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事業展開等リスキリング支援コース|対象になる「事業展開」の線引きを、実務の言葉で整理する

キーワード: 事業展開等リスキリング支援コース | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

「事業展開等リスキリング支援コース」という名前を見て、多くの人事の方が最初に言われるのがこれです。「うちは新規事業なんてやっていないので、これは無理ですよね」。私はこの一言を、生成AI研修のご相談のたびに聞いています。

先に結論を書きます。このコースの入口は1つではなく3つあります。そして、そのうち1つは「事業展開を行わない会社」のための入口です。コース名の真ん中にある「等」が、その部分を指しています。名前だけを読んで諦めてしまうのは、かなりもったいない。

ただし、はじめに正直なことも書いておきます。申請すれば受給が確約されるものではありません。要件は制度改正で変わりますし、最終的な判断は管轄の労働局が行います。この記事は、厚生労働省が公表している令和8年度版のご案内(LL080408開企07)の記載に沿って、線がどこに引かれているかを整理したものです。最新の要領は必ず労働局にご確認ください。

この記事はこのコース単体の「対象になる/ならない」の線引きに絞っています。人材開発支援助成金という制度全体と7つのコースの見取り図は人材開発支援助成金とはに、「リスキリング助成金」という呼び名の整理はリスキリング助成金とはにまとめました。

まず共通の3条件。ここを外すと入口の話にならない

3つの入口の前に、どの入口でも共通して必要になる条件があります。ご案内には支給対象として次のように書かれています。

実務でここに引っかかるのは、たいてい1つ目です。「まず半日、生成AIの体験会をやってみたい」という企画は、この時点で10時間に届きません。逆に言えば、最初から10時間以上の設計にしておけば、この条件は自然に満たせます。ノセカエでご相談をいただくとき、私たちが日程より先にカリキュラムの総時間をうかがうのはこのためです。

2つ目のOFF-JTも意外と落とし穴です。通常の業務をしながら横で教える形は、この制度でいうOFF-JTには当たりません。業務から切り離した時間として、日程を押さえる必要があります。

入口は3つある

共通条件を満たしたうえで、次の3つのいずれかに当たる訓練であることが求められます。ご案内ではⅰ・ⅱ・ⅲとして並べられています。

入口どんな訓練かこの入口を選ぶ会社
ⅰ 事業展開に伴う訓練企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識および技能を習得させるための訓練新規事業・新サービス・新市場への進出を予定している、または直近で始めた会社
ⅱ DX化・グリーン化に伴う訓練事業主において企業内のデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識および技能を習得させるための訓練事業展開はしないが、社内の進め方を変えようとしている会社
ⅲ 人材育成計画に基づく訓練企業内の人事および人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる専門的な知識および技能を習得させるための訓練配置転換や将来の役割を見据えて育てたい会社

ここで、生成AI研修を検討されている会社の多くが実際に乗るのはです。新規事業がなくても、社内の業務をデジタルの側に寄せていくという文脈であれば、この入口が開いています。

「事業展開」には、時間の幅がある

ⅰの入口を選ぶ場合に、いちばん誤解されているのがここです。ご案内には注記として、「事業展開」は、訓練開始日から起算して3年以内に実施する予定のもの、または6か月以内に実施したものである必要があると書かれています。

この一文が意味するのは、次の2つです。

私が現場で見ている限り、諦めている会社の半分くらいは前者の誤解です。「構想はあるが、まだ動いていないから対象外だと思っていた」というパターンです。構想があるなら、それを文書にできるかどうかが分かれ目になります。

なお、ⅲの「今後従事することが予定される職務」についても同様に、訓練開始日から起算して3年以内に従事することが予定される職務である必要があると注記されています。「いつか役に立つから」では時間軸が示せません。

ⅲには、もう一手間がある

ⅲの入口は一見いちばん広く見えます。人材育成の計画に基づく訓練であればよいのですから、事業展開もDX化も必要ありません。ただし、ご案内には条件が付いています。ⅲの場合、人事および人材育成に関する計画については、あらかじめ認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があるとされています。

認定経営革新等支援機関は、中小企業庁が認定した支援機関で、顧問税理士や金融機関がなっている場合もあります。ですので、ⅲを選ぶ場合は「誰に確認をもらうか」を先に押さえておく必要があります。ここを研修日程を決めた後に思い出すと、確認の順番待ちで計画届の期限に間に合わなくなります。

落ちるのは制度ではなく、書類の1枚

このコースには、他のコースにはない提出書類があります。ご案内には、事業展開などの内容を記載した「事業展開等実施計画」(様式第1-3号)を、職業訓練実施計画届と併せて提出する必要があると明記されています。取り組み内容を整理し、具体的な記載ができるよう事前に準備をお願いします、とも書かれています。

この1枚が、実質的な関門です。私たちがご一緒していて手が止まるのは、要件に合わないからではなく、自社の取り組みを日本語で説明できないからです。「DXを進めたい」だけでは、何をどう変えるのかが書けません。

書けるようにするために、私たちは先に3つの質問をお願いしています。

  1. いま、どの業務の、どの工程を変えるつもりですか。 「全社的に」ではなく、部署と業務名で答えられるところまで絞ります。
  2. 変えた後、誰がその業務をやりますか。 ここで挙がった人が、そのまま受講者一覧になります。逆に、受講者が決まらないうちは計画が書けません。
  3. いつから変えますか。 ⅰなら3年以内、ⅲなら3年以内という時間軸が要るので、ここが空欄だと書類が完成しません。

この3つに答えられれば、書類は書けます。答えられない場合は、正直に申し上げると助成金の前に、研修そのものの設計をやり直したほうがよいと思っています。誰が何のために受けるのかが決まっていない研修は、助成が下りても社内には残りません。この点はDX研修とはのほうにも書きました。

助成の内容(令和8年度版の記載)

ご案内に記載されている助成率・助成額は次のとおりです。制度改正で変わりうる数字ですので、検討時点の最新版を必ずご確認ください。

企業規模経費助成賃金助成(1人1時間)設備投資加算
中小企業75%1,000円50%
大企業60%500円

受講者1人あたりの経費助成には、訓練時間数に応じた限度額があります。中小企業の場合、10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円と記載されています(大企業はそれぞれ20万円・25万円・30万円)。

研修の形式によっても扱いが変わります。押さえておきたいのは次の3点です。

ここは研修の設計に直結します。動画を配って終わりの形にすると、賃金助成が付かないうえに経費の限度額も下がります。集合形式で時間を確保するほうが、制度上は素直な組み立てになります。もっとも、これは助成金の都合であって、研修の効果とは別の話です。両方が同じ方向を向いているのは、たまたま運がよい部分だと思っています。

なお、1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円と記載されています。中小企業でここに当たることは実務上ほぼありませんが、グループで複数の研修を回す場合は頭の隅に置いておくとよいと思います。

スケジュールは、計画届の窓から逆算する

この制度でいちばん多い失敗は、要件ではなく順番です。ご案内では手続きが4つのステップで示されています。

段階やること期限
Step 0職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定と社内への周知計画提出より前
Step 1職業訓練実施計画届・事業展開等実施計画・対象労働者一覧などを管轄労働局へ提出訓練開始日の6か月前から1か月前まで
Step 2計画に基づき訓練を実施。支給申請までに訓練経費の全額を支払う計画どおりの日程で
Step 3支給申請書、OFF-JT実施状況報告書などを管轄労働局へ提出訓練終了日の翌日から2か月以内

実務で効いてくるのは、Step 1の「1か月前まで」と、その前にStep 0があるという事実です。事業内職業能力開発計画の策定と職業能力開発推進者の選任は、社内の手続きとして一定の時間がかかります。まだ何も整えていない会社が「来月から研修を始めたい」と言われた場合、このコースを使うのは現実的ではありません。

ですので、私たちが研修のご相談でスケジュールを引くときは、研修日から数えるのではなく計画届の提出日から数えます。おおむね、研修開始の3〜4か月前から社内の準備を始めていただくと、慌てずに済みます。

ノセカエとしての立場

私たちは研修を提供する会社であって、社会保険労務士事務所ではありません。ですので、正直に3つ申し上げておきます。

事業展開に当たらない場合でも、通常の人材育成の枠で対象になることがあります。コースを選ぶ前に押さえる条件と、計画届・支給申請の期限はAI研修の助成金|使える条件・計画届・申請までの順番にまとめてあります。

まとめ

事業展開等リスキリング支援コースは、名前ほど狭い制度ではありません。入口は3つあり、事業展開をしない会社にはDX化・グリーン化という入口(ⅱ)が用意されています。ⅰを選ぶ場合も、事業展開は「訓練開始日から3年以内に実施予定」または「6か月以内に実施済」という幅で見られるので、構想段階でも検討の余地があります。

そのうえで、実際に落ちる場所は制度の要件ではなく事業展開等実施計画(様式第1-3号)が書けるかどうかと、計画届を訓練開始の1か月前までに出せるかどうかの2点に集中しています。どちらも、研修の日程を決める前にしか手が打てません。

ノセカエでは、生成AI研修のご相談をいただいた際に、「その研修が制度上どの入口に当たりうるか」「時間数と形式をどう組めば選択肢が残るか」を先に整理してお返ししています。制度の判断そのものは労働局と社労士の領域ですが、判断の材料を揃えるところまではご一緒できます。

助成金が使えるかどうかは、研修の日程を決める前に見てください。

対象になる場合があります。判断は労働局が行いますので、当社では材料を揃えるところまでをお手伝いします。

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※本記事は、厚生労働省が公表する人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(令和8年度版・LL080408開企07)の記載に基づく一般的な整理であり、個別の支給要件の充足や受給を保証するものではありません。制度の内容・助成率・限度額は年度や制度改正により変更される場合があります。実際のご検討にあたっては、必ず管轄の都道府県労働局にご確認ください。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行・事務代理は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。