育休・休職中の社員に生成AI研修を案内してよいか|声をかけてよい場面と復帰後に回す場面

目次
全社で生成AI研修を実施するとき、受講者リストで扱いに迷うのがいま休んでいる社員です。育児休業中の人、私傷病で休職している人、介護で休んでいる人。こうした社員に研修の案内を出してよいか、人事担当の方が迷ったときの考え方を整理します。
外せば、復帰したときに一人だけ話についていけなくなる。かといって、休んでいる人に「受けてください」と送るのは気が引ける。どちらも正しい心配なので、「受けさせるか、外すか」の二択のままでは結論が出ません。
以下では、この問いを3つに分け、声をかけてよい場面と復帰後に回す場面を整理します。休業中の就労の扱い、受講時間の賃金、給付や助成金の対象者の要件は制度が関わる領域なので、厚生労働省の公表資料で確認できた範囲だけを示し、確認先を明記します。
1|「案内」「受講」「業務扱い」の3つに分けて考える
まず、ひとかたまりになっている「研修を受けてもらう」を3つに分けます。決める人も、必要な配慮も、それぞれ別です。
| 分けるもの | 中身 | 決めるのは誰か |
|---|---|---|
| ① 案内を届けるか | こういう研修をやります、という情報が本人の手元に届く状態にするか | 会社(人事) |
| ② 本人が受けると決めるか | 届いた案内に対して、受ける・受けない・復帰後にする、を本人が選ぶ | 本人 |
| ③ 受講を業務として扱うか | 受講の時間を業務時間として扱い、賃金を払うか。助成金の対象に入れるか | 会社(要・制度の確認) |
議論が止まりやすいのは、この3つが混ざっているためです。「案内を出す」と「受けさせる」が同じ意味に聞こえるので、案内の話をしているだけなのに、休業中に働かせる話として議論が始まってしまいます。逆に、②と③を分けないまま「本人が受けたいと言ったから受けてもらった」とすると、③の整理がないまま時間を使わせることになります。
決める順番は、①は会社が決める、②は本人に委ねる、③は①②が決まってから社会保険労務士などに確認して決める、がおすすめです。③から議論を始めると、制度の話で止まったまま研修の日程が来てしまいます。
2|分ける基準は休みの種類より「戻る日が見えているか」
次に、休んでいる社員をひとくくりにしないことです。ただし、分ける基準を「育休か、休職か」という制度の名前だけに置くと、実態と合わないことがあります。判断に役立つのは、戻る日がおおむね見えているかどうかと、いま本人が療養中かどうかの2つです。
| 状態 | 戻る日 | 案内を届けることの意味 |
|---|---|---|
| 育児休業中 | おおむね見えていることが多い | 戻る日が分かっているので「復帰後に受けられる」と添えられる。情報として届く価値がある |
| 介護休業中 | 状況で動く | 予定が変わる前提で書く。日程を固定した案内は、かえって負担になりやすい |
| 私傷病による休職中 | 見えないことが多い | ★療養が目的の期間。会社から学習の案内が届くこと自体が負担になり得る。産業医・主治医の判断が先 |
| 休職から復職が決まった直後 | 決まっている | 特に配慮が必要な時期。戻す順番は業務が先で、研修は後 |
3行目に★を付けたのは、ここだけ性質が違うためです。療養中の社員には、「受けなくてよい」と書いてあっても、会社からの連絡が届くこと自体が心理的な負担になり得ます。休職中の連絡の頻度や内容を産業医の意見を踏まえて決めている会社であれば、研修の案内もその連絡の一部として扱ってください。人事の判断だけで出す種類のものではありません。
反対に、育児休業中の方から「戻ったときに何が変わっているか知りたい」と言われることもあります。この場合は本人の希望が起点なので、話はずっと簡単です。
3|声をかけてよい場面と復帰後に回す場面
ここまでを踏まえて、場面ごとに整理します。判断のよりどころは、「その連絡が本人にとって情報なのか、負担なのか」です。
| 場面 | どうするか | 理由 |
|---|---|---|
| 全社一斉で、受けないと仕事の進め方が変わる研修 | 情報は届ける。受講は復帰後の枠を用意して選べる形にする | 知らないまま戻るのが最も困る。ただし受講そのものは急がせない |
| 復職面談で、本人から「浦島太郎になりそう」と出た | 本人の希望が起点。復帰後の日程を一緒に決める | 会社からの働きかけではなく、本人の求めに応える形になっている |
| 休業前、その人が業務の中心にいた | 復帰後に回す。休業中に送るのは決定事項の共有まで | 「あなたには早く追いついてほしい」という期待が、案内に乗って伝わってしまう |
| 私傷病で療養中 | 会社から学習の案内は出さない。復職の判断が出たあとに改めて | 療養が目的の期間。産業医・主治医の判断が先に立つ |
| 休業が長く、その間にツールとルールが入れ替わった | 復帰後に「差を埋める枠」を先に確保しておく | 全員向けの研修より、変わった分だけを渡すほうが短く済む |
| 助成金を使う研修で、対象者の要件が関わる | 対象者の決め方を先に確認してから案内を出す | 案内を出したあとに対象外と分かると、断る説明が要る |
6つに共通しているのは、「復帰後に受けられる枠が用意されているか」で、案内の意味が変わるということです。枠がないまま案内だけ送ると、本人には「いま受けるか、受けられないか」の二択に見えます。枠があれば、同じ案内が「戻ったときにこれがある」という情報に変わります。案内文を考える前に、まず枠を用意してください。
4|会社として決める前に確認する3つのこと
ここからは制度が関わる領域です。以下は厚生労働省の公表資料で確認できた範囲の整理で、個別の扱いは都道府県労働局・ハローワーク・社会保険労務士に、具体的な組み方を示して確認してください。
(1) 育児休業中に研修を受けてもらうことと「就労」の関係
厚生労働省は、育児・介護休業法上の育児休業を、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度と説明しています。そのうえで、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限って、一時的・臨時的に就労することはできるとしています。ただし、労働者が自ら事業主の求めに応じて合意することが必要で、事業主の一方的な指示で就労させることはできません。恒常的・定期的に就労させる場合は、育児休業をしていることにならないとも示されています。
育児休業給付金との関係では、就労が月10日以下(10日を超える場合は80時間以下)であれば育児休業給付金が支給される、と案内されています。就労に対して賃金が支払われた場合の給付額の扱いなど細かな要件もあるため、研修の受講を業務として扱う場合は、この就労の考え方に照らして整理が必要です。法律上の扱いは都道府県労働局、給付金はハローワークが相談先として示されています。
私傷病による休職や介護休業中の扱いは、就業規則の休職規定や本人の状況によって変わります。ここでは一律の整理はせず、社内の規定と産業医の意見を確認してください。
(2) 受講している時間に賃金を払うのか
これは休業中に限らない論点で、通常の社員の研修でも同じ問いが出ます。案内の書き方が「任意参加」でも、実態として断りにくい形になっていれば、扱いが変わり得ます。研修の時間帯と参加の扱いで何が変わるかは、研修時間は労働時間にあたるかで扱っています。休業中の方に案内を出す場合は、通常の社員より先にこの整理を済ませておくことをおすすめします。
(3) 助成金を使うなら、対象者の要件に入るのか
人材開発支援助成金では、対象労働者は雇用保険被保険者であることなどの要件があります。事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースには「育児休業中訓練」という区分があり、支給要領では労働者の自発的な申し出により育児休業期間中に実施する教育訓練と定義されています。育児休業期間中に受講を開始することが必要で、助成は経費助成のみ(賃金助成なし)とされています。つまり、会社が受講を求める研修とは前提が異なります。
助成金は審査によって支給の可否が決まるもので、支給が保証されるものではありません。雇用の形ごとの確認先は研修の対象者に派遣・パート・業務委託の人を入れる場合の確認点、助成金を使う場合の段取りはAI研修に助成金を使う条件と申請までの順番にまとめています。
5|案内を出すなら、文面に入れる3つのこと
①の「案内を届ける」と決めた場合、文面で押さえるところは多くありません。次の3つが入っていれば、残りは通常の案内と同じで構いません。
- 受けなくても不利にならないと、はっきり書く:「復帰後に受けていただけます。今回受けないことで評価や配属に影響することはありません」。書かなければ伝わらない前提だと考えてください
- 締切を切らない:全員向けの案内をそのまま流用すると、申込期限が入ったまま届きます。休業中の方に向けた案内では、期限ではなく「復帰後の回もあります」と書くほうが正確です
- 返事の宛先を、上司ではなく人事にする:上司宛にすると、断る返事が書きにくくなります。人事宛なら「復帰後にします」と一言で返せます
反対に、入れないほうがよいものもあります。受講している同僚の人数や進捗です。事実を書いただけのつもりでも、休んでいる側からは「遅れている」という意味に読めます。情報として渡すつもりのものが、比較として届いてしまうのは、案内文で起きやすい失敗です。
6|復帰後に回す場合に先に用意しておく3つ
「復帰後に受けてもらう」と決めたら、その時点で用意しておくものがあります。ここを空けたまま復帰日を迎えると、そのまま受講の機会が流れてしまうことがあります。悪意ではなく、単に枠がなかっただけ、というケースです。
- 変わった分の一覧:休業中に導入したツール、変わったルール、新しくなった申請の手順を1枚にしておきます。全員向けの研修をもう一度受けてもらうより、差分だけ渡すほうが短く済みます。生成AIの利用ルールが新しくできた場合は、その原本の場所も添えます。
- 一緒に受ける相手:録画を1人で見る形にすると、最後まで見終わらないことがよくあります。受講形式ごとの違いは集合・オンライン同時・録画の比較で扱っています。復帰者が1人なら、次の全員向けの回に合流してもらうと負担が少なく済みます。
- 復帰直後は空ける:復帰した週に研修を入れないでください。最初の数週間は、業務の感覚と社内の状況を取り戻す時間が必要です。研修はそのあとです。
対象者を「全員か、選抜か」で決めようとすると、休業中の社員はどちらにも収まりません。対象を広さではなく順番で決めると、こうした例外も無理なく扱えます。順番で組む考え方は生成AI研修を全員受講にするか選抜にするかの決め方で扱っています。研修全体で何を教えるかは生成AI研修とは何をする研修かをご覧ください。
ノセカエでのご相談の進め方
受講者リストに休業中の方がいる場合、当社は会社としての扱いを決めていただく前に、まず「本人に案内を届けるかどうか」だけを分けてお聞きします。ここが決まれば、残りは日程の話になります。そのうえで、復帰後の回を別に組むか、次の全員向けの回に合流してもらうかを一緒に決めます。復帰者が1〜2名であれば、専用の回を作るより次の回に入っていただくほうが、本人の負担も費用も軽く済むことが多いです。
休業中の受講について制度上の可否は、当社では判断できません。当社がお手伝いできるのは、確認すべき論点を洗い出し、労働局・ハローワーク・社会保険労務士に確認できる形に整えるところまでです。
まとめ
育休・休職中の社員への研修は、①案内を届けるか(会社)②受けるか(本人)③業務として扱うか(制度の確認が必要)に分けると決めやすくなります。私傷病で療養中の方には、案内を出す前に産業医・主治医の判断を優先してください。案内を出すなら不利にならないことを明記し、締切を設けず、返事は人事宛にする。復帰後に回すなら、変わった分の一覧・一緒に受ける相手・復帰直後を空けることを、決めた時点で用意してください。
参考資料・注意事項
- 厚生労働省「育児休業中の就労について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15420.html
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」(各コースのパンフレット・支給要領) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf、同 支給要領(令和8年8月3日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731981.pdf
最終確認:2026年9月24日
本記事は一般的な整理であり、特定の取り扱いを推奨したり結果を保証したりするものではありません。休業中の就労の可否、育児休業給付と就労の関係、研修時間の労働時間該当性と賃金、休職者への連絡の可否と頻度、復職の判断は、都道府県労働局・ハローワーク・社会保険労務士・産業医・主治医にご確認ください。場面分けと案内文の考え方は、当社の研修提供とご相談の経験に基づく整理です。助成金は審査によって支給の可否が決まり、当社は支給を約束するものではありません。助成金の申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。
受講者リストの「休んでいる行」を、扱い方ごとに一緒に仕分けます。
案内を届ける人/復帰後の枠に回す人/産業医の判断を先に置く人を仕分け、復帰後に差を埋める形まで一緒に決めます。助成金の対象者に入るかどうかも、要件に照らして確認します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
