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リスキリングの補助金と助成金は何が違うか|出どころ・受け取る人・申請時期で並べる

リスキリングの補助金と助成金は何が違うか|出どころ・受け取る人・申請時期で並べる
目次
  1. 軸1:出どころが違う
  2. 軸2:そのお金を受け取るのは、会社か、本人か
  3. 軸3:申請の時期が違う
  4. よくある取り違え4つ
  5. では、会社としてはどこから見ればよいか
  6. ノセカエでお受けできないこと
  7. まとめ
  8. 参考資料・注意事項

「リスキリングの補助金が使えると聞いた」という話が社内で出たとき、最初に確かめたいのは、それが補助金の話か、助成金の話かです。名前は似ていますが、お金の出どころも、申し込む時期も、通らなかったときの理由も違います。

社員研修の費用を会社で支援してもらう制度として調べていくと、行き着く先は厚生労働省の助成金であることが多く、「補助金」と名の付くリスキリング支援は、社員個人が転職を目指して受講する場合の制度だったりします。ここを取り違えたまま稟議を回すと、申請の期限を逃すことがあります。

この記事では、この2つを出どころ・受け取る人・申請時期の3つの軸で並べます。とくに「受け取る人」は、社内の議論が噛み合わなくなる原因になりやすいのに、あまり整理されていない軸です。

この記事は制度の種類を見分けるための整理です。「リスキリング助成金」という呼び名が指す制度の一覧はリスキリング助成金とはに、会社が使う代表的な制度の中身は人材開発支援助成金の全体像に、生成AIツールの導入に使える補助金は生成AIの導入に使える補助金にまとめています。

軸1:出どころが違う

根本の違いは、どこの財布から出ているかです。ここが違うので、その後の手続きの性質がすべて変わります。

人材育成で使われる助成金の代表は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。この制度は、雇用保険の適用事業所であることが前提になっており、対象になるのも雇用保険の被保険者である従業員です。雇用保険の被保険者でない役員や、個人事業主ご本人は対象になりません。つまり雇用の枠組みの中にあるお金です。

一方の補助金は、国や自治体が政策目的を達成するために組んだ予算から出ます。「この分野に投資してほしい」という意図があり、そのために公募期間を区切って募集し、出てきた申請を審査して採択するという形を取ります。生成AI関連でよく名前が挙がるデジタル化・AI導入補助金(2026年にIT導入補助金から名称変更)も、この形です。

助成金(例:人材開発支援助成金)補助金(例:ツール導入系の制度)
主な所管厚生労働省・都道府県労働局経済産業省・自治体など
前提雇用保険の適用事業所であること公募要領の対象事業者に当てはまること
募集の形通年(年度内はおおむね随時)公募期間がある(締切がある)
審査の性質要件を満たしているかの確認他の申請と並べての採択
落ちる理由要件・手続き・期限を外している要件は満たしたが採択されなかった
相談先労働局・ハローワーク/社会保険労務士事務局・認定支援機関など

実務で効いてくるのは、表の「募集の形」と「審査の性質」の2行です。助成金は要件を満たせば対象になり得る制度で、補助金は要件を満たしても採択されないことがある制度。だから補助金は「取れたら実施する」という組み立てが成り立ちにくく、助成金は「要件どおりに進める」という組み立てになります。研修の企画書を書く順番が、ここで変わります。

軸2:そのお金を受け取るのは、会社か、本人か

社内で議論が噛み合わなくなるとき、原因がこの取り違えにある場合があります。

たとえば、経営会議で「リスキリングは国が半分以上出してくれるらしい」という話になり、人事が調べたところ「うちの研修は対象になりません」という結論が出て話が止まる、というケースがあります。経営側が見ていたのは個人が受講して、本人の負担が軽くなる制度で、人事が調べていたのは会社が労働局に申請して会社が受け取る制度だった、ということが起こり得ます。どちらも正しく、噛み合っていないだけです。

会社が受け取る(例:人材開発支援助成金)本人が受け取る(教育訓練給付金)
申請する人事業主(会社)受講する本人
申請先都道府県労働局ハローワーク
対象になる訓練要件を満たす訓練を会社が計画する厚生労働大臣が指定した講座
会社が選んだ研修設計しだいで対象になり得る指定講座でなければ対象外
会社の関与会社が主体会社は関与しない(本人の手続き)
お金の流れ会社の口座へ本人の口座へ

教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者(または離職から一定期間内の方)が、厚生労働大臣の指定を受けた講座を自費で受講したときに、経費の一部が本人に支給される制度です。ハローワークインターネットサービスの案内では、給付の種類ごとに一般教育訓練は教育訓練経費の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)、専門実践教育訓練は50%(年間上限40万円)と示されています(資格取得と就職などの条件を満たした場合に、さらに上乗せされる仕組みも設けられています)。

名前に「補助金」が付く国のリスキリング支援としては、経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業があります。対象は、在職中で、雇用主の変更を伴う転職を目指す個人です。キャリア相談・リスキリング講座・転職支援を一体で受ける形で、補助は講座を提供する事業者を通じて行われ、受講者の負担が軽くなります。事業のサイトでは、講座修了で受講費用の2分の1(上限40万円)、転職後1年間継続して就業すると追加で5分の1(上限16万円)とされています。

いずれも、会社が企画した研修の費用を会社に戻す制度ではありません。社員に自主的に学んでもらう施策としては意味がありますが、全社の研修計画とは別のレーンにあります。同じ会議の同じ資料に並べるなら、「会社が動く施策」と「社員が自分で動く施策」に分けて書くと混乱を防げます。

軸3:申請の時期が違う

制度の違いのなかで、研修の進め方を大きく左右するのは時期です。

会社が使う助成金では、訓練を始める前に計画を届け出ておくという手続きが要件になっているのが一般的です。人材開発支援助成金では、職業訓練実施計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出することとされています。つまり研修をやってから「これは対象になりますか」と聞いても、もう間に合わないということです。このために使えなくなる場合もあります。自治体の助成金も同様で、たとえば東京しごと財団の令和8年度DXリスキリング助成金は、研修開始予定日の1か月前までの交付申請が必要です。

補助金は逆に、公募期間があります。締切が決まっているので、その期間に間に合うかどうかで動きます。年度の後半に「使いたい」と思っても、その年度の公募が終わっていれば次年度まで待つことになります。

この違いを、研修の企画から逆算すると次のようになります。

時期会社が助成金を使う場合補助金を使う場合
企画の段階対象になり得る形か、先に確認する公募要領が出ているかを確認する
研修開始の前計画届の提出が要る交付決定の前に発注しない
実施中出欠・実施記録を残す公募要領どおりの証拠書類を残す
終了後期限内に支給申請実績報告
入金後払い後払い

表の最後の行は、どちらの制度でも共通です。先に会社が全額を支払い、後から一部が戻ってくるのが基本の形です。「補助金が出るから研修ができる」という組み立てにしていると、実施の時点で資金が要るという事実で止まります。予算を通すときは、この立替が必要であることを先に説明しておいてください。

よくある取り違え4つ

  1. 「申請すれば下りる」と考えている。助成金は要件を満たせば対象になり得ますが、要件や期限を外していれば対象になりません。補助金は要件を満たしていても採択されないことがあります。どちらも「申請=受給」ではありません。
  2. 研修を実施してから相談する。会社が使う助成金では計画の事前届出が求められるのが一般的です。順番を戻すことはできません。内容が良いかどうかより先に、順番の問題です。発注担当者が研修会社や社会保険労務士に何をいつ頼むかはAI研修で助成金を使うときの段取りにまとめています。
  3. 本人向けの給付と会社向けの助成金を、同じ表に並べる。申請者も窓口も対象講座も違うので、比較の対象になりません。並べるなら「会社が動く施策」と「社員が自分で動く施策」という別の見出しにしてください。
  4. 自治体の制度名を、去年の情報のまま使っている。都道府県や市区町村にも独自の支援制度がある場合がありますが、名称も要件も年度で変わることがあります。必ず、その年度の募集要項をご自身で確認してください。

では、会社としてはどこから見ればよいか

研修を企画する立場からは、順番はこうなります。

  1. まず、会社が主体で研修をやるのか、社員の自主学習を支援するのかを決める。ここが決まらないと、見る制度が決まりません。
  2. 会社が主体なら、厚生労働省の助成金のレーンを見る。人材開発支援助成金には、生成AI研修で検討できるコースが複数あります。どのコースかは訓練の中身と目的で変わるので、コースの全体像と、事業展開やDX化を根拠にする場合の線引きは事業展開等リスキリング支援コースの解説をご覧ください。所在地の自治体に独自の助成金があるかも、あわせて確認します。
  3. ツールの導入費用が主役なら、補助金のレーンも見る。ただしこの場合、研修費が対象になるかは制度によります。生成AIの導入に使える補助金に整理しました。
  4. 制度が決まったら、要件から研修設計に戻る。逆にしないでください。制度に合わせて研修を作ると、時間数を埋めるための座学が増えます。

4番目について補足します。助成金には訓練時間の下限が設けられていることが多く、それに合わせようとすると、必要のない講義を足したくなります。ですが時間数を満たした研修と、現場で使われる研修は別物です。当社では、まず現場で必要な設計を作り、そのうえで制度の要件に合うかを確認する順番をおすすめしています。研修そのものの組み立て方はDX研修とはでも扱っています。

ノセカエでお受けできないこと

そのうえで、制度が使えなかった場合でも成立する規模で始めることをおすすめしています。助成や補助が付くかどうかと、研修が現場で使われるかどうかは別の話です。効果の考え方は生成AI研修のROIに整理しています。

まとめ

リスキリングにまつわるお金は、出どころ(厚生労働省の雇用の枠組みか、政策予算の公募か)、受け取る人(会社か、本人か)、申請時期(訓練開始前に届け出るのか、公募期間に応募するのか)の3つで見分けられます。どの制度でもお金は後払いなので、制度を探すより先に、その研修を自社の予算でやる価値があるかを決めておくほうが早く進みます。

参考資料・注意事項

本記事は一般的な制度の整理であり、個別の支給・採択を保証するものではありません。給付率・補助率・上限額は執筆時点の公表内容で、年度や改正により変わることがあります。実際のご検討にあたっては、最新の支給要領・公募要領をご確認ください。

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  • ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
  • 経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」 https://careerup.reskilling.go.jp/worker/
  • 公益財団法人東京しごと財団「令和8年度DXリスキリング助成金」 https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/skill-R8dx-risk.html
  • 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html

最終確認:2026年9月24日

研修の設計から、制度に乗せられる形かどうかまで整理します。

制度ありきで研修を大きくすることは、お勧めしていません。

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お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

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