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美容室・サロンの生成AI活用|効能は書かせない。戻るのは発信と返信の時間です

キーワード: 生成AI 美容室 | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

美容室やサロンの経営者から生成AIの相談をいただくとき、まずお伝えしているのは期待値のほうです。生成AIを入れても、新規のお客様が増えることはありません。集客は立地と技術と口コミで決まる、という構造は変わりません。

では何が変わるか。閉店後にやっている文章仕事の時間です。SNSの投稿文、口コミへの返信、求人サイトの原稿、店販商品の案内文。この4つは、多くのサロンで営業時間外に無給に近い形で処理されています。ここが半分になれば、実務としてははっきり効きます。

そのうえで、この業種には先に固定しておくべき線があります。順番を逆にすると事故が起きるので、そこから書きます。

この記事は業種別クラスタの1本として、美容室・理容室・エステ・ネイル・リラクゼーションといった対人サービスのサロンを対象に整理しています。医療機関としての美容医療はクリニックの生成AI活用に、店販や物販の運営そのものは小売業の生成AI活用に分けました。

先に固定する:書かせてはいけない3つ

サロンの発信で難しいのは、「良さを伝える言葉」と「言ってはいけない表現」が隣り合っていることです。生成AIは、頼めばいくらでも魅力的な文章を書きます。そして魅力的な文章ほど、この境界を越えます。

固定する範囲具体例なぜ危ないか
①身体への効果・効能をうたう表現「髪が生える」「シミが消える」「痩せる」「アトピーが治る」化粧品や施術について医薬品のような効果をうたう表現は、薬機法上の広告規制に触れる可能性がある。生成AIは頼まなくても、この種の言葉を自然に混ぜてくる
②根拠のない最上級・断定「地域No.1」「絶対に似合う」「満足度100%」「業界最安」裏づけのない優良誤認・有利誤認は景品表示法の問題になり得る。順位や割合は、根拠の資料が手元にないなら書かない
③お客様個人に関する情報カルテの記載、施術履歴、来店頻度、写真、相談内容外部のサービスに入力する行為そのものが問題になり得る。匿名化したつもりでも、地域と施術内容の組み合わせで特定につながることがある

この3つは、便利になるかどうかの話ではありません。使ってよい範囲を決める前に、使わない範囲を先に貼り出しておく。私が研修の1コマ目でこれをやるのは、後から言っても手遅れだからです。スタッフは良かれと思って書きます。悪意がないぶん、止まりません。

もう1点、実務的な補足を。①については「効果を書かない」だけでは足りません。お客様の声を投稿に転載するときも同じ規制がかかります。本人が「シミが薄くなりました」と書いてくださったものを、そのまま店の広告として載せると、店の広告表現として扱われます。ここは生成AIの話ではありませんが、投稿文をAIに任せ始めた店で実際に増える事故です。

残った領域で、効くのは4つ

線を引いたうえで、サロンで実際に時間が戻る場所を挙げます。効果が翌日に見える順に並べています。

①SNS投稿文とスタイル紹介の書き分け

写真は撮れているのに、添える文章が浮かばず投稿が止まる。これがいちばん多い詰まりです。ここで有効なのは、施術内容を箇条書きで渡して、読み手を指定して書かせるやり方です。

たとえばこう渡します。「使用薬剤:(実際の商品名)/施術時間:2時間/カットの狙い:伸ばしかけの肩につく毛先を扱いやすく/想定読者:30代後半・毎朝のスタイリングに10分かけたくない人」。ここまで具体的に渡すと、出てくる文章が一般論になりません。逆に「かわいい感じで投稿文を書いて」と頼むと、どの店でも通用する当たり障りのない文章が出てきます。

指示の型そのものはプロンプトの書き方に整理しました。サロンの場合は「書かないでほしいこと」を毎回指示に含めるのがコツです。「効果や効能に触れないでください」「最上級表現は使わないでください」の2行を定型で入れておくだけで、直しがかなり減ります。

②口コミへの返信

これは効きます。特に、対応に困る内容の口コミです。感情が動いている状態で返信を書くと、時間もかかるし、後から見返して直したくなります。生成AIに一次案を書かせると、頭を冷やす時間が省ける

ただし条件が2つあります。1つは、口コミの本文をそのまま貼らず、状況を自分の言葉に置き換えて渡すこと。投稿者が特定できる情報を外部に入れないためです。もう1つは、事実関係の記述を必ず自分で書き直すこと。「担当者に確認しました」といった、確認していないことをAIが補って書くことがあります。

問い合わせ対応全般の考え方は生成AIをカスタマーサポートに使うにまとめています。

③求人原稿

美容業界は人の出入りが多く、求人を出し続けている店が多い。そして求人原稿は、書き直す機会が少ないぶん何年も同じ文面が使い回されています。ここは生成AIの得意分野です。

やり方は、いまの原稿を貼って「この内容のまま、新卒向け/経験者向け/子育て中の復職者向けの3パターンに書き分けてください」と頼むだけ。条件面は変えず、届け方だけ変えます。労働条件そのものは自分で確定させて、変えさせないでください。

④店販商品の案内文とメニュー説明

店販が伸びない理由の多くは、「勧める言葉が用意されていない」ことです。スタッフによって説明がばらつき、説明が苦手な人は黙る。ここは、商品ごとに2〜3行の説明を用意しておくだけで揃います。

作るときは、メーカーの商品説明をそのまま貼って「この範囲を超える効果は書かないでください」と指示します。メーカーが書いていないことを書き足させない。これが唯一かつ最大のルールです。

やっても、あまり変わらないこと

期待されがちですが、私の見立てでは効果が薄いものも書いておきます。

やろうとされること実際
予約管理・シフト作成をAIに任せる予約システムやシフトツールの機能でやるほうが確実です。生成AIは表計算的な整合が苦手で、確認の手間が増えます
カウンセリングの提案をAIに考えさせる髪質・肌の状態は目と手で判断するものです。ここを言葉に置き換える工程のほうが時間がかかります
お客様への個別メッセージを一括生成する個人情報の入力が前提になるうえ、文面の均質さが伝わります。定型の案内文までに留めるのが現実的です
投稿を毎日自動化する確認しない投稿が増えるだけで、①の規制リスクが上がります。数を増やすのではなく、1本にかける時間を減らす方向で使ってください

少人数の店で、どう定着させるか

サロンの導入がほかの業種と違うのは、就業時間中にPCの前に座る時間がほとんどないことです。全員研修を組もうとしても、営業を止めない限り集まれません。実際にやっているのは次の形です。

  1. 店長・オーナーが先に1人で使う(2週間)。SNS投稿文だけに絞ります。ここで「書かせない3つ」の感覚を先に持っていただきます
  2. 使えた指示文を1枚に書き出す。うまくいった頼み方をそのままコピーできる形にします。スタッフに考えさせないのがコツです
  3. スマートフォンで完結する形にする。PCを前提にすると使われません。休憩中や施術の合間に触れる状態にします
  4. 朝礼で1つだけ共有する。まとまった研修時間を取らず、10分を何回かに分けます

1と2を飛ばして全員に配ると、まず使われません。使われたとしても、線引きが共有されていない状態で発信が始まります。順番としては、線を引く→1人が慣れる→型を配る、です。全体の進め方は中小企業の生成AI導入ステップに整理しました。

アカウントの扱いも決めておいてください。個人のアカウントで店の投稿文を作ると、退職時に何も残りません。店として1つ契約し、入力してよい情報の範囲を紙1枚で決める。この線引きは生成AIの社内ルールの作り方生成AIのセキュリティに詳しく書きました。

研修に使える支援制度について

従業員を対象とした研修には、人材開発支援助成金をはじめとした公的な支援制度が対象になる場合があります。ただし要件は年度によって変わり、事前の計画届など手続きの順番も定められています。申請したからといって受給や採択が確約されるものではありません。

制度の概要と、実務でつまずきやすい点はAI研修に助成金は使えるかにまとめています。適用の可否は必ず労働局・ハローワーク等の所管窓口にご確認ください。私たちは制度を前提にした提案はせず、使える可能性がある場合に手続きの順番をご案内する立場です。

ノセカエの考え方

正直に書くと、生成AIでサロンの売上が上がるとは考えていません。指名が増えるのは技術と接客の結果であって、そこは動きません。投稿の本数を増やしても、予約が比例して増えるわけでもありません。

私たちが提供できるのは、営業時間外に消えている時間を戻すことです。投稿文を考える時間、口コミの返信に悩む時間、求人原稿を書き直す時間。合計すると、月に十数時間かかっている店が珍しくありません。それが減ることの価値は、経営者の方ほど分かっていただけます。

そしてもう1つ。美容の領域は、線引きを決めないまま現場に使わせると危ない業種です。スタッフが良かれと思って「〜に効きます」と書く。悪気はまったくありません。だから止まりません。研修の目的の半分は、その線を全員が同じ位置に引くことにあります。

まとめ

美容室・サロンで生成AIを使うときは、書かせない範囲を先に固定します。①効果・効能をうたう表現、②根拠のない最上級と断定、③お客様個人に関する情報。この3つです。

残りで効くのは4つ。①SNS投稿文の書き分け、②口コミへの返信、③求人原稿、④店販の案内文。①から始めると効果が翌日に見えます。

投稿文のコツは1点。施術内容と想定読者を具体的に渡し、「効果や効能に触れない」「最上級表現を使わない」の2行を毎回添える。この2行があるだけで、直しの時間が減ります。

定着させるには、まず店長が1人で2週間使い、うまくいった頼み方を1枚に書き出してから配る。スマートフォンで完結する形にしないと、営業中には触れません。

何から手をつけるか、スタッフにどこまで許してよいか判断がつかない。その段階からで構いません。無料診断で現在の発信のやり方を伺い、今日から着手できる作業と、線を引くべき箇所を分けた表をお作りします。

自社のSNS投稿・口コミ返信・求人原稿を題材に、線引きから設計します。

少人数店でも回る研修プランと、活用できる可能性のある支援制度もあわせてご案内します。

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※本記事は一般的な整理であり、個別の広告表現・業務運用が医薬品医療機器等法(薬機法)、景品表示法、美容師法・理容師法、個人情報保護法その他の法令および各種規約に適合することを判断するものではありません。表現の可否や施術に関する説明の取り扱いについては、所管窓口および顧問弁護士等にご確認ください。助成金・補助金は要件が年度により変わり、申請しても受給や採択が確約されるものではありません。制度の適用可否は労働局・ハローワーク等の所管窓口にご確認ください。