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人材開発支援助成金が不支給になるのは、どこで躓いたときか|計画届・出勤簿・賃金台帳の3点

人材開発支援助成金が不支給になるのは、どこで躓いたときか|計画届・出勤簿・賃金台帳の3点
目次
  1. 1|不支給の原因は5つの場所に分かれる
  2. 2|期限で躓く
  3. 3|記録で躓く:出勤簿と賃金台帳
  4. 4|賃金の払い方で躓く:時間外と休日の研修
  5. 5|訓練の中身で躓く:10時間の数え方と内容
  6. 6|会社の状態で躓く:研修と無関係の要件
  7. 7|不支給決定の後に取れる手段は限られる
  8. 8|研修を決める前のチェック
  9. ノセカエの場合
  10. まとめ
  11. 参考資料・注意事項

人材開発支援助成金で実務上問題になるのは、「対象になるかどうか」よりも「対象のはずだったのに、支給に至らなかった」というケースです。この記事は、助成金を使って研修を実施しようとしている人事・総務の担当者向けに、不支給になる典型的な場所を先に並べます。

支給に至らない原因の多くは、研修の中身ではなく期限・記録・賃金の払い方にあります。しかも、訓練が終わってから気づくことが多く、終わってから直せるものは多くありません。

制度そのものの説明は人材開発支援助成金とはで、手続きの順番は人材開発支援助成金の申請の流れで扱っています。この記事では、その流れのどこに落とし穴があるかを書きます。引用は厚生労働省の令和8年8月3日版パンフレットによります(出典は記事末尾)。

1|不支給の原因は5つの場所に分かれる

当社は、原因を次の5つに分けて整理しています。右列は、いつまでなら手を打てるかです。

躓く場所中身いつまでなら間に合うか
期限計画届が訓練開始日の1か月前を過ぎた。支給申請が2か月を過ぎた訓練開始の1か月以上前/訓練終了日の翌日から2か月以内
記録出勤簿・賃金台帳・所定労働時間の確認書類が出せない、または作り直したものになっている訓練前。始まってからでは作れない
賃金の払い方所定労働時間外や休日に研修をやってしまった日程を決める時点。事後には戻せない
訓練の中身除外時間を引いた実訓練時間が10時間に届かないカリキュラムを作る時点
会社の状態労働保険料の未納、労働関係法令の違反など申請前。研修とは無関係の場所で効く

順に見ていきます。いずれも、研修会社ではなく貴社の側でしか手を打てない項目です。

2|期限で躓く

計画届は「訓練開始日の6か月前から1か月前まで」

パンフレットには、職業訓練実施計画届(様式第1-1号)と必要書類を、訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に都道府県労働局へ提出すると書かれています。郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日が提出日になります。

ここで見落とされやすいのが、日付の数え方です。パンフレットには具体例が挙げられています。

訓練開始日計画届の提出期限
7月1日6月1日
7月30日6月30日
7月31日6月30日(6月31日がないためその前日)
9月30日8月30日(前月の同日が期限。31日ではない)
3月29日・30日・31日いずれも2月28日(閏年は2月29日)

「1か月前」を「30日前」と読み替えて日程を組むと、月末付近でずれます。研修日程を先に決めてしまうと、この期限に間に合わない形で確定してしまうことがあります。研修会社と日程を詰める前に、逆算した提出期限を先に置いてください。

支給申請は「訓練終了日の翌日から起算して2か月以内(厳守)」

支給申請書と必要書類は、訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に提出すると記載されています。パンフレットにはこの箇所に「厳守」と書かれています。

研修が終わると担当者の関心は次の案件に移り、受講者アンケートの集計が終わってから申請書に取りかかるという進め方になりがちです。2か月は、社内の稟議と経費の支払証憑をそろえる時間としては短いほうです。訓練終了日が決まった時点で、申請日をカレンダーに入れておいてください。

変更届にも期限がある

計画を出したあとに内容が変わる場合、事前に変更届が必要です。パンフレットでは、受講予定者数を増やす場合は訓練開始日の前日まで、事前に届出が必要な変更事由が生じた場合は当初計画していた訓練実施予定日または変更後の訓練実施日のいずれか早い方の前日まで、対象労働者の病気・けがや天災等やむを得ない理由による変更は変更後の訓練実施日の翌日から7日以内、と整理されています。

起きやすいのは日程の変更です。講師の都合や現場の繁忙で1日ずらすことはよくありますが、実施日時は事前の届出が必要な変更事由に含まれます。期限までに変更届を出さずに変更後の訓練を実施すると、その部分は助成の対象になりません。また、訓練開始日を1か月以上後ろ倒しにする場合は、変更届ではなく計画届を出し直すことになります。ずらすと決めた日に、労働局へ確認するところまでを社内の手順にしておくのが安全です。

3|記録で躓く:出勤簿と賃金台帳

支給申請のときに求められる添付書類には、研修の資料以外のものが並びます。パンフレットの支給申請時の書類一覧には、次のものが含まれています。

つまり、審査されるのは研修そのものだけではありません。その日、その人が、何時から何時まで働いていて、その時間の賃金がどう支払われたかが見られます。

「作り直した書類」は無効になる

ここが最も重い記載です。パンフレットには、添付書類の写しについて次のように書かれています。原本から転記したり別途作成したものではなく、実際に事業場ごとに調製し記入しているもの、または原本を複写機を用いて複写したものを提出すること。原本から加工・転記したものや別途作成された書類と確認された場合は、その書類は無効となる、と明記されています。

これは、日々の記録が実際に運用されているかどうかを見る、という趣旨だと当社は理解しています。裏を返すと、出勤簿を普段つけていない会社が、申請のためにきれいに作った出勤簿は使えないということです。ここは研修の設計ではどうにもならず、労務の運用そのものの話になります。

詰まり方の1つがこれです。研修は問題なく実施できているのに、訓練日の勤怠がタイムカードとして残っていない。研修当日を「出張扱い」「直行直帰」で処理していて出退勤時刻が記録されていない、というケースもあります。訓練の日程を決めるときに、その日の勤怠がどう記録されるかまで確認しておいてください。

あわせて、関係書類は支給決定後も5年間保存することが求められています。支給対象事業主の要件にも「審査に必要な書類等を整備、5年間保存している事業主であること」が挙げられており、事前連絡なしの実地調査に協力しない場合は受給できない旨も記載されています。申請が終わったら捨ててよい書類ではありません。

4|賃金の払い方で躓く:時間外と休日の研修

ここは日程を決める段階で決まってしまうため、事後には戻せません。

賃金助成の対象になるのは、訓練期間中の所定労働時間内の賃金です。パンフレットには、所定労働時間外・所定休日(あらかじめ別日に所定休日を振り替えた場合を除く)に実施した訓練は賃金助成の対象外、と記載されています。

事業主向けQ&A(令和6年11月版)の説明も明確です。会社の休日に訓練を受けさせた場合、割増賃金を支払っていたとしても賃金助成の対象とはならない。ただし、就業規則などで振替休日の規定があり、あらかじめ休日を振り替えていた場合は対象となる。休日に訓練を実施して事後的に代休を与えた場合は対象にならない——という整理です。

研修をやった日賃金助成の扱い(当社の理解)
平日・所定労働時間内対象
平日・所定労働時間外(残業時間帯)その部分は算定から除外される
休日だが、事前に休日を振り替えて勤務日にしていた対象
休日に実施し、あとから代休を与えた対象外

「現場を止めたくないから土曜にやりましょう」という判断は、研修の運営としては自然です。ただ、その一言で賃金助成の部分がなくなることがあります。日程を決めるときに、最初に確かめたいのはこの点です。研修時間の分け方と労働時間の扱いは研修時間は労働時間にあたるのかでも扱っています。

なお、外部の研修機関で受講する場合に開始・終了時刻が自社の所定労働時間とずれる件についても、Q&Aに記載があります。労働契約書や就業規則等に訓練に係る所定労働時間の変更がありうる旨の明確な記載があり、かつ訓練開始前に労働条件通知書などで「訓練の期間中は就業時間を○時~○時に変更する」と具体的に記載して受講者に明示・周知していれば、変更後の時間で算定される、という扱いです。「業務の都合により始業・終業時間を変更する場合がある」という包括的な記載だけでは足りないとも明記されています。

また、訓練期間中は賃金を適正に支払っていることが要件とされており、所定労働時間外や休日に訓練を行った場合は割増賃金を含む賃金を適正に支払う必要がある旨が記載されています。割増賃金が適正に支払われていない場合、助成金全体が支給されないこととなるという記述もあります。労働時間の扱いは、研修とは別に社内で整理しておく必要があります。

5|訓練の中身で躓く:10時間の数え方と内容

人材育成訓練の要件のひとつに、実訓練時間数が10時間以上であることがあります。ここで問題になるのは「10時間」ではなく「実訓練時間数」の定義のほうです。

パンフレットでは、実訓練時間数を「総訓練時間数から、移動時間その他の助成対象とならない時間、助成対象とならないカリキュラム等の時間を除いた時間数」と定義しています。そして、除外される時間として次のような例が挙げられています。

助成対象とならない実施目的・実施方法の内容が含まれる場合は、その時間も除外して算定する必要があり、除外した後の実訓練時間数が10時間以上必要とされています。

1日研修を2回、という組み方をしている場合、休憩と開閉講の時間を引くと10時間に届かないことがあります。カリキュラムの表を作る段階で、この引き算をしておいてください。研修の時間割は、助成金を使う前提かどうかで組み方が変わります。使うなら、除外時間を引いた後の数字で10時間を超えるように置きます。

内容の面でも注意があります。事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に提出する計画届から、特定の業務への適用を伴わない汎用的な内容の訓練(例:汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ訓練)が助成対象外になりました。詳しくは事業展開等リスキリング支援コースの線引きと改正点で、サブスク型の学習サービスを使う場合の条件は人への投資促進コースの定額制訓練で整理しています。

6|会社の状態で躓く:研修と無関係の要件

ここは研修担当者の手の届かないところで効いてきます。パンフレットの「次の場合は支給対象となりません」という一覧には、研修の中身と関係のない項目が並んでいます。代表的なものは次のとおりです。

  1. 不正受給を行ってから5年以内(不支給措置期間)に支給申請をした事業主
  2. 支給申請をした年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請の翌日から起算して2か月以内に納入した場合を除く)
  3. 支給申請日の前日の過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
  4. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主
  5. 審査に必要な書類の提出や実地調査に協力しない事業主、書類を整備・保管していない事業主

2番目は、心当たりがなくても確認しておく価値があります。労働保険料の年度更新を社内の誰が担当しているか、直近の納付が終わっているか。研修の計画を立てる前に、労務の担当者に一度聞いておくだけで済む話です。

くわえて、職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・周知は、職業訓練実施計画届を提出する日までに行っておく必要があります。これも研修の中身とは別の準備で、着手が遅れやすい項目です。

7|不支給決定の後に取れる手段は限られる

先に、厳しい記載を共有します。パンフレットには、助成金の支給・不支給決定、支給決定の取消しなどは、行政不服審査法上の不服申立ての対象となりませんと記載されています。

つまり、決定に対して不服を申し立てる制度上の手続きは用意されていない、という前提で臨むことになります。加えて、不正受給を防止する観点から、一度提出した書類について、事業主の都合などによる差し替えや訂正はできないとも書かれています。提出前の確認がすべて、という設計です。

支給の後も終わりではありません。支給された後に要件を満たしていなかったことが分かれば、返還を求められることがあります。不正受給にあたる場合は、支給額の返還に加えて延滞金・違約金が課され、事業主名が公表されることがあります。令和8年8月3日以降の支給申請からは、自主申告をしていない不正は支給決定前でも原則公表の対象になる特例も設けられました。

だからこそ、この記事に並べた5つは、研修を決める前に一度通しで確認する価値があります。予算の組み方そのものを見直す場合は社員教育の予算が取れないときの組み直し方が参考になります。

8|研修を決める前のチェック

研修を決める前に確かめたい項目を、そのまま並べます。ここで詰まる場合は、研修の設計より先に社内の準備が必要です。

なお、その手前に「そもそも制度に合わせて研修を設計できるか」という問いがあります。任意参加にしたい、まず2時間だけ試したい、という場合は、助成金を使うと研修の中身はどこまで決められてしまうかを先に読むと判断が早くなります。

確認すること誰に聞くか詰まりやすい点
訓練開始日の1か月前が、いつになるか研修担当月末開始だと前月の同日が期限になる
その日までに計画届の添付書類がそろうか労務担当就業規則・雇用契約書の写しの用意に時間がかかる
訓練日の出退勤が、普段どおり記録されるか労務担当研修日を出張扱いにすると記録が残らない
研修は所定労働時間内に収まるか現場責任者「土曜にやろう」で賃金助成の部分が外れる
休憩と開閉講を引いても10時間を超えるか研修会社と一緒に時間割の作り方で変わる
労働保険料の納付が済んでいるか労務担当・顧問の社会保険労務士研修担当者は把握していないことが多い
職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画があるか人事責任者着手が遅れやすい。計画届の提出までに必要
訓練終了日の2か月後が、いつか研修担当終わってから数え始めると足りなくなる

ノセカエの場合

当社は生成AI研修を提供する会社で、助成金の申請代行は行いません。当社ができるのは、助成金を使う前提で成立する時間割とカリキュラムを組むことと、上のチェック項目を研修の設計と同時に確認することまでです。対象になるかどうかは、提携社労士が無料で診断します。

訓練開始まで1か月を切っている場合や、勤怠の記録が整っていない場合は、今回は助成金を前提にしないほうが早いことがあります。その場合は、次回に向けて社内の準備を進め、今回は自社負担で規模を絞る形をおすすめします。

まとめ

人材開発支援助成金で支給に至らない原因は、研修の中身よりも期限・記録・賃金の払い方に寄っています。計画届と支給申請の期限を守り、出勤簿と賃金台帳は普段つけているものをそのまま出し、研修は所定労働時間内に置き、除外時間を引いても10時間を超える時間割にする。いずれも貴社の側でしか手が打てず、決定後に不服を申し立てる手続きもないため、確認は研修を決める前に済ませてください。

参考資料・注意事項

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」(パンフレット・支給要領・Q&Aの掲載ページ)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」令和8年8月3日版
    https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731967.pdf
  • 厚生労働省「人材育成支援コース 事業主Q&A」令和6年11月版
    https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001330281.pdf
  • 厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について(事業展開等リスキリング支援コース)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf

最終確認:2026年9月24日。本記事は上記資料をもとに当社の理解として整理した一般的な内容で、個別の申請について支給の結果を約束するものではありません。要件・様式・期限は改正されます。記載と実際の取り扱いに差がある場合は、厚生労働省および管轄の都道府県労働局の公表内容が優先します。申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。

「今回は助成金を前提にしないほうが早い」も、そのままお伝えします。

研修の目的と日程をうかがい、上のチェック項目のどこで詰まりそうかを、30分の無料相談で一緒に確かめます。助成金を使う前提で成り立つ時間割かどうかは、提携社労士が無料で診断します。間に合わない場合は、その理由をお伝えします。

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お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

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