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リスキリングの補助金と助成金は何が違うか|出どころ・受け取る人・申請時期で並べる

キーワード: リスキリング 補助金 | ノセカエ(運営: Never Red株式会社)

研修のご相談をいただくとき、「リスキリングの補助金が使えると聞いたのですが」という言い方をされる方が多くいらっしゃいます。そのたびに私は、話を進める前にひとつだけ確認しています。それは補助金の話でしょうか、助成金の話でしょうか、と。

意地の悪い確認をしたいわけではありません。この2つは名前が似ているだけで、お金の出どころも、申し込む時期も、通らなかったときの理由もまったく違うからです。そして「リスキリングの補助金」を探して情報にたどり着いた場合、その多くは、正確には補助金ではなく助成金です。ここを取り違えたまま社内で稟議を回すと、申請の期限を丸ごと逃すことがあります。

この記事では、この2つを出どころ・受け取る人・申請時期の3つの軸で並べます。とくに2つ目の「受け取る人」は、社内の議論が噛み合わなくなる原因のほとんどを占めているのに、あまり整理されていない軸です。

この記事は制度の種類を見分けるための整理です。リスキリング関連の助成金そのものの中身はリスキリング助成金とは?に、会社が使う代表的な制度は人材開発支援助成金とはに、生成AIツールの導入に使える補助金は生成AIの導入に使える補助金にまとめています。

軸1:出どころが違う

いちばん根っこの違いは、どこの財布から出ているかです。ここが違うので、その後の手続きの性質がすべて変わります。

人材育成で使われる助成金の代表は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。この制度は、雇用保険の適用事業所であることが前提になっており、対象になるのも雇用保険の被保険者である従業員です。役員や個人事業主ご本人は対象外とされています。つまり雇用の枠組みの中にあるお金です。

一方の補助金は、国や自治体が政策目的を達成するために組んだ予算から出ます。「この分野に投資してほしい」という意図があり、そのために公募期間を区切って募集し、出てきた申請を審査して採択するという形を取ります。生成AI関連でよく名前が挙がるIT導入補助金も、この形です。

助成金(例:人材開発支援助成金)補助金(例:ツール導入系の制度)
主な所管厚生労働省・都道府県労働局経済産業省・自治体など
前提雇用保険の適用事業所であること公募要領の対象事業者に当てはまること
募集の形通年(年度内はおおむね随時)公募期間がある(締切がある)
審査の性質要件を満たしているかの確認他の申請と並べての採択
落ちる理由要件・手続き・期限を外している要件は満たしたが採択されなかった
相談先労働局・ハローワーク/社会保険労務士事務局・認定支援機関など

実務でいちばん効いてくるのは、表の「募集の形」と「審査の性質」の2行です。助成金は要件を満たせば対象になり得る制度で、補助金は要件を満たしても採択されないことがある制度。だから補助金は「取れたら実施する」という組み立てが成り立ちにくく、助成金は「要件どおりに進める」という組み立てになります。研修の企画書を書く順番が、ここで変わります。

軸2:そのお金を受け取るのは、会社か、本人か

ここが本題です。私の実感では、社内で議論が噛み合わなくなる原因の大半はこの取り違えです。

ある会社で、経営会議で「リスキリングは国が半分以上出してくれるらしい」という話になり、人事が調べたところ「うちの研修は対象になりません」という結論が出て、話が止まった、ということがありました。よく聞くと、経営側が見ていたのは本人がハローワークに申請して本人が受け取る制度で、人事が調べていたのは会社が労働局に申請して会社が受け取る制度でした。どちらも正しく、噛み合っていなかっただけです。

会社が受け取る(例:人材開発支援助成金)本人が受け取る(教育訓練給付金)
申請する人事業主(会社)受講する本人
申請先都道府県労働局ハローワーク
対象になる訓練要件を満たす訓練を会社が計画する厚生労働大臣が指定した講座
会社が選んだ研修設計しだいで対象になり得る指定講座でなければ対象外
会社の関与会社が主体会社は関与しない(本人の手続き)
お金の流れ会社の口座へ本人の口座へ

教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者(または離職から一定期間内の方)が、厚生労働大臣の指定を受けた講座を自費で受講したときに、経費の一部が本人に支給される制度です。ハローワークインターネットサービスの案内では、給付の種類ごとに一般教育訓練は教育訓練経費の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)、専門実践教育訓練は50%(年間上限40万円)と示されています(資格取得と就職などの条件を満たした場合に、さらに上乗せされる仕組みも設けられています)。

ここで押さえておきたいのは、金額の大小ではなく「会社が企画した研修は、原則としてこの制度の話ではない」という点です。社員に自主的に学んでもらう施策としては有効ですが、全社の研修計画を立てる話とは別のレーンにあります。この2つを同じ会議の同じ資料に並べると、必ず話が混ざります。

軸3:申請の時期が、いちばん実務に効く

制度の違いのなかで、研修の進め方をいちばん左右するのは時期です。

会社が使う助成金では、訓練を始める前に計画を届け出ておくという手続きが要件になっているのが一般的です。人材開発支援助成金では、職業訓練実施計画届を訓練開始日の一定期間前までに提出することとされています。つまり研修をやってから「これは対象になりますか」と聞いても、もう間に合わないということです。私たちのところに来るご相談で、いちばん多い残念なパターンがこれです。

補助金は逆に、公募期間があります。締切が決まっているので、その期間に間に合うかどうかで動きます。年度の後半に「使いたい」と思っても、その年度の公募が終わっていれば次年度まで待つことになります。

この違いを、研修の企画から逆算すると次のようになります。

時期会社が助成金を使う場合補助金を使う場合
企画の段階対象になり得る形か、先に確認する公募要領が出ているかを確認する
研修開始の前計画届の提出が要る交付決定の前に発注しない
実施中出欠・実施記録を残す公募要領どおりの証拠書類を残す
終了後期限内に支給申請実績報告
入金後払い後払い

表のいちばん下の行は、どちらの制度でも共通です。先に会社が全額を支払い、後から一部が戻ってくるのが基本の形です。「補助金が出るから研修ができる」という組み立てにしていると、実施の時点で資金が要るという事実で止まります。予算を通すときは、この立替が必要であることを先に説明しておいてください。

よくある取り違え4つ

  1. 「申請すれば下りる」と考えている。 助成金は要件を満たせば対象になり得ますが、要件や期限を外していれば対象になりません。補助金は要件を満たしていても採択されないことがあります。どちらも「申請=受給」ではありません。
  2. 研修を実施してから相談する。 会社が使う助成金では計画の事前届出が求められるのが一般的です。順番を戻すことはできません。ここはAI研修に助成金は使えるかにも書きましたが、内容が良いかどうかより先に、順番の問題です。
  3. 本人向けの給付と会社向けの助成金を、同じ表に並べる。 申請者も窓口も対象講座も違うので、比較の対象になりません。並べるなら「会社が動く施策」と「社員が自分で動く施策」という別の見出しにしてください。
  4. 自治体の制度名を、去年の情報のまま使っている。 都道府県や市区町村にも独自の支援制度がある場合がありますが、名称も要件も年度で変わることがあります。必ず、その年度の募集要項をご自身で確認してください。

では、会社としてはどこから見ればよいか

研修を企画する立場からは、順番はこうなります。

  1. まず、会社が主体で研修をやるのか、社員の自主学習を支援するのかを決める。 ここが決まらないと、見る制度が決まりません。
  2. 会社が主体なら、厚生労働省の助成金のレーンを見る。 人材開発支援助成金にはコースが複数あり、生成AI研修が乗る可能性があるコースは複数あります。どのコースかは訓練の中身と目的で変わるので、コースの全体像と、事業展開やデジタル化を根拠にする場合の線引きは事業展開等リスキリング支援コースの記事をご覧ください。
  3. ツールの導入費用が主役なら、補助金のレーンも見る。 ただしこの場合、研修費が対象になるかは制度によります。生成AIの導入に使える補助金に整理しました。
  4. 制度が決まったら、要件から研修設計に戻る。 逆にしないでください。制度に合わせて研修を作ると、時間数を埋めるための座学が増えます。

4番目について補足します。助成金には訓練時間の下限が設けられていることが多く、それに合わせようとすると、必要のない講義を足したくなります。ですが時間数を満たした研修と、現場で使われる研修は別物です。私たちは、まず現場で必要な設計を先に作り、そのうえで制度に乗るかを確認する順番をお勧めしています。研修そのものの組み立て方はDX研修とはにも書きました。

ノセカエの立場と、正直に申し上げておくこと

まとめ

リスキリングにまつわるお金は、3つの軸で見分けられます。出どころ(厚労省の雇用の枠組みか、政策予算の公募か)、受け取る人(会社か、本人か)、申請時期(訓練開始前に届け出るのか、公募期間に応募するのか)。この3つが揃えば、自社が見るべき制度は1つか2つに絞られます。

そして、どの制度でもお金は後払いです。制度を探すことより先に、その研修を自社の予算でやる価値があるかどうかを決めておくほうが、結果的に早く進みます。

いま検討されている研修が、どのレーンの制度と相性が良さそうか。助成金が使えるか無料診断では、研修設計の側から整理してお返しします。制度の可否そのものは判断できませんが、どこに相談すべきかまではお示しできます。

研修の設計から、制度に乗せられる形かどうかまで整理します。

制度ありきで研修を大きくすることは、お勧めしていません。

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※本記事は一般的な制度の整理であり、個別の支給・採択を保証するものではありません。申請しても受給や採択が確約されるものではなく、最終的な判断は管轄の労働局・各制度の事務局が行います。記載の給付率・上限額は厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)の教育訓練給付金の案内に基づく執筆時点の内容であり、制度は年度・改正により変わることがあります。実際のご検討にあたっては、必ず最新の支給要領・公募要領をご確認ください。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行・事務代理は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。