書いている文章が、そのまま候補になります。

逆に、アレルギー表示と原材料の判断、原価と値付けの決定、口コミへの返信をそのまま投稿すること。この3つは任せないでください。外に出た瞬間に取り消せないものだけは、人が最後を持つ。この線引きが飲食では特に重要です。

そして、全員が集まれる日を待たないこと。まず店長から始めて、効いた使い方を型にしてから広げるほうが早く届きます。

何から手をつけるか決まっていない状態で構いません。助成金が使えるか無料診断で、店舗数・体制・いま時間を取られている作業を伺い、どの場面から載せ替えるかと、対象になりうる制度があるかを一緒に整理します。

自店のメニュー・自店の口コミを題材に、シフトに合う形で組みます。

まず「いま閉店後に何を書いているか」を教えてください。そこから設計します。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、特定の制度への適合を判定するものではなく、助成金の受給や採択が確約されるものではありません。制度の要件・金額・期間は変更されることがあるため、最新の公募要領を実施機関にてご確認ください。食品表示・アレルギー表示・衛生管理に関する判断は、所管の行政機関および専門家にご相談ください。