AIエージェント研修とは|使う・作る・広げるの3段階で、受講者と到達点を分ける

この記事の要点
- AIエージェント研修は、目的を受けて手順を自分で決め、道具を使って作業を進めるAIを、業務で使う・作る・社内に広げるための研修です。
- 生成AI研修との違いは、任せる範囲と、人が承認する場面を決めることが中心になる点です。
- エージェントを作る研修の前に、任せたい業務の手順を文章にします。手順が書けないままでは、何を任せるかも決まりません。
目次
AIエージェントを社内で使いたい、作りたいと考えているDX推進と情報システムの担当の方に向けて書きます。AIエージェント研修と呼ばれるものには、開発者向け、ノーコードで作る人向け、利用者向けなど、対象の違う講座やコースが含まれます。どれが合うかは、自社の段階で決まります。段階は、使う・作る・社内に広げるの3つです。
AIエージェント研修とは
AIエージェントとは、人から目的を受け取り、作業の手順を自分で決め、道具を使って作業を進めるAIの仕組みを指します。道具とは、ファイルの読み書き、Webの検索、社内のシステムの操作などです。
Claudeを開発するAnthropicは、2024年12月の記事「Building effective agents」で、2つの仕組みを呼び分けています。あらかじめ決めた手順どおりにAIと道具をつなぐ仕組みが「ワークフロー」です。AIが自分の進め方と道具の使い方を動的に決める仕組みを「エージェント」と呼んでいます。AIエージェント研修は、後者を業務で扱えるようにする研修です。
生成AI研修との違い
生成AI研修で主に扱うのは、チャットの形で使うAIです。人が質問や依頼を書き、AIが文章で答えます。答えの使い道は人が決めます。操作するのも人です。1回のやりとりで、人の手に戻ります。生成AI研修そのものの中身は、生成AI研修とはで整理しています。
エージェントは、1回の依頼で、手順を決め、道具を使い、結果を見て次の手を選ぶ、というくり返しを自分で進めます。人の手に戻る場面は限られます。作業が終わったときか、途中で確かめると決めておいた場面だけです。
エージェントは、目的を受けて手順を自分で決め、道具を使って作業を進める

研修で教える中心は、任せる範囲と、人が承認する場面の決め方になります。
任せる範囲が広いぶん、気を付けることも増えます。Anthropicの同じ記事は、エージェントは自律して動くため費用がかさみ、誤りが積み重なるおそれがあるとして、隔離した環境での十分な試験と、適切な歯止めを勧めています。人の判断を仰ぐ確認の点(チェックポイント)や、くり返しを何回までにするかといった止める条件を置くことにも触れています。
エージェントが要らない業務もある
Anthropicの同じ記事は、できるだけ単純な方法を探し、必要なときだけ仕組みを複雑にすることを勧めています。毎回同じ手順で同じ処理をする業務なら、手順を固定した自動化や、チャットでの依頼で足りることがあります。
3つの段階
AIエージェント研修は、受講者がエージェントとどう関わるかで、3つの段階に分けると整理しやすくなります。段階によって、身につけるスキルのレベルも変わります。
受講者と到達点は、使う・作る・社内に広げるの段階で変わる

自社が探しているのがどの段階の研修かを先に決めると、候補を絞れます。
使う
この段階で身につけたいのは、承認の画面を読んでから押す習慣です。読まずに押すと、人が確かめる場面を決めた意味がなくなります。対象は、すでに用意されたエージェントに、自分の業務を任せる人です。受講者は、何を頼み、どこまで任せるかを指示に書き、途中で承認を求められたら中身を読んで判断します。研修では、承認の場面で何を見て判断するかを、実際の画面で練習します。
作る
業務の手順をもとに、エージェントを自分で組む段階です。たとえば、毎朝届く問い合わせのメールを読み、種類ごとに分けて、担当ごとの一覧を作る、といった業務が題材になります。組み方は、プログラムを書いて開発する方法から、ノーコードの道具で設定する方法まで幅があります。どちらでも、決めることは同じです。エージェントへの指示、使ってよい道具、読んでよい情報、止める条件、人が承認する場面です。研修を選ぶときは、組み方の違いより、これらを設計する練習が入っているかを見ます。
社内に広げる
部門をまたいでエージェントを配る段階では、技術より決まりが要ります。誰がどのエージェントを使ってよいか、権限をどこで管理するか、動きの記録を誰が見るか、不具合が出たら誰が直すかを決めます。たとえばClaude Codeには、組織の管理設定で配った規則を、利用者の側で上書きできない仕組みがあります。設定の考え方はClaude Code研修の選び方で書いています。この段階は、決まりを作る担当と、道具の設定ができる担当の両方が受けます。
段階ごとの受講者と到達点
表1 段階ごとの研修の比較
| 段階 | 受講者 | 到達点 | 研修で練習すること | 研修の前に会社が用意するもの |
|---|---|---|---|---|
| 使う | エージェントを業務で使う部門の社員 | 任せる範囲を指示に書き、承認の場面で中身を見て判断できる | 依頼の書き方、承認の画面の読み方、結果の確かめ方 | 使ってよいエージェントと、入力してよい情報の決まり |
| 作る | 各部門の推進役、情報システムの担当 | 業務の手順書から、指示・道具・止める条件を組める | 手順書の書き方、道具と権限の選び方、試験の進め方 | 任せたい業務の手順書、試験用の環境とデータ |
| 社内に広げる | DX推進の担当、管理者 | 権限・承認・記録・直す担当の決まりを作り、部門に配れる | 権限の管理、記録の見方、変更の手続き | 利用の規程、管理者の権限、相談の窓口 |
3つの段階は、順番に進む必要はありません。情報システムの担当が「作る」と「社内に広げる」を先に受け、決まりを整えてから、利用する部門が「使う」を受ける順番もあります。気を付けたいのは、「使う」を先に全社へ広げる順番です。決まりのないまま研修を広げると、部門ごとに違う使い方が始まります。
研修の前に用意するもの:任せる業務の手順書
エージェントを作る研修の前に、任せたい業務の手順を文章にしておきます。手順が書けない業務は、エージェントにも任せられない、と当社は考えています。エージェントは、指示と道具をもとに手順を組み立てます。しかし、何をもって完了とするか、どこで迷ったら人に聞くかは、人が言葉にして初めて伝わります。
立派な文書である必要はありません。次の5つが書いてあれば、研修の演習に使えます。
- 入力:作業を始めるときに受け取るもの(メール、表計算のファイル、申請の書類など)
- 手順:人がいま行っている作業を、順番どおりに書いたもの
- 判断の基準:途中で分かれる場面と、どちらに進むかの決め方
- 完了の条件:何ができていれば終わりか
- 止める場面:人に確かめる場面と、そこで止まって待つ条件
手順書が書けたら、次の3つの問いで任せ方を決めます。
手順、判断の基準、取り消せるかの3つで、任せ方が決まる

取り消せない操作は、手順と基準が書けても、実行の前に人が承認します。
手順は書けても、判断の基準が書けない業務があります。たとえば、急ぎの問い合わせをどう見分けるかが、担当者の経験に頼っている場合です。その判断は人に残します。エージェントに任せるのは、問い合わせの整理と返信の下書きまでです。取り消せない操作も同じです。社外へのメールの送信、支払い、データの削除は、手順と基準が書けても、実行の前に人が承認します。どの業務からAIに任せるかの仕分けには、生成AIで業務効率化で紹介している4つの問いも使えます。
作ったエージェントを、誰が直し続けるか
社内に広げる段階で決める「直す担当」を、もう少し具体的に書きます。エージェントは、作った時点で完成するものではありません。業務の手順が変わる、使っている道具の仕様が変わる、想定していなかった入力が来る。こうした変化のたびに、指示や設定を直します。避けたいのは、作った本人の異動とともに、誰にも直せなくなる形です。
先に決めるのは、持ち主、変更の手続き、記録を見る人の3点です。持ち主は、直す責任を持つ人です。変更の手続きでは、誰が確かめてから配るかを決めます。記録は、誰がどのくらいの頻度で見るかを決めます。持ち主は、作った個人の名前で決めず、部門の役割に付けておくと、異動があっても引き継げます。
個人のアカウントで作ったエージェントを、業務の本番に使わない
個人のアカウントで作ったエージェントは、その人が退職するか、アカウントが止まると、動かせなくなることがあります。中身を確かめられなくなることもあります。業務で使うものは、会社として管理しているアカウントと環境で作ります。研修のあとにアカウントをどう扱うかは、生成AIのアカウント管理で整理しています。
研修会社に確かめること
比べるのは、講座の名前より中身です。問い合わせの前に、次の点を聞けるよう準備しておくと、候補を絞りやすくなります。上の2つが研修の中身、次の2つが進め方、最後の2つがデータと研修のあとの扱いです。
- 3つの段階のうち、どこを扱う研修か
- 任せる範囲と、人が承認する場面を決める練習が入っているか
- 演習の題材は、受講者の業務か、研修会社が用意した例題か
- 演習で使う道具と、その道具の契約を誰が用意するか
- 演習で自社のデータを使う場合の扱い(渡す範囲、研修のあとの削除)
- 研修のあとの質問や、作ったエージェントの手直しに対応するか
演習で自社のデータを使ってよいかは、研修会社に聞く前に社内で判断します。判断の順番は、研修の演習で自社の実データを使ってよいかで扱っています。
エージェントの研修をノセカエに頼めるか
AIエージェントを扱う研修は、ノセカエのトップページのメニューには載せていません。トップページにあるのは、次の5つです。
- 経営層向けセミナー(90分)
- 半日研修(3時間)
- 1日研修(6時間)
- 助成金対応プラン(2日間・計10時間から)
- AI顧問(月額)
研修は座学3割・実習7割です。半日研修では、受講者が自分の業務を持ち込み、部署ごとに「AIに渡せる仕事」を棚卸しし、研修の終わりに「明日からAIに任せる作業」を決めます。当社は、この棚卸しの考え方は、エージェントに任せる業務を選ぶときにも使えると考えています。研修のあとも続けて進めたい場合は、月2回の定例とチャットでの相談、社内展開の伴走が付くAI顧問(月20万円から・税別)をご案内しています。料金と内容はノセカエのトップページでご確認ください。
この記事のまとめ
- AIエージェントは、目的を受けて手順を自分で決め、道具を使って作業を進める。
- 研修の中心は、任せる範囲と、人が承認する場面を決めること。
- 研修は、使う・作る・社内に広げるの3段階で、受講者と到達点が変わる。
- 作る研修の前に、入力・手順・判断の基準・完了の条件・止める場面を書いた手順書を用意する。
- 作ったエージェントの持ち主と、変更の手続きを先に決める。
よくある質問
- AIエージェント研修と生成AI研修は、どちらを先に受けるべきですか
社員がチャットの形のAIをまだ使っていないなら、生成AI研修が先です。指示の書き方と答えの確かめ方は、エージェントを使うときの土台になります。
- プログラミングができなくても、エージェントを作る研修は受けられますか
ノーコードの道具で作る研修もあります。ただ、組み方にかかわらず、任せる業務の手順と判断の基準を言葉にする作業は残ります。手順書を書けることを、受講の前提と考えてください。
- eラーニングのAIエージェント講座だけで足りますか
使い方の基礎や開発の技術は、eラーニングでも学べます。ただ、自社のどの業務を任せるか、承認の場面をどこに置くかは会社ごとに違います。手順書を作り、自社の業務で試す場は別に要ります。
- AIエージェント研修は、助成金の対象になりますか
人材開発支援助成金の対象となる可能性はありますが、受講者の業務に直結した内容であることや、訓練の時間などの要件があります。令和8年8月3日以降に出す計画届からは、DX化の訓練のうち、職務に間接的に必要な知識を学ぶものや、職業人として共通して必要なものが対象外になりました。厚生労働省の資料は、特定の業務への具体的な適用を伴わない、汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ訓練を例に挙げています(経過措置があります)。支給は審査で決まります。条件はAI研修の助成金で確かめてください。
参考資料・注意事項
- Anthropic「Building effective agents」(2024年12月19日)
https://www.anthropic.com/engineering/building-effective-agents - Anthropic「Configure permissions」(Claude Codeの管理設定)
https://code.claude.com/docs/en/permissions - 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
最終確認:2026年10月17日。エージェントとワークフローの定義はAnthropicの記事によります。3つの段階、手順書の項目、任せ方の問いは、当社の考え方を整理したものです。製品の機能は、各社の公式の情報でご確認ください。助成金の記述は一般的な整理で、支給を保証するものではありません。
どの業務をAIに任せるかから、研修を組み立てます。
扱いたい業務と、すでに使っているAIのツールをうかがい、研修の組み方を30分の無料相談で確認します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
