リスキリング研修の進め方|変わる業務から決める5つの手順

この記事の要点
- リスキリング研修は、仕事の変化に合わせて、新しく必要になるスキルを社員に身につけさせる研修です。
- 当社は、学ぶ科目からではなく、変わる業務から決める進め方をおすすめしています。手順は5つです。
- 変える業務を決めきれない会社には、文章を読む・書く・整える業務を、生成AIで下書きする形に変えることを、最初の候補としておすすめしています。
目次
リスキリングを会社として進めることになった人事・経営企画の方に向けて、リスキリング研修の進め方をまとめました。何を学ばせるかを決める前に、どの業務が変わるのかを決める。この順番で進める手順を、5つに分けて説明します。助成金の制度はリスキリング助成金とはで扱っているので、この記事では、研修の中身と進め方に絞ります。
リスキリング研修とは
リスキリング研修とは、仕事の変化に合わせて、新しく必要になるスキルを社員に身につけさせる研修です。経済産業省の検討会(2021年2月26日)で示された資料(リクルートワークス研究所 石原直子氏の資料)は、リスキリングを、新しい職業に就くため、または今の職業で求められるスキルの大きな変化に適応するために、必要なスキルを身につけること、身につけさせること、という趣旨で定義しています。同じ資料は、個人が関心に基づいて学ぶ「学び直し」とは違い、これからも職業で価値を生み続けるために必要なスキルを学ぶ点が強調される、と説明しています。
会社が行うリスキリング研修の目的は、事業や業務の変化に、いまいる社員で対応できるようにすることです。DXの推進や、新しい事業への展開に伴って計画される研修です。
ふだんの社員研修との違い
ふだんの社員研修は、いまの仕事を、いまのやり方でうまく進めるための研修です。新入社員研修や階層別の研修が、これに当たります。リスキリング研修は、仕事の中身ややり方が変わることを前提に、変わったあとの仕事に必要なスキルを扱います。
個人の学び直しとの違い
個人の学び直しは、本人が学ぶ内容を選び、本人の時間で行います。リスキリング研修は、会社が必要なスキルを決め、業務として受けさせます。費用と時間を会社が負担するので、何のために学ばせるのかを、会社が説明できる必要があります。
表1 ふだんの社員研修・リスキリング研修・個人の学び直しの違い
| 項目 | ふだんの社員研修 | リスキリング研修 | 個人の学び直し |
|---|---|---|---|
| 目的 | いまの仕事をうまく進める | 変わったあとの仕事に対応する | 本人の関心やキャリアのため |
| 内容を決める人 | 会社 | 会社 | 本人 |
| 出発点 | 階層や職種 | 変わる業務 | 本人の希望 |
| 時間と費用 | 会社が負担する | 会社が負担する | 本人が負担する(支援の制度あり) |
表の分け方は、当社の整理です。
リスキリング研修は、変わる業務から決める
リスキリング研修を計画するとき、最初に「何を学ばせるか」から考えると、科目の一覧を選ぶ作業になります。データ分析、プログラミング、生成AI、といった科目です。当社は、この順番をおすすめしていません。先に決めるのは、どの業務が、どう変わるのかです。
図1 科目から決める場合と、業務から決める場合
何を学ばせるか、が出発点
どの業務が変わるか、が出発点
出発点が違うと、題材と、確かめ方が変わります。
業務から決めると、学ぶ内容の範囲が決まります。その業務に要らないスキルは、研修に入れません。研修のあとに何を確かめればよいかも、先に決まります。
リスキリング研修の進め方:5つの手順
図2 変わる業務から決める5つの手順
科目を選ぶのは、手順3のあとです。
手順1:変わる業務を決める
最初に、どの業務がどう変わるのかを、1〜3個書きます。「営業の提案書づくりを、生成AIで下書きする形に変える」「受発注の入力を、新しいシステムに移す」のように、業務の名前と、変わったあとの姿を書きます。これは説明のための例で、特定の会社の事例ではありません。「DX人材を育てる」のような目標だけでは、次の手順に進めません。
手順2:その業務に要るスキルを書き出す
変わったあとの業務で、担当者が実際に行う作業を並べます。そこから、要るスキルを書き出します。提案書の下書きを生成AIに任せるなら、指示の書き方、出てきた下書きの確かめ方、入力してよい情報の判断、の3つです。スキルは、作業の言葉で書きます。
手順3:いまのスキルとの差を見る
書き出したスキルのうち、担当者がすでにできることと、できないことを分けます。当社がおすすめする分け方は、その作業を、担当者に実際に1回やってもらうことです。できたものを上長が見て、できる、できないを分けます。提案書の例なら、過去の案件を1つ選び、下書きの指示を書いてもらいます。指示は書けるが、出てきた下書きの確かめ方が分からない、という差が見えれば、研修で扱うのは確かめ方です。研修で扱うのは、できないことだけです。全員が同じ差を持っているとは限らないので、対象者をどう決めるかも、ここで考えます。受講する範囲の決め方は全員に受けさせるか、選抜にするかで扱っています。
手順4:研修の題材を、その業務から取る
研修の演習には、手順1で決めた業務の、実際の書類や作業を使います。汎用の例題で学ぶと、受講者は職場に戻ってから、自分の業務への当てはめをやり直すことになります。提案書の例なら、演習には、過去の提案書と、顧客への聞き取りのメモを使います。社外に出せない情報は、伏せた形にします。受講の形(集合型、オンライン同時型、録画型(eラーニング))は、手を動かす時間が要るかどうかで決めます。比べ方はAI研修の受講形式にまとめています。
手順5:業務で使って確かめる
研修のあと、手順1で決めた業務のやり方が変わったかを確かめます。確かめるのは業務のほうです。受講の記録だけでは、やり方が変わったかどうかは分かりません。当社は、研修の1か月ほどあとに、上長が実際の成果物を見て確かめる形をおすすめしています。提案書の例なら、研修のあとに作られた提案書を見て、下書きに生成AIが使われているか、確かめの手順が踏まれているかを見ます。変わっていなければ、手順3に戻り、残っている差を見直します。題材が業務と離れていた場合は、手順4に戻ります。作業時間で測る方法は生成AI研修のROIの試算で扱っています。
手順1が書けないときは、研修の前に戻る
どの業務が変わるのかを書けない場合は、研修の計画より前に、事業や業務の見直しの話に戻ります。人材の育て方の全体はDX人材の育成で扱っています。
学ぶ科目から決めた場合に、あとで困ること
科目から決めること自体が、間違いというわけではありません。全社員に共通の基礎をそろえる研修は、科目から決めて構いません。困るのは、業務を変えることが目的なのに、科目から決めた場合です。理屈の上で、次の3つが起きます。
- どこまで学ばせるかが決まらない。科目には終わりがありません。業務が決まっていないと、どの深さまで扱えば足りるのかを判断する基準がありません。
- 題材が業務とつながりにくい。変える業務が決まっていないので、題材をどの業務から取るかを決められず、汎用の例題になりやすくなります。その場合、自分の業務への当てはめは、受講者に任されます。
- 何を確かめればよいかが決まらない。変える業務を決めていないので、研修のあとに見られるのは、受講の記録や理解度までです。業務のやり方が変わったかは見られません。
受けさせる研修の時間は、労働時間として扱う
参加を義務づける研修の時間は、労働時間にあたります。当社は、所定労働時間内での実施をおすすめしています。所定労働時間外に行う場合の賃金と、助成金を使う場合の制約は研修時間は労働時間にあたるかで扱っています。
最初の題材に生成AIを勧める理由
手順1で、変える業務を決めきれない会社もあります。その場合に当社が最初の候補としておすすめしているのは、文章を読む・書く・整える業務を、生成AIで下書きする形に変えることです。科目として生成AIを先に選ぶ、という意味ではありません。変える業務の候補として挙げています。候補を決めたあとは、手順2以降を同じように踏みます。
この業務を最初の候補にする理由は3つです。当社が生成AIの研修を提供している立場からの考えです。
- 職種を問わず対象になる。生成AIが主に扱うのは、文章を読む、書く、整える作業です。営業、経理、人事、総務のどの職種にも、この作業があります。
- 題材を、自分の業務から取れる。受講者が、自分のメール、議事録、報告書を持ち込んで演習できます。手順4を、そのまま実行できます。
- 効果を作業時間で測れる。同じ作業にかかる時間を、研修の前とあとで比べられます。手順5の確かめ方が、先に決まります。
生成AIの研修で何を扱うかは生成AI研修とはで、DX全体の研修との違いはDX研修とはで扱っています。
助成金を使う場合
リスキリング研修の費用には、要件を満たせば、国や自治体の助成金を使える場合があります。制度の種類と期限はリスキリング助成金とはに、助成率と対象になる研修の条件はAI研修の助成金に、コースの対象範囲は事業展開等リスキリング支援コースにまとめています。補助金と助成金の違いはリスキリングの補助金と助成金の違いで扱っています。どの制度も、研修を始める前の手続きが要り、受給が保証されるものではありません。
ノセカエの場合
ノセカエは、生成AIを業務で使うための法人研修です。座学3割・実習7割で、受講者が自分の業務を持ち込み、その場でAIに載せ替えます。研修の前に、30分のヒアリングで業務内容を伺い、実習の題材と、助成金の対象となる可能性を確認します。半日研修では、部署ごとに「AIに渡せる仕事」を棚卸しするワークも行います。料金と内容はノセカエのトップページでご確認ください。
この記事のまとめ
- リスキリング研修は、仕事の変化に合わせて、新しく必要になるスキルを身につけさせる研修。
- 決める順番は、変わる業務が先、学ぶ科目があと。
- 手順は、変わる業務を決める、要るスキルを書き出す、差を見る、題材を業務から取る、業務で使って確かめる、の5つ。
- 変える業務を決めきれない場合の最初の候補は、文章を読む・書く・整える業務を、生成AIで下書きする形に変えること。
よくある質問
- リスキリング研修とは、どんな研修ですか
仕事の変化に合わせて、新しく必要になるスキルを社員に身につけさせる研修です。会社が必要なスキルを決め、業務として受けさせる点が、個人の学び直しと違います。
- リスキリング研修は、何から始めればよいですか
どの業務がどう変わるのかを、1〜3個書くところから始めます。そのあと、その業務に要るスキルを書き出し、いまのスキルとの差を見てから、研修の中身を決めます。
- リスキリング研修とDX研修は、何が違いますか
当社は、リスキリング研修を、仕事の変化に合わせて必要なスキルを身につけさせる研修の広い呼び名と整理しています。DX研修は、そのうち、デジタルによる業務や事業の変革に関わる研修と整理しています。DX研修の中身はDX研修とはで扱っています。
- リスキリング研修に、助成金は使えますか
要件を満たせば、人材開発支援助成金などを使える場合があります。制度によって対象と期限が違い、受給が保証されるものではありません。制度の整理はリスキリング助成金とはをご覧ください。
参考資料・注意事項
- 経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」(2021年2月26日)資料2-2 リクルートワークス研究所 石原直子「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf
最終確認:2026年10月2日。リスキリングの定義は、検討会で示された資料の内容を要約したもので、経済産業省の定義ではありません。5つの手順と、科目から決める場合の整理は、当社の考え方です。本文の業務の例は説明のためのもので、特定の会社の事例ではありません。助成金の受給を保証するものではありません。
変わる業務から、研修の題材を決めます。
30分のヒアリングで業務内容を伺い、実習の題材と、助成金の対象となる可能性を確認します。
自社向けの研修内容を相談する →お電話でのご相談:03-6820-2744(平日10:00〜18:00)
