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助成金を使うと、研修の中身はどこまで決められてしまうか

助成金を使うと、研修の中身はどこまで決められてしまうか

この記事の要点

  • 助成金を使うと、研修の設計に「時間数」「実施の形」「記録」の3つの制約がかかります。制度の枠のほうが先にあります。
  • 実訓練時間数は10時間以上が要件で、外部の講師を呼んでも企画・主催が自社なら事業内訓練です。区分によって、支給申請の書類が変わります。
  • 対象者を会社が決め、業務時間内に、業務に結びついた内容をまとめて行う会社なら、制約は大きな障害になりません。対象になるかどうかは審査により異なります。
目次
  1. 1|制約は、3つに集約されます
  2. 2|時間数の制約:「半日で終わらせる」形が取れない
  3. 3|実施の形の制約:誰が主催したかで、見積書の形まで変わる
  4. 4|記録の制約:「受けた」ことを、あとから証明できる形にしておく
  5. 5|令和8年8月からは、内容と受講回数にも制約が加わった
  6. 6|3つの外側にある、お金と日程の縛り
  7. 7|助成金に寄せないほうがよい会社
  8. ノセカエの進め方
  9. まとめ
  10. よくある質問
  11. 参考資料・注意事項

研修を検討するとき、「これ、助成金は使えますか」という疑問が出ます。

使える可能性はあります。ただ、その前に考えておきたいことがあります。助成金を使うと決めた時点で、研修の設計の自由の一部を手放すということです。制度に合わせて研修を組むというのは、制度が決めている枠の中に研修を入れるということで、枠のほうが先にあります。

研修会社にとっては、「助成金が使えます」と伝えたほうが実質の負担が下がって見えるため、提案しやすい面があります。それでも先に制約を書くのは、制度に寄せた結果、届けたかった相手に届かない研修になるケースがあるからです。

この記事は、研修を企画する人事・教育担当者向けに、研修を設計する側から見た「何が縛られるか」を扱います。要件を満たすかどうかの判定はしません。制度の全体像は人材開発支援助成金とはで、不支給になる典型的なケースは人材開発支援助成金が不支給になるケースで扱っています。

以下の引用は、厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版によります。コースによって要件は異なり、年度の途中で制度が変わることもあります。

1|制約は、3つに集約されます

いろいろな要件がありますが、研修の設計に効いてくるものだけを取り出すと3つです。

制約設計のどこが縛られるか
時間数1回の長さと回数。短くまとめる設計が取れなくなる
実施の形誰が企画・主催するか、どこで実施するか、講師をどう立てるか。見積書の作り方まで変わる
記録誰が受けたか、いつ受けたか、その時間の賃金がどうなっているか。研修の外側にある社内の記録体制が問われる

この3つ以外にも要件はありますが、「研修をどう作るか」を変えてしまうのはこの3つです。順に見たあと、令和8年8月の改正で加わった内容面の制約にも触れます。

研修の作り方を変えてしまう制約は、時間数・実施の形・記録の3つ

時間数は1回の長さと回数を縛り、「まず半日、様子見で」の1回だけの研修が取れなくなる。実施の形は、誰が企画・主催するか、どこで実施するか、講師をどう立てるかを縛り、見積書の作り方まで変わる。事業内訓練で組む場合、「研修一式」の1行の見積書は使えない。記録は、誰がいつ受けたか、その時間の賃金がどうなっているかを縛り、手を挙げた人だけが自由に参加する形が取れなくなる。このほかに、令和8年8月からの内容と受講回数の制約と、費用の負担と日程の縛りがある。

制度の枠のほうが先にある。助成金を使うと決めた時点で、取れなくなる設計の形がある。

図1 助成金を使うと研修の設計に効く3つの制約と、取れなくなる形。

2|時間数の制約:「半日で終わらせる」形が取れない

パンフレットの用語定義に、こう書かれています。

実訓練時間数=総訓練時間数から、移動時間その他の助成対象とならない時間、助成対象とならないカリキュラム等の時間を除いた時間数。実訓練時間数が10時間以上であることが本コースの要件となる。
総訓練時間数=昼食等の食事を伴う休憩時間を除いた訓練時間数。

そして支給されない例として、「実訓練時間数が、10時間未満の場合(一部除く)」が挙げられています。

研修の設計者として、ここから読むべきことは3つです。

半日×4回と2日連続で何が変わるかは分割研修と連続研修の違いで扱っています。助成金を使うと、そこで挙げた選択肢のうち「短く1回だけ」が最初から外れます。制度が一定量以上の訓練を支援対象としている以上、避けられない制約です。

数えるのは机上の時間ではなく、除いたあとの実訓練時間数

研修の時間割(例:9時から17時)から昼食等の食事を伴う休憩を除いたものが総訓練時間数。総訓練時間数から移動時間や助成対象とならないカリキュラム等の時間を除いたものが実訓練時間数で、10時間以上が要件。届く組み方の例は3時間×4回や2時間×5回で、4時間の入門研修は単独では届かない。時間を満たすために演習を水増しすると、受講者の記憶に残りにくくなる。

実訓練時間数が10時間未満の研修は、一部を除き支給されない。「短く1回だけ」は最初から外れる。

図2 総訓練時間数と実訓練時間数の数え方と、10時間に届く組み方の例。

3|実施の形の制約:誰が主催したかで、見積書の形まで変わる

ここが、研修会社に発注する会社にとって、最も見えにくい制約です。パンフレットは訓練を2つに分けています。

事業外訓練=OFF-JTであって公共の職業能力開発施設、学校教育法上の教育機関、各種学校、専修学校、認定職業訓練施設、他の事業主団体等が企画し主催している訓練。
事業内訓練=OFF-JTであって申請事業主自らが主催し、事業内において集合形式で実施する訓練。※部外講師の活用や社外の場所で行われる訓練等であっても、事業主が企画し主催したものは事業内訓練とする。

最後の一文が効きます。外部の講師を呼んでも、自社の会議室でなく貸会議室でやっても、企画・主催が自社であれば「事業内訓練」の側です。「外部に頼んだから事業外」ではありません。

外部の講師を呼んでも、企画・主催が自社なら事業内訓練。区分で申請書類がまるごと変わる

研修を自社が企画し主催したなら事業内訓練で、部外講師の活用や社外の場所で行う訓練でも同じ扱いになる。支給申請では、講師謝金・旅費・会場費・教材費ごとの請求書・領収書等(支払った相手・日付・名目・金額が分かるもの)、部内講師なら出勤簿またはタイムカードの写し等が求められる。研修一式の1行の見積書では費目を分けて出せず、申請の書類が作れない。教育機関や事業主団体等が企画し主催したなら事業外訓練で、受講料等の請求書と領収書または振込通知書の写し等、支給申請承諾書(様式第12号)、教育訓練機関等から説明を受けた資料一式の写しが求められる。研修会社の協力が要件に含まれるので、発注前に様式の記入と資料の提供に応じてもらえるかを確かめる。

事業内訓練なら費目ごとの証憑、事業外訓練なら研修会社の協力が要る。発注前に確かめる。

図3 事業内訓練と事業外訓練の分かれ目と、支給申請で求められる書類(抜粋)。

そして、この区分によって支給申請に必要な書類がまるごと変わります。パンフレットの支給申請書類一覧から、区分ごとの違いだけを抜くと次のようになります。

区分求められる書類(抜粋)
事業内訓練部内講師の場合は部内講師の出勤簿またはタイムカードの写し等/訓練の運営に要した経費を申請する場合は、その経費に係る請求書および領収書の写しまたは振込通知書等。部外講師の謝金・手当、部外講師の旅費、施設・設備の借上費、教科書代・教材費は、それぞれ支払いを受けた者・支払った者・支払年月日・支払名目・支払金額が分かるものであることが求められる
事業外訓練入学料・受講料・教科書代等に係る請求書および領収書または振込通知書の写し等/支給申請承諾書(訓練実施者)(様式第12号)/教育訓練機関等から説明を受けた資料一式の写し

実務上の意味を訳すとこうです。

4|記録の制約:「受けた」ことを、あとから証明できる形にしておく

3つめは、研修そのものではなく研修の周りに残る記録です。支給申請の共通書類には、対象労働者の雇用契約書または労働条件通知書の写し等に加えて、通学制・同時双方向型の通信訓練の場合として対象労働者の賃金台帳または給与明細書の写し等、対象労働者の出勤簿またはタイムカードの写し等(日ごとに始業時刻、終業時刻、休憩時間が分かるもの)が挙げられています(eラーニング・通信制・定額制サービス等の場合は原則不要とされています)。

定額制サービスによる訓練については、さらに踏み込んだ記載があります。

労働時間に訓練を実施しているか(賃金の支払い状況)については、「定額制サービスによる訓練実施結果報告書(様式第8-5号)」により確認するほか、都道府県労働局から、別途、出勤簿・賃金台帳の提出を求めたり、実地調査や労働者・関係者への聴取を実施したりすることもあります。また、パソコンのログイン・ログアウトの記録などの提出を求めることもあります。

研修の設計に返ってくる論点は2つです。

参加を「任意」にできなくなります

同じ箇所に、支給対象訓練は「業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること」が必要とあります。そのうえで、事業主が業務命令として労働時間に実施する意図がなく、専ら労働者が自発的に受講している場合は助成対象にならないと書かれています。業務命令として実施したことに加えて労働者が自発的に受講した分については、その受講時間を「10時間要件」の受講時間数に計上することはできないものの、それだけで直ちに助成対象外になるわけではない、とも書かれています。

研修設計の言葉に直すと、「興味がある人は自由に参加してください」という設計は、この枠には合いません。誰に受けさせるかを会社が決め、業務として時間を確保する形になります。全員に受けさせるか選抜にするかという選び方のうち、助成金を使う場合は「手を挙げた人だけ」という第3の選択肢がなくなります。

受ける人を、先に確定しておく必要があります

定額制サービスによる訓練の支給対象労働者は、計画届の提出時に受講予定者として届けられている被保険者である必要がある、と記載されています。届け出ていなかった人は受講自体はできても支給対象労働者に含めることはできず、所定期日までに変更届を提出すれば支給対象労働者となる、とされています。

「やってみて、良さそうなら次は他部署にも」という広げ方が、そのままでは取りにくいということです。広げるなら変更届の期日を先に押さえておく必要があります。期限の並べ方は人材開発支援助成金の申請の流れで整理しています。

参加を「任意」にはできない。受け方によって、受講時間の扱いが変わる

業務命令として労働時間に受けさせることが、支給対象訓練の前提になる。定額制サービスで、業務命令として実施したうえで本人が自発的に受講した分は、その時間を10時間要件に計上できないが、それだけで直ちに助成対象外にはならない。定額制サービスで、業務命令として実施する意図がなく、専ら本人が自発的に受講した場合は助成対象にならない。定額制サービスで計画届に受講予定者として届けていない人は、受講はできても支給対象労働者に含められず、所定期日までに変更届を出せば対象になる。

誰に受けさせるかを会社が決め、業務として時間を確保する。定額制サービスでは、受ける人を計画届の時点で確定させる。

図4 受け方ごとの受講時間の扱い(パンフレットの記載より)。

5|令和8年8月からは、内容と受講回数にも制約が加わった

事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に提出する計画届から、研修の中身そのものにも制約がかかるようになりました。

研修設計の言葉に直すと、「全社員に同じ汎用講座」ではなく、部署ごとの業務を題材にした内容を、その業務の担当者に受けさせる形が求められます。この点は、業務で使える研修にするための設計とも方向が一致します。改正の詳細と経過措置は事業展開等リスキリング支援コースの線引きと改正点で整理しています。

6|3つの外側にある、お金と日程の縛り

設計の中身ではありませんが、意思決定を左右するので2つだけ足します。

7|助成金に寄せないほうがよい会社

次のどれかに当てはまる会社は、制度に合わせるより、合わせずに設計したほうが結果が出ることがあります。

逆に、対象者を会社が決め、業務時間内に、業務に結びついた内容を一定量まとめて実施するという形が最初から自然な会社にとっては、これらの制約は大きな障害になりません。この場合は積極的に検討する価値があります。

制度に合わせるより、合わせずに設計したほうが結果が出る会社がある

2時間で利用ルールの線引きだけ共有したい場合は、実訓練時間数10時間以上の要件にぶつかる。手を挙げた人から始めたい場合は、業務上義務付けられ労働時間に実施される訓練という要件に、内容を直前まで動かしたい場合は計画届と実施内容の整合に、受講者に半額を負担してもらいたい場合は事業主が経費を全額負担する要件にぶつかる。土曜に集めたい場合は、所定労働時間外や休日の時間が賃金助成の対象外になる。思い立ってすぐ始めたい場合は、計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までに出す要件にぶつかる。対象者を会社が決め、業務時間内に、業務に結びついた内容を一定量まとめて実施する形が最初から自然な会社には、これらの制約は大きな障害にならない。

対象者を会社が決め、業務時間内に、業務に結びついた内容をまとめて実施する形が自然な会社なら、積極的に検討する価値がある。

図5 やりたい設計と、ぶつかる要件。

ノセカエの進め方

そもそも自社が対象になるのか、いつまでに何を出すのかはAI研修の助成金|使える条件・計画届・申請までの順番で整理しています。

まとめ

助成金を使うと決めた時点で、時間数(実訓練時間数10時間以上)・実施の形(事業内訓練か事業外訓練か)・記録(業務として受けさせた証拠と受講者の確定)の3つが研修の設計に食い込みます。令和8年8月以降の事業展開等リスキリング支援コースでは、業務に結びつかない汎用的な内容が対象外になり、内容面の制約も加わりました。

この制約を引き受けられる会社にとって、助成金は有力な選択肢です。合わないと感じた場合は、無理に制度に合わせないほうが、研修としては良いものになります。

よくある質問

助成金を使うと、研修の何が縛られますか

研修の設計に効くのは、時間数、実施の形、記録の3つです。1回の長さと回数、誰が企画・主催するかと見積書の作り方、誰がいつ受けたかとその時間の賃金の記録が問われます。令和8年8月からは、事業展開等リスキリング支援コースで内容と受講回数の制約も加わりました。

半日の研修は、助成金の対象になりますか

事業展開等リスキリング支援コースでは、実訓練時間数が10時間以上であることが要件です。4時間の入門研修は、それ単独では時間数に届きません。10時間を満たす形にするには、たとえば3時間×4回や2時間×5回といった組み方になります。

外部の講師を呼べば、事業外訓練になりますか

なりません。パンフレットでは、部外講師の活用や社外の場所で行われる訓練等であっても、事業主が企画し主催したものは事業内訓練とされています。区分によって、支給申請に必要な書類が変わります。

希望者だけが参加する研修でも、対象になりますか

支給対象訓練は、業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であることが必要です。定額制サービスによる訓練については、業務命令として実施する意図がなく、専ら労働者が自発的に受講している場合は助成対象にならないと書かれています。誰に受けさせるかを会社が決め、業務として時間を確保する形になります。

参考資料・注意事項

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」(パンフレット・支給要領の掲載ページ)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版
    https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf
  • 厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について(事業展開等リスキリング支援コース)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf

最終確認:2026年9月24日。本記事は上記資料に基づく一般的な整理で、個別の事案の支給可否を判定するものではありません。要件はコースごとに異なり、年度の途中で変更されることがあります。実際の申請にあたっては、最新の公表資料と管轄の都道府県労働局の案内をご確認ください。

助成金に寄せる設計と、寄せない設計を、両方並べて考えます。

対象者の決め方・実施できる時間帯・記録の体制をうかがい、制度の枠に入る形と入らない形を、30分の無料相談で比べます。寄せないほうがよいと判断した場合は、そうお伝えします。

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お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

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