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生成AIを使ったかどうかを、人事評価に入れるか|評価項目にすると起きることと、入れずに使われる状態にする方法

生成AIを使ったかどうかを、人事評価に入れるか|評価項目にすると起きることと、入れずに使われる状態にする方法
目次
  1. 1|評価の話に入る前に、差が開いた理由を3つに分ける
  2. 2|評価項目にすると、実際に何が起きるか
  3. 3|それでも入れるなら、測るのは「使ったか」ではない
  4. 4|評価に入れる前に、手当てしておく4つ
  5. 5|評価に入れずに、使われる状態にする4つの打ち手
  6. 6|「使わない人」を、どこまで放っておいてよいか
  7. 7|評価制度そのものの設計は、ここでは扱いません
  8. 8|ノセカエの研修での考え方
  9. まとめ
  10. 注意事項

AIを使ったかどうかを、人事評価に入れるべきか。生成AI研修のあと、この問いを検討している人事・経営層の方に向けて書いています。研修は全員に受けさせたが、毎日使う人と一度も開かない人に分かれた。経営会議で「使った人を評価すべきでは」という話が出た。一方で、評価に入れると使うこと自体が目的になるのでは、という懸念もある。そうした状況を想定しています。

この問いは評価制度の話に見えて、実は「差が開いたことを、どの手段で埋めるか」の話です。評価は手段のひとつに過ぎず、いくつかある手段のなかでは副作用が大きいほうに入ります。

以下、生成AIの利用を評価項目にしたときに何が起きるか、それでも入れるなら何を測るのか、入れる前に手当てしておく4つ、評価に入れずに使われる状態にする打ち手を、実務の順番で整理します。評価制度そのものの設計(評価項目の追加、等級、賃金への反映)は労務・法務の領域なので、この記事では扱いません。

1|評価の話に入る前に、差が開いた理由を3つに分ける

「使う人と使わない人に分かれた」を一括りにすると、打ち手を間違えます。使っていない人の多くは、次の3つのいずれかに当てはまります。

使っていない理由見分け方効く打ち手
(1) 担当している仕事に、効く場面が少ない現場作業や対面が中心で、文章を書く仕事がほとんどない評価では動かない。無理に使わせないほうがよい
(2) 触れる環境がない/使う時間がないアカウントが配られていない、共用端末が空かない、日々の業務が詰まっている環境と時間の手当て。評価では動かない
(3) 使ってよいのか分からない、怒られそう「これは入れていい情報ですか」と聞かれる。人に見られない場面でだけ使っているルールの明文化と、上司の名指しの許可

評価項目を足して動く可能性があるのは、厳密には(3)の一部だけです。しかも(3)は、評価で押すより「この仕事はAIで下書きしていい」と上司が名指しするほうが、動きやすい傾向があります。1と2の人に評価の圧をかけると、使う理由のない仕事に無理やり使う、という結果になります。

差が開くこと自体は、研修の失敗ではありません。全員が同じ量を使う状態は、そもそも目標ではないはずです。誰から広げるかの順番の考え方は生成AI研修は全員に受けさせるか、選抜にするかに書きました。

2|評価項目にすると、実際に何が起きるか

評価に入れると決めた瞬間、測れるものが目的になります。そして生成AIの利用で測りやすいのは、使った回数、ログの件数、申告された事例の数です。その結果、次のようなことが起きやすくなります。

起きることなぜ起きるか
使う回数を増やす動きが出る評価されるのは成果ではなく、記録に残る行動だから。自分で書いたほうが早いメールまで、いったんAIに通すようになる
事例の申告が盛られる「月◯時間削減できました」を自己申告で集めると、検証されない数字が積み上がる。翌年の計画がその数字に乗る
使わない人が隠れる評価が下がると分かれば、使っていないことを言わなくなる。本当に困っている場所が見えなくなる
職務による有利・不利が出る文章を書く仕事が多い部署ほど点が取りやすい。現場や対面中心の職務が構造的に不利になり、不公平感が残る
レビューが甘くなるAI活用が評価される空気の中では、上司がAIで作られた資料を差し戻しにくくなる。品質の問題が下流に流れる

最後の行が、いちばん重い副作用です。生成AIで作った資料は、人が書いたものとは壊れ方が違います。文章は整っているのに、根拠だけが入れ替わっている。この見方を上司が持たないまま「活用を評価する」を掲げると、通ってはいけないものが通ります。見る側の訓練については部下が生成AIで作った資料を、上司はどこまで直すべきか|管理職に要るのは「使う訓練」ではなく「見る訓練」に整理しました。

3|それでも入れるなら、測るのは「使ったか」ではない

経営側から「何らかの形で評価に反映せよ」と指示が出ている場合もあります。そのときは、測る対象を置き換えてください。

測らないほうがよい代わりに見るもの
ツールの利用回数・ログイン数・プロンプトの本数担当業務の所要時間、差し戻しの回数、締切の守られ方。従来の評価項目のまま、手段を問わない
「生成AIを活用した」という自己申告の件数その人がやり方を変えた結果、他の人も同じことができるようになったか(手順が共有されているか)
個人が上手に使えているかチームの成果物の質が、前の期と比べてどうか

行き着く先はシンプルです。評価項目は増やさず、既存の項目のままにしておくのが、いちばん副作用が小さい。生成AIを使って早く終わらせた人は、既存の評価項目でもきちんと評価されます。使わずに同じ成果を出した人も、同じように評価されます。これで困る場面は、実務上それほど多くないはずです。

どうしても新しい項目を置くなら、個人の利用ではなく「型を残したか」に置くのが現実的です。自分のやり方を手順にして他の人が使える状態にした人が、いちばん会社に貢献しています。そこを見る仕組みは、評価制度より先に、共有の場のほうが効きます。

4|評価に入れる前に、手当てしておく4つ

順番を逆にすると、揉める原因になりがちです。評価より先に、この4つがそろっているかを確かめてください。

(1) 使ってよい範囲が、文書で決まっているか

入力してはいけない情報の線引きが文書で示されていない状態で「活用を評価する」とだけ言うと、社員は判断できません。結果として、慎重な人ほど評価が下がり、線を越えた人が評価される形になりかねません。社内ルールの条文はAI利用規程の作り方に、情報漏洩のリスクと対策の全体像は生成AIのセキュリティリスクと対策にまとめています。

(2) 全員が、同じ条件で触れる状態になっているか

個人アカウントのまま研修をやった会社では、そもそも会社として使ってよい環境が配られていないことがあります。この状態で評価に入れると、自腹で契約した人が有利になります。アカウントと契約の決め方はChatGPT研修の前に決めるアカウントと契約|個人アカウントのまま研修をやると何が残らないかに整理しています。

(3) 管理職が、成果物を見られるか

2章の最後に書いたとおりです。見る訓練を受けていない管理職が評価者になると、整っている資料を高く評価してしまいます。評価に入れるのであれば、評価者の側の準備が先です。

(4) 対象者の範囲を、説明できるか

全社員を同じ物差しで測るのか、職種によって外すのか。外すなら、その理由を本人に説明できるか。ここが曖昧なまま走ると、1章の表の(1)に当たる人たちから不信が出ます。

5|評価に入れずに、使われる状態にする4つの打ち手

ご相談の目的が「使われる状態にすること」であれば、評価は最後の手段です。先に効くものが4つあります。

打ち手中身効く理由
上司が名指しで許可する「この報告書の下書きはAIでいい」「この議事録は通していい」と、業務名で具体的に言う1章の(3)が即座に解ける。禁止されていないことと、やってよいと言われることは別
使う時間を業務時間の中に置く週に30分でも、自分の仕事を題材に触る枠を業務として置く1章の(2)が解ける。評価で圧をかけても、時間は生まれない
型を残した人を、見える場所に出す月1回、うまくいった手順を共有する短い場を作る。表彰や点数にはしない点数にすると盛られる。共有だけなら、実際に使えるものが出てくる
2回目の研修を、自分の仕事を持ち込む形でやる1回目が操作の説明で終わっているなら、2回目は各自の実務を題材にする「検索代わり」で止まっている人が、いちばん動くのがここ

4つ目は、1回目の研修が刺さらなかった会社ほど効きます。何を変えるかの分かれ目は1回目の研修が刺さらなかった会社は、2回目で何を変えるかに書きました。なぜ多くの人が検索代わりで止まるのかは社員がChatGPTを「検索代わり」で止まる理由と、業務が変わる教え方に整理しています。

単発の研修で終わらせずに続く形にする全体の設計は生成AIの社内教育|単発の研修で終わらせず、続く仕組みにする設計図にまとめました。評価を動かすより、こちらのほうが手数は少なく済みます。

6|「使わない人」を、どこまで放っておいてよいか

まず、全員が同じように使う必要はありません。1章の(1)に当たる職務の人に無理に使わせても、会社の得にはなりにくいからです。

ただし、例外が1つあります。管理職が使わないまま、部下だけが使っている状態です。これは放っておくと、2章の最後に書いた「通ってはいけないものが通る」が起きます。管理職に要るのは、自分で使いこなすことではなく、部下が出してきたものを見られることです。

経営層が分かっていない状態で現場から入れる場合の進め方は経営層が分かっていない会社で、研修は上から入れるか、現場から入れるかに書きました。評価の話が経営会議から出てきた会社では、まずここを確かめたほうが早いことがあります。

7|評価制度そのものの設計は、ここでは扱いません

評価項目を追加する、等級の要件に入れる、賃金や賞与への反映を変える。これらは就業規則や賃金規程に関わる話で、進め方を誤ると不利益な変更として問題になる場合があります。

当社は生成AIの研修を提供する会社であって、評価制度・等級制度を設計する立場にはありません。制度そのものの改定は、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。この記事で書いたのは、その手前にある「評価に入れると何が起きるか」「入れる前に何を揃えるか」という判断材料までです。

8|ノセカエの研修での考え方

まとめ

生成AIを使ったかどうかを人事評価に入れるかは、差が開いた理由をどの手段で埋めるかの問題です。評価項目にすると使用回数が目的になりやすく、上司がAIで作った資料を差し戻しにくくなる副作用もあります。評価より先に、上司が業務名で使ってよいと伝える、使う時間を業務の中に置く、型を残した人を点数にせず共有の場に出す、2回目の研修を実務持ち込み型にする、の4つを試してください。

注意事項

使っていない理由の3分類、評価項目にしたときに起きること、評価より先に効く打ち手は、当社の研修提供とご相談で見てきた範囲に基づく整理で、統計調査に基づくものではありません。人事評価制度・等級制度・賃金制度の設計や変更の手続き、就業規則の改定、研修時間の労働時間該当性については、社会保険労務士・弁護士にご確認ください。助成金は審査により支給の可否が決まり、受給を保証するものではありません。

差が開いた理由を3つに仕分けて、次の1手を一緒に決めます。

研修のあとの状況をうかがい、使っていない人が「仕事に効かない」「環境と時間がない」「使ってよいか分からない」のどれに当たるかを仕分けます。評価に入れるべきではない、という結論になることもあります。助成金の対象になるかどうかも、要件に照らして確認します。

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お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。DX・業務改革・SAP導入が専門で、50名超のチームでPMを担当。法人向け生成AI研修「ノセカエ」の講師を務める。

講師プロフィール ・ 運営会社の情報