研修の対象者に派遣・パート・業務委託の人を入れてよいか|情報の扱い・受講時間と費用・助成金の対象で分かれる

目次
生成AI研修の受講者リストを作っていて、派遣社員、週4日のパートの人、業務委託で来ている人を入れてよいか迷っている人事・総務の方に向けた記事です。現場で毎日いちばん文章を書いているのがこうした人たち、という職場は珍しくありません。
正社員以外を研修に入れてはいけない、と一律に決まっているわけではありません。ただし、正社員と同じ扱いで入れると、あとで困る場所が3つあります。
- 情報の扱い:研修で配るアカウントと、入れてよい情報のルールを、どの契約で守ってもらうか。
- 受講時間と費用:受講している時間と受講の費用を、誰がどう扱うか。
- 助成金の対象:助成金を使う場合、その人が対象者の範囲に入るか。
この3つは、受講する人の雇用の形によって答えが変わります。以下では雇用の形を3つに分け、それぞれで誰に何を確かめるかを並べます。当社は労務・契約・助成金の可否を判断する立場にないため、ここで扱うのは「どこで分かれるか」と「どこに確かめるか」までです。個別の判断は、派遣元・契約書・社会保険労務士・弁護士・管轄の労働局に確認してください。
1|受講者リストを雇用の形で3つに分ける
最初に、リストの名前の横に「誰と雇用契約を結んでいる人か」を書き足します。正社員かどうかではありません。
| 区分 | 含まれる人 | 雇用している会社 | 仕事の指示を出しているのは |
|---|---|---|---|
| A. 自社が雇用している | 正社員、契約社員、パート、アルバイト | 自社 | 自社 |
| B. 派遣元が雇用している | 派遣社員 | 派遣会社(派遣元) | 自社(派遣先) |
| C. 雇用関係がない | 業務委託、フリーランス、個人事業主として入っている人 | なし(契約の相手) | 契約の内容による |
パートや契約社員は、雇用の形としては正社員と同じAに入ります。迷いが出やすいのはBとCで、3つの論点のどれもがこの区分で分かれます。
2|情報の扱い:ルールを守ってもらう根拠が区分ごとに違う
生成AI研修では、アカウントを配り、「入力してはいけない情報」のルールを教えます。研修で何を教えるかの全体像は生成AI研修とは何をする研修かで説明していますが、このルールを守ってもらう根拠は雇用の形で変わります。
A. 自社が雇用している人
就業規則やAI利用規程の適用範囲に入っているかを確かめてください。規程の冒頭で「誰に適用されるか」を書いていない会社では、パートやアルバイトが範囲に入っているか曖昧なことがあります。適用範囲の書き方はAI利用規程の作り方で扱っています。
B. 派遣社員
派遣社員は、派遣先である自社の指揮命令を受けて働いていても、雇用しているのは派遣元です。自社の規程を配っただけで、雇用している社員と同じように適用されるとは限りません。研修の前に、派遣元と「自社のAI利用のルールを派遣社員にどう守ってもらうか」を話しておいてください。アカウントを貸与するかどうかも、このときに決めます。
C. 業務委託の人
守ってもらう根拠は、契約書の秘密保持や情報の取り扱いの条項です。自社の研修でルールを教えても、それだけで契約の内容が変わるわけではありません。生成AIに入力してよい情報の範囲を、契約で取り決めているかを確かめてください。
どの区分にも共通するのは、研修で配ったアカウントを、契約が終わった日に誰が止めるかです。派遣や業務委託は社員より入れ替わりが早いことが多く、ここが漏れると外部の人がアカウントを持ったままになります。誰の名義でアカウントを持つかはChatGPT研修の前に決めるアカウントと契約、研修後の止め方は研修後のアカウント棚卸しの回し方が参考になります。
3|受講時間と費用:誰が払い、受講の時間を何として扱うか
A. 自社が雇用している人(パート・アルバイトを含む)
受講している時間を労働時間として扱うかは、正社員と同じ考え方で整理します。パートの場合は、研修の日が本来の出勤日でない、あるいは所定の時間を超えることが起きやすいので、日程を決める前に確かめてください。研修時間と賃金の関係は研修時間は労働時間にあたるかにまとめています。
B. 派遣社員
派遣社員が研修を受けている時間を派遣契約上どう扱うかは、派遣元と決める事項です。自社だけで決めないでください。
あわせて押さえておきたいのが、労働者派遣法第40条第2項です。派遣先は、派遣元の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する自社の労働者に業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行う場合、その派遣労働者がすでに必要な能力を持っている場合などを除き、派遣労働者にも実施するなど必要な措置を講じなければならない、と定められています。業務で生成AIを使うための研修を自社の社員に行い、同じ業務をしている派遣社員だけを外そうとしている場合は、派遣元と相談したうえで決めてください。この規定が個別の研修にどう当てはまるかは、当社では判断できません。
C. 業務委託の人
最も慎重に扱っていただきたいのがここです。業務委託は、受託者が発注者から独立して業務を処理することが前提です。厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(いわゆる37号告示)では、業務の遂行方法や始業・終業の時刻などの指示・管理を請負事業主が自ら行うことが、請負と判断される要件として挙げられています。日時と場所を指定して研修への参加を義務のように求めると、発注者が仕事の進め方に指示を出している関係に見えないかという論点に触れることがあります。当社はその当否を判断しません。入れる場合は、参加を任意にするのか、契約の業務の範囲に含めるのかを契約書と照らして先に決め、必要に応じて弁護士や労働局に確認してください。
費用は、業務委託の人の受講費を自社で持つのか、案内だけして本人の判断に任せるのかを決めます。いずれにしても、社員向けの研修と同じ予算枠にそのまま入れる前に、経理と一度話しておくと後で困りません。
4|助成金の対象:人材開発支援助成金で確かめること
研修費に人材開発支援助成金を使う予定なら、受講者の雇用の形は対象になるかどうかに直接関わります。以下は、当社が厚生労働省の公表資料で確認した範囲の整理です。計画届を出す前に、最新の支給要領と管轄の労働局で確認してください。
A. 自社が雇用している人:雇用保険の被保険者かどうか
人材開発支援助成金の各コースのパンフレットでは、対象労働者は申請事業主の雇用保険適用事業所の雇用保険被保険者であることとされています。パートやアルバイトでも、雇用保険に加入していれば対象になり得ます。所定労働時間が短く雇用保険に加入していない人は、この時点で対象の範囲から外れます。
雇用保険の加入要件の1つである週の所定労働時間は、法改正により「20時間以上」から「10時間以上」に変わり、2028年(令和10年)10月1日に施行されることが厚生労働省の資料で示されています。いま対象外のパートが、施行後に対象になる場合があります。研修を実施する時期の要件で確かめてください。
契約社員やパートなど、いわゆる非正規雇用の人を受講者に入れる場合は、正社員と同じ条件で考えないでください。厚生労働省の事業主向けQ&A(人材育成支援コース・令和6年11月版)には、非正規雇用労働者に訓練を実施する場合について、正規雇用労働者等への転換等を目的として実施する訓練であることを含む、という記載があります。生成AI研修にパートを混ぜる場合にこれがどう当てはまるかは、計画届を出す前に労働局か社会保険労務士に確認してください。
また、事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に提出する計画届から、同一の労働者が助成を受けられる受講回数が1年度3回まで(うちeラーニングは1回まで)とされています。同じ人を何度も受講させる予定がある場合は、この上限も確認してください。
B. 派遣社員:自社が雇用している労働者ではない
この助成金は、事業主が雇用する労働者に訓練を行う場合の制度です。派遣先から見ると、派遣社員は自社が雇用する労働者ではありません。自社の申請の対象者として派遣社員を数えられるとは考えないでください。
人材育成支援コースには「有期実習型訓練(派遣事業主活用型)」という、派遣元と派遣先がともに関わる枠があります。ただしこれは、有期契約の人の正社員転換等を目的としてOJTとOFF-JTを組み合わせる訓練の枠で、社員向けの生成AI研修に派遣社員を1人加える形とは前提が違います。
C. 業務委託の人:対象者として想定されていない
雇用関係がなく、雇用保険の被保険者でもないため、この助成金の対象者にはあたらないと考えて計画してください。同じ回に入れること自体はできても、その人の分を助成の対象として数えることはできません。
助成の対象になる人とならない人が同じ回に混ざる場合、経費をどう数えるかは計画届を出す前に労働局に確認してください。制度の全体像は人材開発支援助成金で生成AI研修に使えるコース、つまずきやすい点は人材開発支援助成金が不支給になる典型ケースで扱っています。
5|雇用の形ごとの確認先を1枚にまとめる
ここまでを表にまとめます。各セルは「答え」ではなく「誰に何を確かめるか」です。
| 雇用の形 | 情報の扱い | 費用と時間 | 助成金 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | AI利用規程の適用範囲 | 受講時間を労働時間として扱うか | 雇用保険被保険者か。要件は公表資料と労働局で確認 |
| 契約社員・パート・アルバイト | 規程の適用範囲にパート等が入っているか | 研修日が出勤日か、所定時間を超えないか | 雇用保険に入っているか。非正規雇用の人への訓練の扱いを労働局か社労士に確認 |
| 派遣社員 | ルールの守り方とアカウント貸与を派遣元と決める | 受講時間の扱いを派遣元と決める。同じ業務の社員だけに行う場合は派遣元と相談(労働者派遣法第40条第2項) | 自社の申請で対象者として数えられるとは考えない |
| 業務委託 | 契約書の秘密保持・情報の取り扱いの条項 | 参加を任意にするか、契約の範囲に含めるか。必要に応じて弁護士・労働局に確認 | 対象者にはあたらないと考えて計画する |
この表を受講者リストの横に置き、確認が済んだ行から名前を確定させていくと、リストが止まったままになりません。
6|研修から外す場合も、ルールは全員に届ける
確認の結果、派遣社員や業務委託の人を今回の研修から外すと判断することもあります。それ自体は問題ありません。ただ、現場の主戦力が研修に入っていないと、同じ業務の中に「使える人」と「使ってよいのか分からない人」が並びます。研修のあとに使い方がばらばらになる原因になります。
外す場合も、次の2つは用意しておくことをおすすめします。
- ルールの説明だけは全員に届ける。研修を受けなくても、入力してはいけない情報と使ってよいツールは、業務に関わる全員が知っている必要があります。派遣社員には派遣元を通じて、業務委託の人には契約の窓口を通じて伝えます。
- 業務の手順書として残す。研修で作ったプロンプトや手順を社員だけのものにせず、業務の手順書として残します。人に教えるのではなく、業務の側に組み込む形です。
同じ雇用の形の中で全員にするか選抜にするかは、生成AI研修を全員受講にするか選抜にするかの決め方で扱っています。この記事で扱ったのは、その前段の「そもそも誰を名簿に載せられるか」です。
なお、自社が雇用している人でも、育児休業や休職で休んでいる社員は別に考える必要があります。雇用の形ではなく、休業中の就労の扱いと本人の状況で判断が分かれるためです。こちらは育休・休職中の社員に研修を案内する場合の注意点にまとめています。
ノセカエでお手伝いできる範囲
- 受講者の雇用の形に合わせて、回を分けて組めます。助成金を使う回と使わない回を分ける、派遣社員や業務委託の人にはルールの回だけを別に設ける、といった組み方を、30分の無料相談でご相談いただけます。
- 派遣社員の方が受講する場合も、研修の発注者は貴社です。派遣契約上の扱いは、貴社と派遣元とでお決めください。
- 労務・契約・助成金の可否の判断は行いません。当社がお伝えするのは、どこを確かめればよいかまでです。
まとめ
派遣社員・業務委託・パートを研修に入れてはいけない、と一律に決まっているわけではありません。分かれるのは情報の扱い・受講時間と費用・助成金の対象の3つで、どれも「自社が雇用している・派遣元が雇用している・雇用関係がない」の区分で答えが変わります。まず受講者リストをこの3つに分け、表の確認先に順に当たってください。研修から外すと決めた人にも、入力してはいけない情報のルールだけは届けてください。
参考資料・注意事項
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第40条 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf、同 疑義応答集 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」(各コースのパンフレット・支給要領) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf、「令和8年8月3日からの変更点について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
- 厚生労働省「人材開発支援助成金 事業主様向けQ&A(人材育成支援コース)令和6年11月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001330281.pdf
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001266437.pdf
最終確認:2026年9月24日
本記事は一般的な整理であり、個別の会社・受講者について研修への参加のさせ方や助成金の対象可否を示すものではありません。雇用の形による3区分と確認先の一覧は、当社のご相談と研修実施の経験に基づく整理です。助成金は審査によって支給の可否が決まり、当社は支給を約束するものではありません。助成金の申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。また、当社は労働者派遣に該当する形での役務提供は行っておりません。制度は改定されることがあるため、最新の公表資料と管轄の都道府県労働局でご確認ください。
受講者リストを、雇用の形で一緒に仕分けます。
予定している受講者の雇用の形と人数、助成金を使う予定の有無をうかがい、回の分け方を、30分の無料相談で確認します。派遣元・社会保険労務士・労働局に確かめる項目も、その場でお伝えします。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
